第四章第7話 薄れゆく意識の中で
——暗闇。
澪の意識は、深い深い闇の底に沈んでいた。
けれど、その闇は冷たくなかった。
むしろ、懐かしい温もりに包まれていた。
「……ここは……?」
声にならない声が、澪の心に響く。
その瞬間、光が差し込んだ。
柔らかく、優しく、すべてを包み込むような光。
——創造神。
その存在は、言葉ではなく、澪の魂に直接語りかけてきた。
「姫よ。お前は、かつて我が力を継ぐ者として選ばれた。
だが、まだ“目覚めて”いない。お前の祈りは、届いていない」
澪の胸に、ある記憶が蘇る。
森の神殿で、フウリが言った言葉——
『あんた姫なんやろ。姫はね、かつてこの世界を創造した創造神に祈りを捧げ加護を受ける存在。つまり、創造神の力を使えるはずなんや』
その時は、ただの伝承だと思っていた。
けれど今——澪は確信した。
自分は、“神の器”だったのだ。
「でも……私は……もう……」
澪の身体は、現実では瀕死だった。血を流し、意識も途切れかけている。
それでも——魂は、まだ燃えていた。
創造神は、静かに語る。
「この世界には、まだ希望がある。
それは、“真なる英雄”——人間が持つ、可能性そのもの。
神ではなく、人が世界を救う。その器が、あの少年——莉緒だ」
澪の心に、莉緒の姿が浮かぶ。
何度も立ち上がり、何度も倒されても、諦めなかった少年。
ギルドでスキルを測定した時、表示された「???」。
それは、誰も測定できない“未来に向けた可能性のスキル”だった。
「莉緒は……英雄になれる……?」
創造神の光が、澪の胸に宿る。
「お前の命を、彼に託しなさい。それが、最後の祈りとなる」
澪は、静かに目を閉じた。
涙が、一筋、頬を伝う。
「莉緒……お願い……この世界を……守って……」
その瞬間、澪の魂が光となり、莉緒の中へと流れ込んだ。
神の加護と、澪の祈りが融合し——
莉緒のスキルが、静かに変化する。
「??? → 真なる英雄」
そして、澪の声が、莉緒の心に響いた。
「あなたは、英雄になれる。私が、そう信じてるから——」




