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火の魔術師ヒートと。⑤【挿絵】

「ああ、お帰り。」

 森の出口でカンラーが迎える。

「おう。」

「あ、ヒートさん! それ反則……。」

 カンラーは言う。キワトの森から出て来たヒートがその背に毒状態のチカをおぶって来たからだ。

「うるせー! こんぐらい大目に見ろや。」

「……もう! 今回だけだからね! ……で、どうだった? ちゃんと攻略出来た?」

「ああ、まあ余裕だったかな。オレ以外は。」

「良かった。チカさんレベルも5から6に上がってるようだし、これで一安心だね。」

「何だよ、カンラー。やけにチカに肩入れすんのな?」

「……ま、新人冒険者だしね。」

 カンラーは当たり障りの無い言葉でその場をごまかす。ヒートはチカを背負い夕闇の中、チカの住むランササの町へと向かった。


挿絵(By みてみん)


 チカはヒートの背中で揺られフラフラとする意識の中、何か夢遊病のようなおぼろげな夢を見た。ふわふわと浮かぶような夢。天も地も無い感覚、どこにも引き寄せられない、どこからも縛られない、どこかで体験した事がある重力の無い、そんな感覚を。



「おい、着いたぞ! チカ起きろ。」

 ヒートからの声にチカは目を覚ます。

「んあ? う、うん…、ども、どうも……。」

 ふらふらとヒートの背から降りるが足がもつれ、転ぶ。

「あいた!」

「おい、大丈夫か?」

「もう! 心配だからこれもあげるよ。」

 カンラーが金色の何かを手にチカに歩み寄る。

「何コレ?」

「これは『クライアンクレット』。足首に付けるアクセサリーで、私の所までアポ無しで来れるから何か困った事があったらそれで来て。でも街の中からじゃないと使えないから注意してね。」

「ああ、どうもあんがと。それじゃあ乙~。」

「はいお疲れ様。チカさん、毒の治療もして今夜はゆっくり休んでね。」

「うん。あー疲れたちゃん……。」

 チカはフラフラと自宅のアパートに帰って行った。

「全く、こっちが疲れるっての! 変な奴だったぜ。……じゃあオレも帰るわ。」

「はは…、ヒートさんもお疲れ様。」

「おう。じゃあな。」

 ヒートも自宅のログハウスへと帰って行った。



 ───その夜、カンラーの館にノックの音が響く───。


「誰? こんな夜中に……?」

「あたし。チカだけど。」

「どうしたの? チカさん、こんな夜中に?」

 カンラーが何事かとチカを迎える。

「……泊めて。」

「え? 何で?」

「……アパート……、帰ったら追い出されてたから…… 。」

「………そう。…え? えーーーーーーーーーー!!?」



「と、言うわけでチカさんは家賃滞納でアパートから追い出されてしまいました。」

「……そうか。大変だな。」

「不動産屋のブラックリストにも載っちゃっててお部屋も借りられなくなりました。」

「……そうか。で、何でオレの家に来る?」

「ほら、チカさんもご挨拶して!」

「今日からよろしくオナシャース!!」

「…何だその荷物は?」

「で、ヒートさん。どのお部屋が空いてるの?」

「いいじゃない。一緒のパーティなんだし。」

「よくねーよ! つーかカンラー! おめーウンエイなんだからチカの部屋ぐらいどうにかなるだろ! 最後まで面倒見ろ!」

「う、ウンエイは秩序を守る組織で不動産屋じゃないからそれはちょっと……。それにヒートさんのお家、元々4人で住んでたみたいだし丁度良いんじゃない?ほら、シェアハウスなんて〝青春〟って感じで私は好きだけどなー。憧れちゃう!」

「じゃあおめーの家に住まわせろよ! 広いんだろ? 仮にもウンエイなんだしよ!」

「わ、私の家は無理よ! それに仮にもウンエイの管理職よ? 冒険者を屋敷に住まわせてるなんてバレたら私ウンエイをクビになっちゃうよ、クビ!」

「いいじゃねぇか! なれよクビ! あー使えねぇな!」

「ねえ、あたし西日が当たらない部屋がいいんだけど。」

「ほら! チカさんもこのお家気に入ったみたいだし、ね?」

「あ! テメーら勝手に荷物入れんなし! もー!!」


 こうしてヒートの家には新しいパーティメンバーの居候が住み着いた。

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