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光のパラディントウカと。⑧【挿絵】

 ふもとの街、ルマティウまで戻ってきたチカはトウカの隣に寄り添う。

「じゃ、行きまーす。」

 チカはクライアンクレットを使う。

 ほんの一瞬でカンラーの館に着いた。


「すごいわね…。」

 トウカはウンエイのカンラーの館を観たのは初めてだった。

 むしろここに来たのも初めてだった。

 何処だろうか? 緑と赤紫色の空が異世界の様相だった。

 トウカが今まで旅をしてきた闇の魔界世界でも、地下の暗黒世界でもないフィールド。

 本来普通にここに来るのは不可能に思えた。


 

「やあチカさん、いらっしゃい。あら、珍しい、トウカさんもご一緒に。今日は何? またパーティメンバー探しに来たの?」

「ううん。今日はトウカさんにあたしがカンラーに予約無しで会えるって言っても信じてもらえなかったから来ただけ。」


 フランクにカンラーと接するチカを横目にトウカはカンラー部屋を観察する。

 ――別段何の変哲も無い貴族の事務室と言った趣――。

 怪しい物は特に見受けられなかった。


「もー、遊びで使わないでよ。私も忙しいのよ?」

 何かの工作中だったのだろうか?

 カンラーは机の上に乱雑に散らばった四角い何個かの部品と工具を引き出しに片付けながらチカに言った。

「でもパーティにもう一人加えたいからリスト用意しといて。どんな人にするかはこれからトウカさんと話し合って決めるから。」

「そうなの? じゃあ用意しとくよ。たしかこの前、新しい人達まとめたファイル作ったっけなー。……今日は忙しいから明日でいい?」

「うん、よろしくー。」

「……ねえカンラー、ここに来るのにチカちゃんが使ってた『クライアンクレット』って便利ね。私も一つ欲しいわ。いくらぐらいするのかしら?」

 トウカは強請る。

「ああそれ……。申し訳ない! チカさんので最後の一個だったの。昔作った物で古かったし在庫処分にも困ってたし……。」

「そう、残念だわ。」

「んだよー、あたしは廃品処理業者かよー。」

「はは……。まあ役に立ってるみたいだしいいじゃないの。でもそれ、もう作れないから大事にしてね。壊したり、盗られたりされないように。」

「はーい。じゃ、今日は帰ろっか、トウカさん。」

「そうね。それじゃあ失礼するわ。お邪魔したわね。」

 チカはトウカを連れて帰る。

「ね? 本当だったえでしょ?」

「本当、チカちゃんはすごいわね。」

「へへへ…。」


 和やかに振舞うトウカ。

 チカは初めてトウカの役に立てたと嬉しかった。


 ―――しかしトウカの頭の中ではカンラーの寝首を掻く事しか考えていなかった―――。



「いらっしゃい。チカさんにトウカさん。リスト出来てるよ。」

 翌日館に訪れたチカとトウカを迎え、カンラーは言う。

「カンラー、いつもチカちゃん達が勝手にお邪魔してるみたいだから、これ。」

 トウカは今朝、首都エトスで買って来たケーキをカンラーに差し出した。

「あー、どうもどうも。気を使わなくて良いのに。……ってずいぶん多いね!?」

「ここで働いてる兵士さん達にも、ってトウカさんと買って来たの! いくつ買ってくれば分からなかったから適当に20個だけど。あ、このイチゴのはあたしのね!」

 チカは自分が食べたかった物を主張する。


挿絵(By みてみん)


「はいはい、まー座って座って。おーい、だれかお茶入れてー。……紅茶でいい?」

 カンラーは召使いの赤いメイド服の侍女に命ずる。

「あら? お手伝いさんもいたの? ここにはウンエイの兵だけかと思ったわ。」

 トウカがチラリと紅茶を用意するメイドを横目で追う。

「ブルジョアじゃん?」

「ブルジョアって……、このぐらい普通よ、チカさん。」

「それがブルジョアだってのよ~。」

 チカが早速ケーキに齧り付きながら言う。

「ああもう、チカさん女の子なんだから手づかみは止めなさいって! ちょっと、フォークとお皿も持ってきて。三つねー!」

「――ちなみにここのお屋敷、何人ぐらいメイドを雇ってるのかしら? 私の所は庭師も合わせて8人ってとこだけど。ここは大きさとウンエイのお屋敷だけあってメイドは10人以上……って感じかしら?」

「ははは、そんなには居ないって。兵は当番で自分達の事は自分達でするし、力仕事も兵にやらせるからメイドは3人ってとこかな。」

「本当? 謙遜してるんじゃないの?」

 トウカは探る。

「いや本当本当。それにこの屋敷、大きさはそこそこだけど、半分兵士の寮みたいな所があるし。相対的にはトウカさんの首都のエトスに在るお屋敷の方が大きいんじゃないかな?それに私、この部屋からほとんど出ないし。メイド3人でも多いぐらいだよ。」

「ブルジョアかよー、引き篭もりなのに。」

「もう! 仕事はしてるって、私。チカさんとは違うって。この部屋が仕事場なの!」

「寮になってるって大丈夫なの? うるさくない? それで仕事出来るの?」

 トウカは部屋を見回す。

「あー、大丈夫大丈夫。みんなキチンとしてるし。それに防音もいいしね、この建物。」

「……そう言えば二階より上って行った事無かったわ。どうなってんの?」

 チカがメイドから紅茶を受け取りながら言う。

「ああ、二階三階が兵士の寮で個室って感じかな。上は普通のアパートみたいなもんだよ。」

「……もしかしてカンラーのスペースって狭いの?この部屋だけ?」

 チカは改めて部屋を見回した。16畳ぐらいだろうか? 

