赤い髪留め 4
高志は自分が離婚にこぎつけた経緯を思い返してみた。俺は、一年かけて離婚が成立した。確かに愛人関係と婚姻関係は違うけれども、こんな簡単に男女の関係を崩せるわけが無いじゃないか、そう心の中で思っていた。
「高橋、本当に申し訳ない。彼女の名前は山田裕子という、これが写真だ。今度の土曜日の13時に新宿のAホテルのレストランで待ち合わせすることになっている」と言って写真を手渡した。
手渡されたのは、美しい桜をバックに取られた女性の写真だった。年のころは30代後半だろうと思われる。髪の長い美しい女性だった。竹内先輩がはまるのも無理も無いと思った。
「高橋、本当にすまん。お前が言うとおり、何を言われるかも分からない。でも1回行ってみてくれ」と竹内は懇願した。
高志は二つの重みを感じる封筒をスーツの内ポケットにしまい、「とにかく、会ってみますが…、すぐに結果を携帯電話に連絡しますから」と言って、
「すみません、今日は失礼します」と高志はバーを早々に出た。
高志の心の中で竹内と妻の行動が重なった。二人とも自分の事情だけで、勝手に別れを決めてしまっている。一体全体、人生ってこんなものか?竹内の人柄に惹かれていた自分に嫌悪さえ感じた。そして、写真の女性が自分に重なり、ことさら哀れに感じた。
高志は帰りの電車の中で、山田裕子の写真を見ながら、
「こんな、いい女、何も竹内先輩でなくても、幸せになれるだろうに」そう独り言を言っていた。