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1-1 異世界


「…ん」

かすかな眩しさに目を開けると、そこは最後に意識を落とした場所ではなくなっていた。


俺は死んだのか?そんなことを考えながら、軽くあたりを見渡すとそこは全く見知らぬ部屋だった。


「どこだ…ここ」


まだ夢でも見ているのかと思い体を起こそうとするも

体は思うように動いてくれない。

腕の力を頼りに何とか起き上がろうとしたとき


「起きないほうがいいわよ。体の傷は全く癒えてないもの。」


とどこからか女の声が聞こえ、驚きで飛び上がる

その瞬間

グキっと鳴ってはいけない音が聞こえ

俺はあまりの痛みに悶絶し叫ばずには居られなかった。


「いってえぇぇぇぇぇぇぇぇえぇ」


数分後、痛みが落ち着いてきた俺は先ほどの女と対面していた。


それにしてもよく見ると彼女はアニメやゲームでよく見るエルフのような見た目をしていて

肌は病的なまでに白く人形のような美しさがあった。

コスプレか?それにしては耳も作り物のような感じがなく、寧ろ馴染んで見える。


それはそうと、この子は過去に俺がプレイしていたエロゲの攻略対象に似ている。

胸が控えめなところも、綺麗なエメラルド色の目も。

確か、あの子の名前はソフィアだったっけな…

懐かしい、もう一度あの恥じらう顔で……


「んんっ」


突然大きな咳払いが聞こえ、はっと目を向けると彼女は真っ赤な顔で拳を作り震えていた。

まずい、どうやら聞こえていたみたいだ。


「いや違う、これは…そう、褒め言葉だ、俺の家では…」


どうにか弁解しようと試みたが、言い訳も虚しく

この後本日2回目の悲鳴を上げることになったのだった。


「いってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」



しばらくして未だにズキズキと痛む身体を擦りながら

先程と変わらない構図で彼女と向き合うが、今度は訳が違う


「…あんた、俺が怪我しているわかっているのに、手加減なしか!?」


目の前の女は当然の報いだといいたげに、こちらを見る。


「私は手加減をした方だと思うけど。そもそも、因果応報じゃなくて?」


こいつ…と言いかけたが、彼女の固く握られた拳を見て、これ以上ことを荒げては自分の身が危ないと思い口を紡ぐことにした。


「どうもすみませんでした…」


「はぁ…別にいいわ」


「…嘘つけ」


「何か?」


「あ、いえ」


彼女が1度解いた手を再度構え直したのが見えて俺が身構えると、

あっさりその手をひらき、彼女は溜息をついて目を伏せた。


「まぁいいです。それよりも貴方に聞きたいことがあるんですよ」


「聞きたいこと?」


「えぇ、何故あなたがあの時計台の下にいたのか…何か心当たりは?」


「時計台??」


全く心当たりがなければ、そもそも時計台が何処なのかわからない俺は彼女に聞き返す。


「ああ、あなたの倒れていた場所よ」


「…わかるわけないだろ、そもそも俺はここが何処なのかすら分からないのに」


「やっぱり…サクリファイスなの?」


「え?」


「ごめんなさい、こっちの話よ」


彼女は「んー」と唸ると何かを深く考え込むように顎にをあて動かなくなってしまった。

取り残された俺はしばらくそんな彼女を見つめながら生贄(サクリファイス)という言葉の意味を考えるが皆目見当もつかない。

そもそも今の時代に生贄なんてものは存在するのか?

