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巡りの星  作者: shishy
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知らない同期

 謎の女性社員『三芳 ひかる』。

 昨日の橋爪部長の変貌や、アサダさんとの関係の劇的な変化だけならまだしも、ついには、自分が全く知らない人物が目の前に現れた。しかも、相手は自分のことを知っているし、他の社員も皆、彼女の存在を普通に受け入れている。恐らく、知らないのは私だけだろう。

 私は再び、大きく動揺した。

 ここで自分が騒ぎ出せば、頭がおかしくなったと思われて、そのまま病院送りかもしれない。

 やはり、とりあえずは、周りと話を合わせるしか無い・・・。


 そう思いを巡らせてると、アサダさんが珍しく始業ギリギリの時間に出社してきた。いつもは部下より早めに出社して、黙々とメールチェックをしている時間の筈だった。


 アサダさんはデスクにつくなり、ちらっと私の方に目線を向けてきた。未だ心配してくれているのかもしれない。私は目線を受け止めてから、上司と部下の関係においてごく自然な会釈を返すと、アサダさんも少し笑顔で会釈を返してきた。どこも変では無く、自然な空気感のはずだったが、どうやら自分の顔が少し赤くなっているような気がしたので、慌ててタブレットの上に視線を落とす。


 ふいに、個人携帯にメールが入った。

 画面を見ると、差出人:ミキ、とあり、本文に『だいじょぶ?』と一言。

 再び顔を上げると、既にアサダさんは仕事に取りかかった風の姿で顔は下げたまま、目も合わせない。

 

 私はそのメールに甘えて弱音を伝えるか、否か、一瞬迷った。しかし、結局はミキに心配を掛けたくないという、男のメンツとしての思いが勝り、強がって『大丈夫、ありがとう。』と返信するだけに留まった。


 すると、すぐにメールが返ってくる。


『よかった。今日、家にいっていい?』


 ・・・!一瞬心臓が飛び出そうな鼓動の高鳴りを覚えつつ、息を呑んで、必死に平静を装う。そして、震える手で、ようやく短いメール文を打つ。


『うん。』


 またすぐに返ってくるメールには


『♥』


 ・・・もう、だめだ。今日も始まったそばから、色々と刺激が強すぎる。今日一日、仕事になるだろうか・・・。自信が無い。

 そう思いながら、ひとたび大きく深呼吸をして首を横に振る。

 

 気づけば部の会議が始まる時間が近づき、同じ部署の社員が会議室に向かって移動をはじめていた。

 隣の島田も移動しかけていたので、気持ちを切り換えて、私も会議室へと向かった。


 会議室の中には、アサダさんも、あの三芳ひかるもいた。全部で20名近い部の社員に加え、遅れて入ってきた橋爪部長を交え、いつもと変わらない部の会議が淡々と進行した。

 何の変哲も無い、会議。それでも、橋爪部長の素敵さは昨日と変わらず、心なしか、部下の皆もいきいきとしている。不思議なのは、そこに三芳ひかるも、何食わぬ顔で普通に混ざって話を聞いていることだ。やはり、彼女は私と同期の社員で、ずっとこの会社にいることになっているのだ。それは疑いようが無い。


 会議は一時間ほどで終わった。


 特に、例の機密案件については語られず、日常の業務の延長にある事業の中期計画に基づいた進捗タスク管理についての話に終始した。また、次回の部会で、私が先日の海外出張の報告をまとめて皆の前で話すことになった。出張の面倒くさいところはこれなのだが、経費で海外視察させてもらっているのだから、仕方がない。これも大事な仕事だ。


 その日の午後、大急ぎで海外出張のレポートをまとめている私のデスクに、あの三芳ひかるがやってきた。


「イナダくん、あとで、ちょっと話せる?」


ご覧いただきありがとうございます。。。この物語は10万字を超え、只今完成間近。

100近い連続投稿になるかと思いますが、引き続きお楽しみください。

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