1話 【剣聖】の最期
俺ことリーン・セイクリッドは幼い頃から騎士に憧れ、日々を剣の鍛錬に費やしてきた。
悪党を成敗して弱きを救う理想の騎士像は、誰もが一度は憧れるものではなかろうか。
そんな思いが天に届いたのか、俺は十五歳の【成人の儀】で天から【剣聖】スキルを授かった。
【剣聖】は最強のスキルとも呼ばれ、剣を握れば地を砕き天すら貫くとされている。
現に【剣聖】スキルを授かった俺は剣の一振りで小山を割くほどの力を得た。
故郷の皆は「努力の成果だな!」「流石はリーンだ!」と褒め称えてくれたが、俺は慢心せず修行を続けた。
力に溺れずいつか理想の騎士になる、その夢を貫き通したかったから。
それから月日は流れ、俺はソーディアス王国の近衛騎士団に入団し、十代目の団長にまで上り詰めた。
団長として活躍していた日々は激務ながら充実していて、俺も夢に一歩近づけただろうかという充実感も満足感もあった。
(このまま俺はもっと強くなる。悪を退ける勇き騎士になるために!)
……そう思っていたからこそ、このあっけない終わりは何も予想できていなかった。
「はぁ、はぁ。くそっグラシャめ……!」
俺は豪雨の中、傷ついた体を建物に寄り掛からせた。
全身に裂傷があり出血も多く、冷えた体から体温が失われてゆく。
俺は今や追われる身だった。
その理由は先日、謀反を疑われたためだ。
これまで守ってきた王を計画的に暗殺しようとしたと、無実の濡れ衣を着せられた。
その主犯は貴族のグラシャ・エーカーで間違いない。
王国における最も力の強い貴族、四大貴族の一角であるエーカー家の当主だ。
俺さえいなかったら息子が近衛騎士団の団長になれたと、前に突っかかられたのを思い出す。
「平民上がりの団長じゃ、貴族からのウケも悪いか……」
俺はグラシャ家の力で罪人に仕立て上げられ、強制的に国を追放された。
そして今は追手につけられ、遂に追い詰められている最中だった。
「おいリーン! いるんだろう? 出てこいよぉ!!」
「ガイス・エーカーか!」
周りは追手に囲まれている。
今更隠れても無意味かと、俺はグラシャの息子のガイスの前に姿を現した。
「随分とみすぼらしい姿になったなぁ、【剣聖】サマがよ!」
「お前は空席になった近衛騎士団団長になったみたいだな」
ガイスの外套には竜の紋章をかたどった近衛騎士団団長の紋章が刻まれていた。
「で、親の力で団長になった気分はどうだ?」
「このっ、逐一神経を逆なでする奴だな。そんなに死にたいならすぐ殺す!」
ガイスとその部下が一斉に押し寄せてきた。
俺は剣を抜き応戦する。
甲高い剣戟が交わされるが、傷ついていてもまだ俺の方が奴らより強かった。
「これが【剣聖】の力か!」
「侮ったな、ガイス!」
俺はガイスの剣を弾きあげ、一気に距離を詰めた。
その直後、何を見つけたのかガイスはニィと歪んだ笑みを浮かべる。
「そいつはどうかな?」
ガイスは予備の剣を明後日の方向へ投擲する。
その先には傘をさしてお使いに出ていたらしき、姉妹がいた。
「【剣聖】サマが子供を見捨てたりしないよなァ!!」
「姑息な手を!!」
俺は咄嗟に地を蹴って姉妹を庇うが、俺の背にガイスの投擲した剣が突き刺さった。
「がはぁっ……!?」
「今だお前たち、トドメを刺せ!」
姉妹を庇って動きを止めた俺へ、ガイスの部下が一斉に剣を突き立てる。
いかに【剣聖】とは言え、流石に致命傷が過ぎていた。
「でも、守れてよかった……」
俺は守り抜いた姉妹の泣きそうな顔を最後に見て、事切れた。
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