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第2話 審問


 ビルの外壁を伝い昇って来た風は、数馬の指に挟まれた煙草をチリチリと燃やした。数馬の視線は自然と、その馴染みのない炎に吸い込まれる。一度試してみたい、そう思って自動販売機で買って来た煙草だったのだが、何度か口を付けてみたものの、彼の綺麗な肺は穢れた煙を受け付けようとはせず、情けない咳き込みを彼に誘発させただけだった。


「で、本当はこんなところで何していたの?」

数馬は背後から問い掛けられた。先程から何度も繰り返される質問だった。この質問、そしてこの質問者たる少女こそ、今の彼にとっての悩みの種だった。

 小さな苛立ちの刺を生やした質問に対して、数馬は彼女の方をまともに見ようともせず、物憂い様子で肩ごしに答えた。

「別に。」

自分で発したその声が、その場にそぐわない抑揚であるように数馬には思われた。

「ただここで夜の街を眺めているだけだって、さっきから言ってるじゃないか。」

付け足した言葉も、不自然な響きを持って彼の唇から生まれ、冷たく硬い壁面にたちまち吸い込まれていった。

「あとこれ……煙草も試してみたかったから」

と、言い終わらないうちから、わざわざこんなことまで説明してやる必要もないな、と思った彼の言葉はほとんど消えそうなほど尻すぼみになっていた。

 素っ気ない数馬の答えに彼女はふーんと頷くものの、その声色に納得したような様子は微塵も含まれていなかった。


「夜の街を眺めに廃墟へ、か…。ロマンチストなんだね。でも、あなたはそんなタイプには見えないんだけどな」

不躾ぶしつけに投げられた言葉の重みを、数馬は背中の肌で感じ取った。

 一体、何なんだろう、この女の子は。その存在への非難を含んだ疑問が、彼の心に覆い重なっていた。そして一つの疑問はまた新たな疑問を引き出し、新たな疑問はまた別の疑問を生んだ。一体、彼女は何をしにこんな所まで来たのだろう。何でよりによって、この建物のこのなんだ。何で僕に構うのだろう。何で僕の邪魔をするのだろう。彼の心はたちまちの内に、疑問によって覆い尽くされていった。

……そもそも、彼女は何者なんだ?


 数馬と彼女との出会いはさかのぼること、十数分。つい今し方のことだった。


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