エピローグ【挿絵】
その後あの4人組は、ウンエイらに連れて行かれたとヒートから聞かされた。
強奪行為を日常的にしていたのだと言う。
なのでウンエイで厳正に処分されたとも知らされた。
「しかし、何だったんだ?」
「何が?」
「オレが聞いてんだよ、チカ。」
覚えてないけどヒート達が言うにはその時のあたしはすさまじく、光の技と地の力を操りレベルは最大とも言える99だった。
それであの盗団パーティを一撃で蹴散らして行ったと言う。
レベルたった13の戦士のあたしが?
レベル30程もあるあの4人をどうやって蹴散らせたのか――。
ヒートが片眼鏡のステータスグラスであたしのレベルを計る。
「ほら、何回計ってもチカのレベルは13、属性は地だけ、職業は戦士っと……。壊れてはいないんだよなあ。このステータスグラス。…そう言やさ、お前が戦った後ブッ倒れる前に言ってたよな? 『チカちゃん、たのんだ』って。アレ何だ?」
「あ、ああ、そう言えば……。た、確かに言いましたよ。『チカちゃん、たのんだ』て……。」
「な、言ったよな?」
あの人だ!
あたしには解る。
あの人は、トウカさんはあたしの事を『チカちゃん』と呼ぶから。
「さ、さあ、寝言じゃないの?」
あたしは口を閉じ、密かに奥歯で舌を噛む。
あたしはトウカさんが来てくれて、あたしの体を使ってあたしを助けてくれた……。
そう思う事にした。
それから何日かしてあたし達は首都城エトスポリスに来ていた。
あたしはキワトの森でマッダー=ヴァーンと共に違反者捕獲に協力したと言う事でウンエイから表彰される事になっていたからだ。
「しかしよ、修行中に違反者捕まえるの協力してウンエイから表彰とはオレらも鼻が高いぜ。」
「お、おめでとうですん。チカさん。」
でもあたしは浮かれる気分にはなれなかった。
(違う! あの人は違反者なんかじゃない。あたしを助けるために犠牲になった、あたしにとっての『恩人』だ!)
しかし、あたしは言わない。
今は言えない。
「おう! クソな式典行って来るわ!」
あたしは精一杯作った偽の笑顔で会場へと赴く。
―――いつか言える日が来るだろうか?
何も覚えてないこの二人に。
ヒートとミズヒにあの人が、トウカさんがあたしの、『チカの面倒を見てやってくれ。』って頼んだと言う事を。
「チカ、売んのか? それ?」
あたし達は首都エトス城下町の市場に来ていた。
表彰式が終わってすぐにだ。
「うん。何かかっこ悪いしコレ……、赤いし!」
あの人を、トウカさんを奪った同じ赤が忌々しい。
「も、もったいないですよ。う、ウンエイの兵装備なんてそうそう売ってる物でもないですし………。」
ウンエイからの協力報酬、『モンザアーマー』一式。
あたしはあの人を奪ったこの赤の色の鎧を着ける事は出来なかった。
「――だって……。」
あたしは言葉を選び、理由を考える。
「だってお金いるじゃん! いい加減みんなの装備も新調したいし。それにそんな武器じゃ足手まといだわ~♪」
あたしは二人の武器を指さし、強がる。
「オメーこそ運良く光魔のハンマー持ってるだけの紙装甲じゃねぇか。」
「た、盾持てないんですし、せ、せめてモンザアーマーで防御だけでも固めた方がいいですよ? チカさんは……。」
「いいのよ、赤いし。」
「……そんなにこれ嫌なのか? まあまあかっこいいと思うんだがな~。」
「…ですよね…。」
あたしは武器屋の店主にモンザアーマーの査定を頼んだ。
トウカさんはきっとどこかの、この世界の向こう側にいる。
そしてあたしを見ていてくれている。
どんな世界かは今は思い出せないけど、この世界よりいい世界だろう。
だってあの人が、トウカさんがいる世界だから…。
(――また会えるだろうか? いつかどこかで――。)
「はい、毎度。じゃあこれね。」
あたしは赤い鎧を売ったお金を店主から受け取る。
かなりの金額。
サイフがズシリと重くなる。
「―――じゃあまず…、ごはん、食べに行こっか! アタイ奢んよ~♪」
「おう、景気がいいな! じゃ遠慮なくゴチになるか。」
「このエトスに美味いカレー屋あんのよ! そこ行こ、そこ! たしかハンドル? そんな名前だった気がする! 食べたことないけど。」
「あ、曖昧ですね……。」
「もしかしてインドルの事か?」
「ああ、それそれ。インドルインドル。何、ヒート知ってんの?」
「たしか有名なカレー店だな。オレも行った事ねーけど。しかしチカは好きだよなカレー。――まあいけどよ。」
「う、ウチ辛い物はちょっと……。じ、実は苦手ですん………。」
「辛いらしいけど本格的なカレー店らしいからミズヒがいつも飲んでるあの黒いツブツブ入った飲み物あるって聞いたわ。あの黒いツブツブ入ったヨーグルトっぽい飲み物……。何だっけ? タカユカとかタカオカとかそんな名前のヤツ。」
「た、タピオカの事ですん?」
「あーそれそれ! タピオカのドリンク類もあるんじゃないの? まああたしも人から聞いて初めて入る店なんだけど。」
「ふーん。で、誰に教えてもらったんだ?」
「―――あたしの師匠!」
『この大地は、神が作り出した遊び場で、現実ではない。』
怪しい集団か何かの界隈でそう言う説がある、らしい。
―――よくは知らないが。
この世界が正にそうなのだろうか?
この世界は誰かが作り出した虚像で、現実ではないのだろうか?
だけどあたしはここでは懸命に生きる。
懸命に魔物を倒し、懸命にお金を稼ぎ、懸命に冒険―――とはとても言えない今、自分に出来る精一杯の強がりをしよう。
だってここは多分嘘の世界。
だから無理も無茶も恐れず出来るはずだ。
でもここでは地に立てるし、火は熱く、水は潤い、光は眩しく、そして暖かかった。
喉も渇くし腹も減る。
寝なければ眠くもなるし、たくさん動けば体も疲れる。
―――だけどここは現実ではない―――。
だってあたしは覚えているから。
みんなが忘れたトウカさんの事を、そしてこの世界から出たら何かがあると言う事も。
あの人の名前は〝カトウ カオル〟。
ここの世界では『パラディンのトウカ』と呼ばれる事が多かった。
あたしは、あたし達は求め、歩く。
この世界の大地を踏みしめて。
クリア・クラウン等のためではなく本当の世界を紐解き制するために。
移ろい、界を越え、代わりの地ではない、自分達の大地を求めて。




