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第四章第3話 急変

聖域の扉が静かに開き、澪と莉緒が外へと歩み出す。

風が戻ってきた。澪の足元に、柔らかな風が巻きつく。

だが、出迎えたフウリとセリアの表情は、どこか険しかった。

「どうしたの……?」

莉緒が問いかけると、フウリが眉をひそめて言った。

「莉緒が聖域に入ってる間にな……すごいことがあったんや!今まで動いてなかった魔王が、ついに動き始めたんや!しかも、こっちに向かっとる!」

「それだけじゃないの」

セリアが続ける。「魔王のほかに、もう一つ……大きな気配が一緒に動いてるの……黒くて、重い」

莉緒の英知究明が警告を発する。

《警告:二つの高密度魔力が急接近中。一つは魔王。もう一つは、未知の闇属性。危険度:極高》

「……闇のオーラ……」

そのとき、背後から声が響いた。

「そいつはきっとダフニスだぜ、莉緒!」

振り返ると、そこに立っていたのはギルドマスター・グラン。

ゴキヌスを共に倒した、頼れる仲間。

その後ろには、焔の谷でヴァルグを倒したレイ。

深海の都でネイレアを討ったミナもいた。

「なんでみんなここに……!?」

莉緒が驚くと、グランは豪快に笑った。

「魔王がお前を倒そうとしてるって聞いてな、じっとしてられなかったんだよ!俺たち、同じ思いさ」

レイが静かに頷く。「あの谷の復興も終わった。今度は、お前の力になりたい」

ミナも微笑む。「都を救ってくれた恩、今こそ返させてください」

「ありがとう……」莉緒は胸が熱くなるのを感じた。

「よろしく頼むで!」

フウリが拳を握る。

「私も、全力で支えるわ」セリアが笑顔で言った。

みんなが団結し、大きな課題に向けて取り組む意思が固まった。

「ところで……ダフニスって何?」莉緒の疑問に、グランが真顔で答えた。

「ゴキヌスがなぜあの森に復活したのか、調査してたんだ。そしたら、数日前に森を出入りする怪しい存在に行きついてな。それが……悪魔だった」

レイが口を開く。「俺の焔の谷にも、怪しい奴がうろついてた。始まりの五王が目覚める直前だった」

ミナも頷く。「都が襲われる数日前に、黒い影を見たって報告があったの」

端の方で黙っていたルカとミリも、顔を上げる。

「……数日前、この森の神殿にも、怪しいやつを見た」

フウリが腕を組みながら言った。

「つまり、その怪しい奴がうろついた数日後に、始まりの五王が目覚めてるってことやな」

「その通り」

グランが頷く。「そして、その特徴を当てはめたときに、一番近いのが——始まりの五王の一人、悪魔王ダフニスだった」

空気が重くなる。誰もが黙り込んだ。

「フウリ……ダフニスって、そんなにヤバいやつなの?」

莉緒の問いに、フウリは低く答えた。

「ダフニスはな、始まりの五王の中でも一番の曲者や。裏で暗躍することが多くて、情報も少ない。けど、悪魔の王って呼ばれるくらいやから……恐ろしく強いはずや」

沈黙が落ちる。だが、澪が一歩前に出て、莉緒の手を握った。

「でも、今はこれだけの仲間がいる。私も、姫として……戦う」

莉緒は澪の手を握り返し、笑った。

「今までみたいに、なんとかするよ!」

その言葉に、全員の顔に笑顔が広がった。風が吹いた。それは、希望の風だった。

「さあて、どうやって迎え撃とう?」

莉緒がそう言った瞬間だった。森の神殿の天井が、轟音とともに崩れ落ちた。

舞い上がる砂塵。揺れる空気。その中から、二つの巨大な影が姿を現した。

「そんな……早すぎる……!」

澪が息を呑んだ。

「さっきまで気配は遠かったはずなのに……どうして、もうここに……」

誰もが予期していなかった。魔王の到着は、もっと先の話だと思っていた。

準備も、覚悟も、まだ整っていない。

それなのに——

一体は、禍々しい深紅の髪を揺らしながら、大剣を肩に担いでいた。

黒色の瞳は、すべてを無に帰すほどの冷たさを宿している。

とがった歯が、笑みを形作るたびに空間が軋む。

「ほぉ……始まりの五王を四人も倒した男がいると聞いて、どんな奴かと思えば……このような、わっぱとはのぉ。始まりの五王も落ちたものよ」

その声は、聞くだけで背筋が凍るほどの威圧感を放っていた。

魔王——絶対的な悪の権化が、ついに姿を現した。そして、その隣に立つもう一人の男。

ツーブロックの髪型に黒いロングコート。腰には細身の剣。どこか絵画から抜け出してきたような、異質な雰囲気。莉緒は、すぐにその顔を思い出した。

異世界に来て初めて出会った悪魔——あの時、僕を食べようとしてフウリが守ってくれた。

「まさか……お前が始まりの五王の一人、ダフ二スやとはな。驚いたわ」

フウリが低く呟く。「あの時はよく魔力を制限しとったもんやな」

ダフ二スは、口元に笑みを浮かべた。

「ほぉ、覚えていたの。あの時の風の精霊。今度は逃がしてあげないよ」

空気が張り詰める。

魔王と悪魔王——二人の圧倒的な存在感に、場の空気が沈黙に包まれた。

「しんどい話だな……」

グランが笑ったが、その手は震えていた。

誰も動けなかった。

フウリ、莉緒、澪以外の全員が、魔王の気配に圧倒されていた。

それほどまでに、魔王の“格”は異質だった。

だが——莉緒は、前を向いた。

「フウリ、みんなに追い風を!」その声が、空気を切り裂いた。

「魔王は、僕と澪で相手をする。レイ、ミナ、グランさん、ルカ&ミリ——その悪魔をお願いします。ただし、無茶はするなよ!」

一瞬の沈黙。そして——

「任せろ!」グランが叫ぶ。

「全力でぶつかる!」レイが剣を構える。

「恩を返す時が来たわね」ミナが魔力を纏う。

「僕らも行く!」ルカとミリが矢を番える。

風が吹いた。それは、恐怖を払う風。仲間の背中を押す、希望の風だった。

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