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第二十話 『ナチスの一族』・九条哲人

 深夜2時。静かに個室から廊下に出ると、俺はリビングの隅にある、地上に続く急な階段をのぼっていった。一枚の扉がそこにはあった。この先は、ファーストの住んでいるログハウスへつながっている。そこで、鍵がかかっていると思っていた俺は眉をひそめた。扉が、少し開いているのだ。

 俺は開かれていた扉を押して、ファーストの住処に足を踏み入れる。木々の温もりを感じるダイニングには、ヨーロッパ風の円卓とティーセットにまず目がいった。少し進んでみると、部屋の隅にベッドと大きな枕があった。ベッドの横には、一人用のソファとローテーブルが置いてあり、テーブルの上には、ばらばらに分解されたハンドガンが転がっていた。

 そして、俺はどこにもファーストがいないことに気づく。このログハウスには、ウッドデッキがあったはずだ。見れば、窓が開いていて、カーテンがゆらゆら揺れている。揺らめく布越しに、ウッドデッキにテーブルと椅子があること、そして誰かがくつろいでいるのが見えた。

 俺はウッドデッキに踏み入れる。すると、そこではファーストがコーヒーカップを片手に、のんびりと満月を眺めていた。

「あら、夜這い?」

「そうだと言ったらどーすんだよ」

 ファーストの対面の椅子に座りながら、意地悪を返してやる。やられっぱなしでいるのも、そろそろ飽きていたところだ。

 だが、俺はすぐに後悔することになる。

「今すぐベッドにいってあげるだけよ」

「……やめて。負け」

「ふふ。あなたは、からかわれている方がお似合いよ」

「うっせ」

 俺を笑いながら、ファーストはコーヒーカップを置いて、一度部屋の中に戻っていった。帰ってきた彼女は、俺の分のコーヒーを差し出した。

「どうぞ」

「ごっそさん」

 受け取った俺は、綺麗に見える星空と満月を見上げる。辺りは木々の生い茂った自然に囲まれており、こんな人目のつかない場所をアリスもよく見つけたものだと感心した。

 のんびり過ごせて、いい場所だ。

「で、なんで夜ふかししてるんだ」

「え? だって、あなた、私に話したいことがあるって言っていたじゃない」

「え、まじ? いつそんなこと言ったよ」

「今、目が言ってるわ」

「……はは」

 似たようなやり取りをしたことを思い出した。そうか、こいつは俺がこういう行動に出ることを予期していたのか。だから、俺のためにドアの施錠を解除していた。

「鍵がかかっていたら、溶かそうと思ってた」

「新築なのよ。勘弁して」 

「―――要件、分かってるんだろう」

「ええ」

 コーヒーカップを覗く。そこには、晴れ晴れとした顔の、俺が映っていた。

「私の住んでいるここなら、霊石反応をキャッチされず、『アルカサル』中野区駐屯地にいつでも襲撃できるわよ」

「アリス部長が、お前の霊石をキャッチしないように設定しているはずだからな、このログハウスは。すまんが、少しだけ借りるぜ」

「でも、あなたが行動を起こした後、私はどうすればいいのかしら。契約を破棄する気?」

「すまん。まだ全然金払えてねえのに。このログハウスに残れるかどうかは、アリスに聞いてくれ」

「……本気なのね」

「ああ」

 俺はコーヒーを口につけて、黙って深く椅子に座る。すると、静寂が流れる。こいつとの時間、なかなか悪いものじゃなかった。本音を言えば、楽しかった。

「全部捨てて、私とくる?」

「……」

 ファーストと生きていく選択か。ありがたい提案だ。ファーストの仕事を手伝って、こいつと契約した分の金を払っていくことも一つの道だろう。

 だが、それではいけない。

 俺は黙って首を横に振った。

「……そう。なら、ここで待ってるわ」

