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第4話 黒蝶

 少女はその日、お気に入りのゴシックロリータを着て友人とショッピングに出掛けていた。彼女の友人はというと、黒を基調としているけれども甘菓子模様がちりばめられ、フリルをふんだんに装飾された厚手のワンピース――ロリータのワンピースと、その中に白いブラウスを着込んでいるという装いだった。二人は週末にもなると、それぞれの趣向にあった服やアクセサリーを買いに出かけたり、特定の種別に属するバンドのライブやイベントに行くような仲だった。彼女達が並んで歩くと、その奇抜なファッション故に否応いやおう無しに周囲の目を集めづにはいられなかったのだが。

 このように二人は仲の良い友人同士だったが、少女はこの友人にある種の物足りなさを感じていた。それが何かというと、『精神的な闇』であった。少女は退廃的・病的なネガティブさを愛した。少女は心の一部分に陰鬱があった。友人にはそれがなかった。それが両者の違いなのだが、友人は少女の陰の部分を受け入れていた。この相違は彼女達のファッションの嗜好にも表れている。


 何はともあれ、この日の買い物は多目の出費ではあったものの、気に入ったブラウスをとうとう見つけることが出来たので、少女はいくらか満足していた。

 しかしながら、友人と別れて一人家路につくと、黄昏と共に彼女の中で強い孤独感が頭をもたげた。その孤独感は、彼女の心に虚構の空洞を幾つも開けた。漆黒を着こなした少女は、『負の感情』の共感者を欲していたのだ。

 今まで楽しい気分であっただけに、その空虚な空洞を吹き抜ける切ない風鳴りは、一層身にこたえた。


 少女が数馬を見かけたのはそんなときだった。

 猫背で背を丸めながら、俯き加減で歩いてる。男の子にしては可愛らしい小さな瞳は、うれいに濡れてかげりながらも、その奥底に鋭い眼光を隠していた。

 一目で彼女は彼に親近感のようなものを感じた。それは自分と似ている、と言うよりも、何か重要なもの……ファクターといったものをお互いに持っているのではないか、という感覚だった。

 少女は惹かれるように、彼の後をついていった。始めは帰り道に沿っていたのだが、明らかに帰り道と違う分岐点を彼が進んでも、始めから家路が選択肢に無かったように、青年の行く方へと脚を向けた。何か思い詰めて足早に歩く青年は、背後からついてくるゴシックロリータの女の子にさえ気付かなかった。

 やがて青年が破れたフェンスの間から陰険なる廃墟の中へと入るのを、少女は物陰から見届けた。ここに来て少女は初めて迷った。果たしてこのまま、彼の後へとついて行くべきなのかどうか。時は、陽が間もなく遠く山の向こうに姿を隠そうとしている頃だった。


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