表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

赤い髪留め 9

 高志は7時前にバーに来て、先に飲んでいた。7時過ぎたころに裕子がやってきた。

 「こんばんは」

 「こんばんは」と二人は挨拶を言い合った。彼女はホワイトレディーというアルコールがきついカクテルを頼んだ。高志はジントニックを頼んだ。

 しばし無言が続いた後、

 「ちょっと自分のことを話してもいいですか?」と高志は尋ねた。

 「ええ」

 「俺はね、つい最近、1ヶ月前ぐらいに離婚したんですよ」

 「そうなんですか?」

 「理由は妻に好きな人ができたんです。竹内さんが貴方を好きになったように。妻も俺とは違う男にほれ込んだ。でも簡単には理解ができなくて、何回も話し合いをした。でも彼女の決心は石のように硬かった。だからね、決心して別れることを承諾したんだ。」

 アルコールの酔い手伝って、高志は裕子に心の奥を話はじめた。

 「じゃあ、私みたいな女、とても憎たらしいでしょうね」

 「そうでもないよ。俺はね、妻のことを愛していたつもりだったけど、10年一緒に暮しているうちに、愛なんて無くなってしまっていたんだ。だから、彼女もそれに気づいて、知らないうちに俺から気持ちが離れていった。ただ、それだけなんだ。運命だったんだなあ。今は、彼女が幸せになってくれたらいいと思っているよ。今日、君に会って思った。好き同士の人間が一緒になるのが一番だ」

 「そう思えるなら…」と裕子はうつむいた。こんな話をしたから、裕子にも罪悪感が芽生えたのかもしれない。

 「俺は竹内さんが君を本当に愛していると思うよ。だけど已むおえない事情があって、泣く泣く君と別れる決心をした。その決心をするのは、並大抵の人間じゃできないよ」

 裕子は何を話したらよいのか分からないのか、ずっと俯いたままでした。そしてまた、違うカクテルを頼んで飲んでいた。

 「だから、これは受け取っておいたほうがいい」と高志はクシャクシャになった手紙とお金を渡すと、今度は受け取り、バックの中に入れた。

 「じゃあ、今日、私はやけ酒です」と裕子は言うと、カクテルをぐびっと飲み干した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