「待ってる?」

 ファーストが俺を見ないで、ぼやくように言った。

 彼女は持っているカップの中を見つめて、また独り言でも言うように続けた。

「あなたが帰ってくるのを、待ってる。契約破棄は認めないわよ」

「……はは。ああ、そうだな。帰ってくる気でやるよ」

 ファーストなりの応援を受け止め、俺は笑った。

 それから、俺たちは一言も話すことはなかった。ファーストはコーヒーを飲み終えると、部屋に戻って眠ったようだった。俺は、朝日が昇るまでぼうっと空を眺めていた。

 光は、俺のために朝まで起きてくれた。付き合ってくれた。その時、約束したのだ。光が眠れなくなったら、起きていると。困ったときは、付き合うと。今度は、俺が助けるのだと。

 俺は立ち上がり、昇ってきた朝日に照らされながら、ぐっと伸びをする。そして、その時が来るのを待つことにした。空にゆっくりと浮かんでいき、大木の枝に腰掛ける。すぐ近くに広がっている、『アルカサル』中野区自衛隊駐屯地を見下ろした。

「やってやるよ、他にねえから」


 





『トリグラフ』からの使者がやってきたのは、ソフィア死亡から三日目だった。中野区自衛隊駐屯地大演習場の中心で、『アルカサル』機械兵器科部長の桜木アリスは、桜木エマの率いる自衛科部隊十数名を背後に待機させて腕を組んで待っていた。アリスの隣には、唇をきゅっと引き結んだ光学兵器の橘光がいる。

 アリスは、ちらりと光に目を向ける。光には、逃げ込んだロシアの光学兵器が破壊され、代わりにお前を取り返そうとしている、という事実のみを伝えてある。それが自分のオリジナルで、実は光がオリジナルのクローンであることは伏せたままだ。

 アリスは、その物憂げな顔に言葉をかけた。

「安心しろ。お前を渡すくらいなら戦う。お前が帰る必要ねえよ」

「……ん。ありがとう、アリス」

 しかし、まだ光の顔から影が消えない。自分を売るような真似は、『アルカサル』に限ってありえないと信じているはずだ。それでも暗い表情が消えないということは、別の悩みを抱えているということである。

 アリスは心当たりがあったのだろう。エマたちには聞こえないように、小声で光に問いかけた。

「朝起きたら、消えてたんだよな。確か」

「ん。これだけ残して、いなかった」

 光の両手は、大事に何かを包んでいる。手を開いた彼女が持っていたのは、九条哲人の首にかかっていた十字架のネックレスだった。

 アリスは、唇を噛んで視線を下ろす。

(……なに考えてやがる、哲人。駐屯地内にはいねえ。霊石反応がレーダーに引っかからなかった。かといって捜索範囲を広げて探す時間もなかった。……奴らのせいでな)

 アリスが忌々しげに睨んだ先には、駐屯地正門から入ってきた一台のリムジンだ。ロシアの秘匿国防組織『トリグラフ』。『アルカサル』同様、『殺戮機械少女』を中心に『殺戮機械少女』の脅威を取り除くための組織だ。白いリムジンは大演習場の砂地に侵入し、真っ直ぐに走ってきて、アリスたちの前に止まった。

 後部座席から現れたのは、三体の『殺戮機械少女』だった。全員が黒いスーツを着用している。Sクラスの音響兵器型少女、ヴェロニカ。同じくSクラス極超音速機型少女、エカチェリーナ。Aクラス陸上兵器型少女、アーニャ。ヴェロニカは、赤毛のポニーテールをした背の高い女だった。退屈そうにあくびを噛み締めており、首の関節をコキコキ鳴らしている。エカチェリーナは、灰色がかったセミロングの髪をしている少女で、右目が長めの前髪で隠れてしまっている。ゆったりとした動作が上品で、笑いながらじっと橘光を見つめている。そんな二人に挟まれているのは、頬に大きな傷跡が走っている、黒髪ショートヘアのアーニャ。アーニャは苛立たしげに眉根を寄せていて、駐屯地全体を見渡していた。