「うん、まあこの部屋と奥の寝室ぐらいかな? 私のスペースは。」

「何? カンラーもしかしてウンエイの中で追いやられてるの? 庶務ってるの? 左遷で窓際の斜陽族?」

「違うって! 失礼ねチカさん! 狭いって言っても個室と事務所与えられてるし、それに仕事もちゃんとやってるって! 私、これでも一応この大陸のウンエイでトップなのよ?」

「え? マジで? トップ? 下っ端か中間管理職と思ってた……。」

「……まあ自分で動く事が多いし、狭い部屋の方が落ち着くし、そう見られるのはしょうがないんだろうけど……。」

「事務所件自宅って感じかしら、このお部屋。何かあった時はすぐ兵と一緒に出て行けるし便利でいいんじゃないかしら?」

「うん、まあそんな感じでけっこう便利かな。」

「……所で兵士ってここには何人ぐらいいるのかしら? 寮になってるならケーキ20個じゃ足りないかしらね……。今度来る時の差し入れの量の参考までに教えてくれない?」

「そんな気を使わなくていいって、トウカさん。」

「――そうは言ってもカンラーにはチカちゃんがお世話になってるし、これからもお世話になるだろうし、――今日持ってきたケーキ20個で足りるかしら?」

「……まあここに居る兵は今は25~6人ぐらいかな。交代や出張とかで居なくなっちゃったりするけど、まあいつも20人は居るかな。」

「あら、じゃあ20個じゃ少し足りないわね。今度来る時は30個は買って来なくちゃ。」

「いいって、いいって。そこまで気を使ってもらわなくっても。それに冒険停滞者連れ出してくれるだけでこっちは大助かりって言うか……。」

「――まあ今回は差し入れの数が足りなくて悪いんだけど、ケンカにならないように皆さんで分けて頂戴。」

「うん、ありがたく頂戴するよトウカさん。後で皆にも……。で、早速だけどこれ、頼まれてたリストね。」

「ありがとう。早速拝見させてもらうわ。」

 トウカはリストを受け取り見る。

「あ、この人なんかいいかも! レベル40だし……、」

 チカが乗り出す。

「……ダメね、もっとレベルが低い子がいいわ。20未満の……。出来れば10あたりが理想なんだけど。―――連続した連携の練習でチカちゃんと近いレベルの子が必要なのよ。ごめんなさいカンラー、前もって伝えておくのを忘れていたわ。」

 リストをめくり終えながらトウカは言った。

「ああ、そう言う事ね。でもレベル20未満の子は難しいかなー。どうしても停滞しちゃってウンエイのリストに入っちゃうのって、レベルが上がりにくくなる20以降の人になっちゃうから……。」

「――仕方ないわ、それじゃあ明日また来るわ。」

 トウカはソファから立ち上がる。

「あ! すぐ用意出来るけど。」

「ありがとう、でも今日はちょっとギルドもチェックしたいのよ。レベルが10ぐらいの子と、20ぐらいの子がいればチカちゃんとバランスが取れそうだし。」

「そう? それじゃあ私もレベル低めの子、見繕っとくよ。」

「お願いするわ。そうそう、明日はチカちゃんだけでここに来て、リスト受け取りに来てくれるかしら? 私は明日別の用事があるから、明日はチカちゃん一人で行動してね。いい?」

「うん、分かった。」

 何も疑わずうなづくチカ。

「カンラー、明日はチカちゃんだけでここに来させるから色々とお願い出来るかしら?」

「ああ、もちろん任せて。」

「それじゃあ、お邪魔さま。今日はもう帰るわね。」

「じゃーねー、カンラー。」

 チカはケーキを頬張りながらカンラーに手を振りトウカと帰っていった。



 カンラーはホッと一息つく。息苦しさから開放される。

 カンラーはトウカの事をそこまで好きでは無かったから。


 ―――どちらかと言えば苦手な部類―――。


 差し入れされたケーキをカンラーは食べる。

「あ、このケーキおいしい。そう言えばケーキなんて久しぶりかなー。……でも私しか食べれないんだよねー。ここじゃあ食べ物なんて……。まあバーチャルだし、処分は簡単だからいいけど。」

 そう言うとカンラーは自分が好みのマロンケーキ以外は消してしまった。

「さて、レベル低めの停滞者、停滞者っと……。やっぱ職業別じゃなくてレベル別にファイル作り直そうかしら?」

 カンラーはマロンケーキを紅茶で流し込みながら鼻歌まじりにファイルを開いた。

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