頭が痛くなりそうな問題に現実逃避しようと目の前の彼女の観察をはじめると、ふとある疑問が浮かんだ

…目の前の彼女は誰なんだ?と


「なあ、さっきからずっと思ってたんだが…あんた誰なんだ?」


純粋に気になってしまった俺はそう質問を投げかけると彼女ははっとし突然立ち上がり、長ったらしいスカートの裾を少し持ち上げ頭を下げた。


「名前を名乗ってなかったわね。初めまして、私はソフィア・グレンナットよ、そちらは?」


「あ、えと、俺は時也…斉藤時也(さいとうときや)だ」


「時也…変わった名前?」


「あー…ソフィアさんだって変わってないか?」


「この世界ではごく普通よ。それと、私のことはソフィーって呼んで」


「お、おう、それなら俺も時也でいい。」


「わかったわ、改めてよろしく時也」


そういうとソフィーはこちらへ近づきそっと手を差し伸べてきた。

「ああ、よろしく」とその手を握り返すと彼女は満足気に笑い近くの椅子に座る。

それにしても驚いた、まさか彼女がソフィアちゃんと同じ名前だったなんて…


「さて、どうやら貴方はこの世界にトリップしてしまったみたいなのよ。だから、この世界の説明と時也の置かれている状況について話してもいいかしら?」


「ああ、お願いしたい」


俺自身、今置かれている状況は何も分かっていないとなれば説明をしてもらえるのは願ったり叶ったりだ。

彼女は俺の目を見て頷くと真剣な顔つきになり説明を始めた。


「まずは時也がここに来た原因について……」


ソフィーの話を聞く限り俺がここに来た原因は、目覚めた時に巻き込まれていた大災害(カタストロフィ)にあるらしい。

そもそもカタストロフィというのは何年かに1度起きるか起きないかという程のものだが、その威力は凄まじく、国が半壊になるほどだという。


そして、カタストロフィには特徴がある。

それが、よその国や世界から生贄(サクリファイス)と呼ばれる災害を鎮める役割の人物が時計塔近くに召喚されることだという。

ただ、厄介なことにこのサクリファイスが現れるまでは地震や魔物の襲撃など様々な災害が起き続けるらしく、場合によっては一週間以上も逃げ惑わなければいけなくなるということだ。


「サクリファイスが現れれば自然とその災害は消えるのか?」


「いい質問ね、まず、カタストロフィはこの街の真ん中にある時計塔の時間が狂うことで起きるみたいなの。そしてその時間を合わせるのに必要なのがサクリファイスが召喚される時に持っている鍵よ。」


「鍵?」


「ええ、私が今までで見た鍵はどれも時計の針の形をしているの。…それを使って時計塔の中にある錠を閉めることで収まるのよ」


「ということは、俺も持っているのか?」


彼女は俺の質問に対し少し神妙な顔つきになる


「…それが…あなたは特殊だったのよ」


「特殊?」


ソフィーは頷くとサイドテーブルの上にあるペンダントのようなものを俺に渡してくる。


「これは?」


「貴方が首に提げていたものよ。」


受け取ったものはよくある、

懐中時計に見えるが中心部が錠になっていて開くことは出来なかった。


「なんだこれ」


「恐らく、鍵に変わる何かみたいだけれどそれは当主様でも分からないと言っていたわ」


「とりあえず私が説明できるのはこのくらいかしら…」


「ああ、助かった。」


「どれも軽くしか説明できていないから詳しくは当主様のまとめた資料を読むといいわ」


彼女はそういうと本棚から埃の被った分厚い本を取り出し差し出してきた。

「随分と長い間読まれていなかったようだな」


受け取った本を少しめくるとカビの匂いが鼻をくすぐる


「え?ああ、そうね最近の子達はそういう分厚い本を読みたがらなかったから」


確かに、彼女が片手で持つのも少し苦労するほどの分厚さをしたものを渡されれば

誰も読みたいとは思わないだろう、実際俺も読むのは遠慮したいほどだ。


あまりのページの多さに苦笑していると


「一応何か質問があれば答えるけどあるかしら」

と彼女が声をかけてきた。


俺はソフィーの説明を思い返してみたが、生憎今は疲れのせいか何も浮かんでこなかった。


「特には無いかな」


「今の説明では、細かいことはほとんど話していないものね、もし何かあればいつでも聞いてくれて構わないわ」


「助かる」


突然知らない土地にきたことに多少の不安はあったが助けられた家が良い人で本当に良かったと思う。

…いや、俺はこの先どうやって生きていけば良いんだ?


「すまんソフィー、早速質問をしてもいいか?」


「ええ、構わないわ」


「君以外のサクリファイスは今どうしているんだ?」


「ああ、それなら…」


ソフィアはドアの外を見ると、時也ににっこりと微笑んでドアを開けた。

すると、外で聞き耳を立てていたらしい人たちがなだれ込んできた。


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