火の魔術師ヒートと。②【挿絵.マップ】
「着いたよ。」
「ここ?人里離れてるし、けっこうボロ屋敷ね。」
チカはカンラーにヒートの住む家に連れて来られていた。場所は街外れの集落の一角、その家は二階建てのログハウス風で小さくも無く大きくも無い、中ぐらいと言った感じの四人で住むには丁度いいと言った家だった。
だが状態は酷く手入れはされている様子はない。庭にも草が覆い茂っており人が歩く所だけが獣道のように若干掻き分けられているだけだった。
「ヒートさん、いる? 私、カンラーだけど。」
カンラーがドアをノックし、声を上げる。―――無音―――。
「ヒートさん! 居るの分かってるんだからね! 出てこないと今日はずっと居るからね!」
「またか、カンラー! オレは行く気ねーからな! クリア・クラウンなんてクソだ!帰れ、
帰れ!!」
その『ヒート』と言う人の怒号が飛ぶ。
「何? ちょっとは顔見知り?」
「うん、まあ……。何度か連れ出そうとしたんだけど……。」
「ダメじゃん。」
「ん? 今日は他に誰かいんのか?」
「あ? ああ、うん! 今日はヒートさんに会いたいって人と一緒に来たんだけど! レベル5の新人女戦士さん! もうなんて言うかボリューム満点で、でも締まってる所はしっかり締まってる系の? ちょっと派手目かな? レベル18の魔術師さんに是非ご教示賜りたいってどうしてもって……。」
「なッ! カンラーさん、そう言うことは前もって連絡しなさいよ! ちょっと待ってて! えーと……、ロッドどこやったっけ? ロッド、ロッド……。あー! 帽子とマントは!?」
カンラーはヒートの好みを把握していた。それなりに長い付き合いらしかった。
「…何? このヒートって人、大丈夫なの?」
「……まあレベル18だし……。」
「…答えになってないわよ?」
「お待たせしました! いきなりのご訪問で準備も何もしてなくて申し訳ない! オレがカンラー氏の友人、火属性のレベル18の魔術師ヒー…と………?」
ヒートが期待して開けた玄関先に居たのは、寸胴、化粧毛無し、頭は手入れしてない伸ばしっぱなしのボサボサなセミロングの児童……と言った面持ちの地味な眼鏡がいた。
「……ども。女戦士です……。」
そして中から出てきたその『ヒート』と言う魔術師は軟弱者っぽい漂々とした軟派な感じの25・6歳ぐらいの男だった。
(ダメそう。)
それがチカの素直な第一印象だった。
ヒートはチカを見てこっそりドアを閉めようとする。
しかしカンラーがそれよりも早くドアに足を挟む!
そして逆手でドアを掴み閉めれないよう支えた!
「あ! テメー! おいコラカンラー! 騙したな! ボリューム満点のちょっと派手目な女戦士はどこだよ!?」
「嘘は言って無いでしょ! あのこんぼう! 見て御覧なさい! かなりのボリュームでしょ? 満点、満点! 握り部分もしっかり締まってるし! ほら、キュッって! それにあのこんぼうのトゲトゲの派手な事、派手な事! ほら!! ヒートさん!!! 出てきなさい!!!! はい確保!!!!!」
「テメー!!!」
確保されたヒートはカンラーにふもとの草原まで渋々連れて来られていた。
「はい! と言うわけで、チカさんとヒートさん! 君らにはパーティを組んでもらいます!」
「マジかー。こんな地味ーな眼鏡とかー。」
「はいヒートさん! 文句言わないの! パーティ組むんだから仲良くするように!」
「えー、この人とー?」
「ほら、こいつもオレを嫌がってるし……。はい、解散解散!」
「もう! ワガママ言うんじゃないの! あんまりグズ言ってると君らの口座凍結するよ? このウンエイのカンラー=セウ! そのぐらいの権限はあるんですからね!」
(……横暴ね、あのガイコツ……。)
(だろ? あいつはそう言う奴なんだよ。)
「はい、二人とも! 陰口叩かないの! さて、チカさんは今どこを攻略しなきゃいけないんだっけ?」
「えーと、キワトの森?」
「んだよ、最初も最初のとこじゃねーか。」
「はい、そうだねチカさん。そこをヒートさんの協力で一緒に攻略しに行きます! 植物の敵が多いから地属性のチカさんには最初の難関だね。植物系の敵の攻撃は地属性のチカさんにはよく効くから。そこで植物の攻撃に一番強い火属性のヒートさんの出番! ヒートさんはチカさんをしっかり守ってキワトの森のボス『害粒樹』を協力して倒すように!」
「だりぃ…。」
険しい顔をし、カンラーは宝玉型の通信機を取り出した。
「……ああ、もしもし、銀行? 凍結してほしい口座があるんだけど……。」
「ああ、もう! 分かった分かった! 行きゃいいんだろ、行きゃあ!」
こうしてチカとヒートの二人はキワトの森へと向かう。チカの初の協力クエストが始まった。
チカとヒートはカンラーに見張られつつキワトの森を目指して歩いていた。
「あー、だりー……。テンション上がらねーわ。」
「もう、ヒートさん! ダラダラしないの! ルーキーが見てるんだから! 何かアドバイスの一つでもしなさいよ。」
「……そうだな、えーと、チカだっけ?」
「うん。」
チカがうなづく。
「オレのこのうだつの上がらなさ……。これがお前の未来の姿だ!」
「やめなさいって! もう! グズしないで、ヒートさん! ほらちゃんとする!」
「うぃー。」
「ねえカンラー、この人本当に大丈夫なの?」
チカが小声でカンラーに訊く。
「ま、まあここには色んな人が……、冒険者がいるし。でも悪い人はいないよ。ここに居るのは一応選ばれた人達だし……。」
カンラーは精一杯フォローしようとする。
「あ! オレちょっとションベンな!」
ヒートが急に落ち着き無く脇道の草むらに向かう。
「あ、そう。」
チカが無関心そうに言う。
「帰るんじゃないよ!」
カンラーが念を押す。
「帰んねーよ!」
ヒートは足早に草むらに消えていった。
チカは手持ち無沙汰になる。
道の脇の石の上に座る。
前から人が来るのにチカは気づいた。4人。
パーティのようだった。
チカは早速もらったステータスグラスをONにしてみる。
そのすれ違うパーティのステータスが見えた。
「45…39…44…57…。あ、クリア・クラウン付き! ねー、カンラー。あの人レベル57の人クリア・クラウン持ってる! すっげ~。」
「チカさん、そのステータスグラスは人のレベルとかを無闇に覗き見るための物じゃないよ。本来敵との交戦前に強さを見て、敵が強かったら戦闘を回避……、とかに使う物だからね。内緒で人のレベルを盗み見るための道具じゃないからね、それ。」
「はーい。」
カンラーに促されチカは眼鏡のステータス検索機能を切る。自信ありげなその高いレベルのパーティはチカ達の来た道を進んで行った。
「…ねえ、ヒートって何で冒険止めてたか知ってる?」
不意にチカがカンラーに尋ねる。
「え? さあ、そこまでは……。私が知ってる個人情報はレベルや職業の経歴とか非活動期間くらいだから……。」
「ふーん、そう。」
「……何で……?」
カンラーは警戒する。
「いや、何となく。レベル18もあれば割と何でも出来そうじゃん?」
「18じゃあそんなでもないよ。20台からやっと一人前って感じだね。あ! ヒートさん戻ってきた。」
「あースッキリした。じゃあ行くか。」
「うん。」
チカとヒート、そしてお目付け役のカンラーは目的地、キワトの森へと歩いた。