「いやはや。お久しぶりですね、アリスさん」

「……クソジジイ。まだ死んでねえのか」

 リムジンの後部座席から最後に登場したのは、初老のスリーピーススーツを着こなした男だった。白髪をオールバックにしていて、ブリムの長いハットを被っている。杖を持ってアリスに向かい合った男は、光に目を向けると微笑んで言った。

「はじめましてかな、セカンド。私はイヴァン。『トリグラフ』の機械兵器科を任されている者だ。よろしくね」

「セカンドじゃない。私は橘光」

「そうかい。まあ、名前は何でも構わないよ。さあ、帰ろうかセカンド」

 光の言ったことをにこやかに笑ったまま受け流し、手を差し伸べた。光は一歩後ろに身を引くと、イヴァンは大げさに首を横に振る。

「だめじゃないか。君たちが我々の貴重な光学兵器を破壊したんだろう。責任を持って、そちらの光学兵器を譲ってもらいたいのだが」

「ふざけろクソジジイ。うちの連中は破壊しちゃいねえ。お前らが仕込んだタネだろうが」

「ふむ。しかし、日本において、日本の『アルカサル』が捕獲中に、ソフィアから生命反応が消えたんだよ。アリスさん、これは客観的に見て、そちらが捕獲の時に過剰な攻撃を与えたからではないかな」

「知らねえな。発見したときには、ばらばらだったんだよ。消えろ。光は渡さねえ」

 取り合う気のないアリスは、虫を払うように手を振った。イヴァンはハットを深く被り直すと、口を引き裂くように笑って杖を持ち上げた。その先端で、後ろに並んでいた『トリグラフ』の『殺戮機械少女』を指し示す。

「ならば譲歩しようじゃないか。こちらの3体、どれでもお好きなものとセカンドを交換する、ということでどうかな。Sクラス2体、Aクラス一体。選んでくれたまえ」

 アリスは光に聞こえないよう、イヴァンの目の前まで寄っていって声を落として尋ねた。

「……そこまでして、なぜ光が欲しい。クローンニングのためなら、そいつらでも十分だろうが」

「クローニングはね、ソフィアの肉体でなければだめなんだ。既に大戦の頃から、ソフィア専用のクローニングパターンを蓄積していてノウハウが出来上がっている。今さらソフィア以外の身体をベースに霊石適合体を生成するのは大変なんだ」

「ゲス野郎が」

「国防のための技術さ。相変わらず下品な話し方だね、桜木アリス」

 アリスはイヴァンを血走った目で睨みつけた。

 低い声で、最後の答えを出す。

「ソフィアの破壊に私たちは関与してねえ。だから光を渡す義理はねえ。1分以内に消えろ。じゃねえと―――おっぱじめるぞコラ」

「……それが答えかね。あくまでもシラを切る、と」

「そりゃ、こっちのセリフだろうが」

 視線の交わる二人を通り過ぎていった影があった。短い黒髪に傷のついた顔をした少女、Aクラス陸上兵器型『殺戮機械少女』のアーニャだ。彼女は光の目の前まで歩み寄ると、襟首を掴んで引き寄せた。

 光は苦しげな声を出す。

「うっ」

「あんたがさっさと来れば終わるのよ。ほら、こっち来い」

「やだ……!!」

 アーニャを突き飛ばした光は、咄嗟にデコピンの構えを取った。その様子を見て、アーニャは嗜虐的な笑みを浮かべる。右手にショットガンがじわじわと光を伴って生成され、その銃口をデコピンに対して向けた。

「おいおいやる気かよ。こっちはSクラスニ体、Aクラスの私一体だぜ。お前一人と自衛科だけで何ができる、まがい物」

「まがい物?」

 首を傾げた光に、アーニャが続けた。

「世界で二番目に生まれた『殺戮機械少女』セカンド―――ソフィアの分身、それがあんただ。そうか、まがい物にはでっちあげた記憶を言い聞かせて成長させるんだっけか。知らねえのも無理ないね」

