魔王様こんにちは
だんだんと視界が開けてきた。
「どこだここ?」
周りには山や川、森があり一部だけ開けたところがある。
「向こうに行くか。」
しばらく歩くが何も見えて来ない。
あの天使め、送る場所他になかったのかよ。あれ、あんなところに見たことのある建物があるんだけど。
向こうに立っている建物は誰もが一度は見たことのある建物だった。
竪穴住居じゃね。いや、なんでこんなところに竪穴住居があるんだよ。普通異世界は中世のヨーロッパみたいなところでしょ。なんだよこれ。思いっきり日本じゃねぇか。しかも旧石器時代じゃんか。なんだよこの異世界転移。あれでも俺一回死んでるからな、転生なのか?いや、こんなことどうでもいいわ。それよりこれから俺どうしy
急に轟音が鳴り響き地面がゆれた。
「おいおい、これどうなってんだ。この異世界転移不備多すぎだろ。」
音がした方向を見てみると黒髪に黄色の瞳をした男がいた。どうやらもう一人いるらしい。俺が男の方を見ているとその男はこっちを見た。やばい、見つかった。何故かはわからないが、俺はあいつがやばいやつだと一瞬で察した。そして男はこっちへ向かってくる。
「消えた⁈」
男の姿が見えない。
「君はこんなところで何をしているのかな?」
突然耳に囁かれたので俺は咄嗟に離れて後ろを見た。
「おいおい、そんなに離れなくてもいいだろ?」
いやいや、そんな動きされたら誰だってこうするでしょ。
「なんだ?」
急に光ったと思ったら俺の足元に魔法陣がでてきた。そして強い光を放ち視界が真っ白になった。
視界が開けてくると見覚えのある真っ白な世界にいた。
「すいません。送る場所を間違えてしまいました。」
「ほんとだよ。どんなとこに送ってんだよ。死ぬかと思ったわ。でも助かったわ、ありがとう。」
「で、さっきの人誰だかわかる?やばそうな人だったんだけど。」
「さぁ?私は送る場所を間違えたと気づき呼び戻しただけであなたのことは見てなかったのでわかりません。」
「そうなのか。何回も思ったんだけどお前ほんとに天使なの?」
「疑ってるんですか?これでも私はトップクラスの天使なんですよ。」
なんだよトップクラスって。
「あぁそういえば、あなたに言い忘れてたことがあります。」
言い忘れたこと?そんなのあるのか。
「あなたには魔王討伐だけでなく、前回の転移者が残した魔道具の回収もお願いしたいのです。」
「魔道具の回収?なんでなんだ?」
「あの魔道具は強力なものが多くて今の異世界の文明では扱えないものがほとんどなんです。誰かがイタズラしたり魔道具が暴走したら手に負えなくなる可能性があります。できれば破壊してもらいたいのです。」
「でもどんな魔道具かわかんないけど。」
「大丈夫です。魔道具のほとんどが日本にあったようなものといっしょなので。見ればわかりますよ。」
「わかりました。ついでにやっておきますよ。」
「ありがとうございます。それではお願いします。」
そう言って再び魔法陣が現れ光を放ち、やがて視界が真っ白になった。
今度こそちゃんといけたよな。さっきと似ている風景だが、一つだけ違うところがある。町が近くに見えているところだ。
「よっしゃー、これからは俺の無双劇の始まりだな。」
自分で言ってて少し恥ずかしくなる。
「さぁて、これからどうしようかな?」
近くに男の人がいたのでとりあえずここがどこか聞いておこう。
「あの、ここってどこですか?」
男は少し驚いた顔をして
「お前どこからきた?いや、やっぱりいい。」
どうしたんだろうか?
「ここは東の果ての国オステンで、向こうの町が都市のシウダーだ。」
「ありがとうございます。ところであなたは誰ですか?」
「俺か?俺は魔王ヴェリルだ。」
は?おい、今こいつなんて言った?
「えっ、なんて?」
「だから俺は魔王ヴェリルだ。」
あっ、聞き間違えじゃなかったのね。
魔王様こんにちは。あはははハハハハハ。
どうしようオワタ。