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背番号の2の矜持

作者: Xsara

戸神学園高校――甲子園常連の名門。その扉をくぐって三年、捕手の田上恭大は全てをこのユニフォームに捧げてきた。


相棒は村田藤次。右の剛腕本格派。中学時代から息の合ったバッテリーとして名を馳せ、甲子園では春夏通じて全国制覇。二人の名は、今や高校球界に知らぬ者はいない。


「お前の球を受けるのが、やっぱ一番楽しいわ」

そう笑って言えるほど、恭大は藤次の全てを知り尽くしていた。


だが、その牙城に現れたのが、1年の投手・加賀朝雄だった。


フォームは柔らかく、力みがない。ストレートは140キロそこそこだが、スライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットと4種の変化球を操る。極めつけは、その制球力――どんなコースも寸分違わず投げ込む姿に、恭大は直感した。


(こいつ、化ける。いや……すでに完成されてる)


藤次とは真逆のタイプ。だが、だからこそ惹かれた。3年間、こいつの球を受けられたら――。そんな叶わぬ想いが胸に浮かぶ。だが現実は非情だ。恭大の高校生活は、あと一年もない。


やがて、1年捕手・玖珂宗戸と朝雄がバッテリーを組みはじめた。最初はぎこちなかったが、徐々に宗戸のリードに朝雄が応え、互いに成長していく姿を恭大はベンチから静かに見つめた。


「こいつらなら、春夏いける。間違いない」


最後の夏。恭大と藤次は全力で挑み、惜しくも準決勝敗退。だがそれでも、甲子園の空の下で投げ合えたことに悔いはない。


秋――プロ志望届を出した恭大は、タイガースから2位指名を受けた。藤次はホークスの堂々たる1位。夢見た世界への第一歩が、ここにあった。


グラウンドに別れを告げるその日、恭大は朝雄と宗戸を呼び止めた。


「お前ら、いいバッテリーになる。朝雄の球は、お前が一番わかってる。信じてやれ」

そして、笑顔で言った。


「プロで待ってるからよ。全力で甲子園、取りに行け」


背番号2の誇りとともに、田上恭大は戸神学園を巣立っていった。

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