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純文学

まきょう

作者: タルト

開いてくださりありがとうございます。


不思議な話を書き綴りました。


評価・感想お待ちしています。ブックマークも是非していただければと思います。

 その鏡は、長い間雨風に晒されていた。



 そのかつての持ち主は、家族を持たず、稼いだ金の大半を物の蒐集に注ぎ込む男だった。

 男の倉庫には何十年とかけて集められた品々が並べられていたが、物盗りに遭い、警吏が様子を見に来たときには、すっかり空っぽになってしまっていた。

 それから数日して、男は行方知れずになった。

 近所の者は口を揃えて言った。きっと、全てを失ったことに気を病んだんだろう、と。


 倉庫の真ん中には、鏡が置かれていた。

 しかし、誰もそれに気づかなかった。誰もそれが見えていなかった。

 鏡の奥には、生気を失った顔で佇む持ち主が映っていたが、それは歳を経るごとに変化していった。

 嘆きは怒りへと変わり、怒りは憎悪へと変わった。憎悪はどんどんと膨らんでいった。

 鏡もそれに合わせて大きくなり、終いには、地上の全てを飲み込んでしまった。



「おい、いいものが入ったぜ。なんでもかつて魔を封じ込めた鏡らしい。どうだ? 買うか?」

「勿論だとも」

「流石、やっぱ旦那はそうこなくっちゃ」


 鏡の中には、同じ声が反響していた。同じ話が反響していた。

 男は気が狂いそうな思いでいっぱいになりながら、しかし狂いきれぬままに、いつ来るかも知れぬ終わりまで、倒れた鏡越しに天を仰ぐことを強いられた。

 逃げることはできない。いつ来るとも知れぬ終わりまで、それは続くのだ。



 鏡は魔を封じ込めたものではありませんよ。封じられた魔が鏡に転じた。それだけのこと。でも、どうして誰も気づかなかったのでしょう。

 恐ろしい魔の具象は、内に取り込んだ哀れな男にその言を届けた。

 直後、男の荒れ狂う憎しみの中にひどく悲痛な思いが混じった。声の主は、それを嘲笑った。


 しかし、この男は、一体なぜこうもみっともなく喚くんでしょう。人間は皆、この言葉が好きだったはずですよ。

「お前だけじゃない」

最後までお読みくださりありがとうございました。


重ね重ねになりますが、評価・感想、ブックマークをいただければと思います。よろしくお願いします。

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