「……どういう、こと。意味が分からない」

「分かる必要はないよ。私は本気を出せば3秒で対戦車ライフルクラスの銃火器を生成できる。後ろの二人はSクラス。あんたが一次の大戦から生き残り続けたSクラスクローンでも、さすがに無理があるんじゃないのか」

 話の内容に困惑する光をアーニャは嘲り笑う。

 確かに勝ち目はないと判断したのか、光のデコピンの構えが崩れていった。アリスは拳を握り、エマに合図を送る。

(やるしかねえな。あれを使うしか―――)

 アリスの思考が途切れた。

 いや、その場にいた全員の思考が途切れてしまった。とんでもない現象が、そこで発生していたからだ。



「なんだよ、あんた。ファーストの劣化版じゃねえか」



 光に向けられていたアーニャのショットガンが、ドロドロに溶けて爆散する。いつの間にか光とアーニャの間に割り込んでいた男が、ショットガンの銃身を握り締めたからだ。

 意味の分からない状況に呆然としたアーニャを前に、男は握手をするような気軽さで右手を広げてきた。瞬間、アーニャの身体が一瞬で液状化して弾け飛んでいった。とんでもない高熱によって、空間がグニャグニャと歪んでいる。吹き飛んだ血肉すらも気づけば消えていて、残ったのは真っ黒な大地が広がる異常な景色だけだった。

「あのサド女なら、まばたきより早く戦闘機に積むガトリング砲が生成できるぜ。弱っちいなあ、お前」

 男は慣れた手つきでタバコをくわえると、未だに思考が回復していない『トリグラフ』の『殺戮機械少女』を見る。2体はそれぞれの反応を示した。ヴェロニカは好戦的に笑って、エカチェリーナは浮かべていた笑顔を引っ込める。ヴェロニカは咄嗟にイヴァンを抱えて五十メートルは遠くに跳躍する。一方、エカチェリーナはいつの間にか持っていたナイフを男の首に振るっていた。

 しかし、切りつけたナイフの半分から先が消滅している。

 エカチェリーナは男を見上げて、再び優雅に微笑んだ。

「強いんですね。お名前はなんですか」

「―――九条哲人。ナチス製化学兵器」

 男はくわえたタバコにライターで火をつけた。エカチェリーナは興味深そうに男の顔を見上げている。その時、そんな彼女に遠くからヴェロニカの大声がかかった。

「離れろ、リーナ!!」

「遅えよ」

 男が呟いた直後、持っていたタバコが豪炎となって走り抜けた。焼け焦げた地面がさらに焼き直されて、異臭を伴う煙が大地から溢れている。

 しかし、エカチェリーナはいつの間にかヴェロニカとイヴァンの傍に戻っており、まじまじと男の姿を眺める。

「おーいお兄さん、一体どこの人なんだ。君」

 イヴァンを後ろに隠したヴェロニカが、男に向かって尋ねる。隣のエカチェリーナも小さく頷いていた。

 そして、男は行動を取った。

 立ち尽くしていた橘光を、豪快に蹴り飛ばしたのだ。勢いよく吹っ飛んだ光は、受け身を取って転がり、すぐに体勢を整えた。

 その顔には、理解できないという言葉が張り付いていた。

 男は光を一瞥すると、言った。

「俺は『ナチスの一族』の『殺戮機械男子』。物質Nを扱う兵器だ。お前たち『殺戮機械少女』を殺して回ることが仕事だ」

「……これはこれは。物質Nとは。いやたまげたよ」

 ヴェロニカの裏から、イヴァンの好奇心でいっぱいの弾んだ声が響いた。ヴェロニカの静止も聞かず、彼女の前に踏み出して男の顔を見つめる。

「『ナチスの一族』か。ナチス復活を企むドイツの裏組織だね。聞いたことはあるよ」

「ああ。そのために、邪魔な『殺戮機械少女』を殺して回っているのが俺だ。今回はロシアの『トリグラフ』の個体が目的でな―――Bクラス程度のザコ兵器がいたろう。あれも俺が殺した。今度はそこのニ体だ。その次は『アルカサル』の、そこの一体」

 光を指差した男は、イヴァンたちのもとへ歩き出す。少し奇妙だったのは、男は『アルカサル』自衛科のメンバーに一切攻撃を仕掛けなかったことだ。不用意に近づくこともない。あくまでも『殺戮機械少女』だけと接近して戦っている。

「おい、お前」

 アリスは男に声をかけた。

 その表情は、痛々しい傷を見たような、耐えられないものを直視するような顔だった。それは、アリスだけではない。エマも、他の自衛官たちも、なぜか男に悲痛な顔を向けていた。

 ただ一人、橘光はぼうっとした顔で男を見つめている。

「―――バカ野郎が」

 アリスは男に暴言を吐いた。歯を食いしばりながら、絞り出すような声だった。対して、男は笑っていた。黙って『トリグラフ』の連中を追い詰める。

 イヴァンは眉根を寄せて言った。

「あなたが、うちのソフィアを破壊したんですかな」

「全裸で銀髪の女だろう。ああ。爆殺だ。綺麗な花火だったぜ。女の肉が弾ける瞬間は、やっぱり格別な景色だな。話を聞いていたが、『アルカサル』は関係ねーよ。俺がやったんだからな」

「……イレギュラーの仕業。仕掛けた爆弾の発動前に、あの男に殺されたのか。たまたま……?」

 イヴァンは『アルカサル』側の仕込んだ演技だと考えた。第3勢力によってソフィアは破壊された、というシナリオを作ったのだと。しかし、『アルカサル』に登録されている『殺戮機械少女』の中にあのような『殺戮機械男子』はいないはずだ。また、先ほど橘光を攻撃していたことからして、仲間だという断定が難しい。『ナチスの一族』という裏組織の存在は知っている。確かに、あれは見間違いようのない高温物質、ナチスの見つけた物質Nだ。Aクラスの機体を一瞬で消し炭にしたことから、それは信じるに値する。ならば、『ナチスの一族』による刺客で、たまたまソフィアが殺された、『トリグラフ』が狙われた、と考えるべきか。

 イヴァンは男を第三勢力の刺客だと判断し、『アルカサル』のアリスに声をかけた。

「どうやら、共闘が必要みたいですな」

「……ああ。光、やれ」

 アリスに命令された光は、一歩も動かなかった。しばらくすると、ふらふらと危ない足取りで歩き出した。アリスの傍を通ったとき、アリスは小声で耳打ちをした。

 光の顔から、血の気が引いていく。

 彼女は呟いた。

「だめ。テツヒト。だめ」

「……もう遅い。光、ふりでいい。戦いを演じろ」

「無理。無理だよ、アリス。できない。逃さないと。テツヒト、助けないと」

「光。頼む」

 小さな声でやり取りをしているアリスと光を見て、男は大げさにため息を吐いた。

 イヴァンたちに向かって、声を上げる。

「さすがにSクラス3体同時はやばいな。一度退く」

「逃しませんよ。物質Nの兵器化、Aクラスを消し炭にしたほどの脅威です。『ナチスの一族』とあなたを国際連合に通達、その他の国にも排除対象として協力を要請します。あまりにも危険すぎる」

「そりゃどーも」

 男はひらりと手を振って、空に浮かんでいく。イヴァンを安全な場所に移すことを優先したヴェロニカとエカチェリーナは、すぐに追うことはしなかった。世界中の秘匿国防組織が動き出す。『ナチスの一族』によって製造された、世界中の『殺戮機械少女』を殺して回っているという『殺戮機械男子』。その能力は最強の破壊物質、Nの使役。Aクラスを瞬殺するほどの脅威が野放しにされていいはずはない。

 この日、九条哲人と名乗る『殺戮機械男子』は国際的テロリストとして登録される。世界中の秘匿国防組織が『殺戮機械少女』を動員し、その謎多き脅威を排除するために動き出した。

 九条哲人は―――世界を敵に回した。

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