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光のパラディントウカと。⑦【挿絵】

 半分になった右腕をやさしく撫でてくれる人がいる。

 それが誰かかはチカには分からなかったが――。


 それからたくさんの人を送った。もう何人目だろう?

 暗く冷たい星の海に亡骸が舞う。

 チカは薄暗く、灰色の廊下をふわふわと泳ぐ。

 無数の箱のある部屋がある。みんなは、その箱へと入る。

 箱の中で眠る人達。

 いずれチカもその箱に入る。

 でもまだチカはその箱には入れない。

 この右手が、まだ傷が塞がっていないから……。


 そして、いくつ待っただろうか。

 チカもその箱に入れる日が来た。

 すると目の前に広がる青い空と、緑の大地の見慣れた景色。

 そして活気あふれた人々――。


(ここは、ここだ…。)



 その朝、チカはゆっくりと目が覚めた。



 ステータスグラスを手放してからチカはよく夢を見るようになっていた。

 寝ている時の夢だけではない、白昼夢もだ。

 チカはたまに訳の分からない絵空事か現実か分からない感覚に陥る。

 ここが現実ではない感覚……。

 その時は決まって右手が痛んだ。

 見る夢ほとんどが右腕が無くなる夢。大体それで目が覚める。

 寝起きは悪い。

 しかし今朝はなめらかに、ゆっくりと目覚められた。

 半分になった右手をやさしく撫でてくれる人――。

 その人が出て来る時はだ。



 ルマティウの町からホーロー山に着くまで、チカは夜見た夢の話をトウカにする。

 それが二人の日課になっていた。

 トウカはチカの夢の話をよく聞き、そして信じてくれた。

 チカが「毎日同じ夢ばかりを見る。」と、トウカに何気に言った一言、それがきっかけ。

 「話してごらん。」とトウカは言った。

 チカが最近よくうなされる事もトウカの気がかりだと言うのもあったからだが。


 夢は願望や希望、過去の経験、体験した事が蘇る現象。

 だから例え妄想でも頭の中に無い事は夢には見ない。

 しかしもしかしたら?

 こことは違う世界の事を、チカが夢を通して思い出してるのだとしたら…?

 トウカはそう考える。

 だからチカに、「覚えている夢は出来る限り話して。」と言った。

 だからチカも出来る限り覚えて、話す。

 だが強烈な願望や空想はリフレインする。

 それが頭の中で何回も繰り返され、それが本当の事と錯覚してしまう……。その可能性だってあるのだ。


 ―――所詮は夢―――。


 だがトウカには引っかる事があった。

 チカが言う『半分になった右手を撫でていた。』と言う所がだ。

 デジャブ。

 トウカにはその事が絵空事とは思えないぐらいに、自分がしていたような気がした。

 もしかしたら単なる思い込みなのかもしれない。

 ――しかし――、


(今はチカちゃんとの修行に集中しなければ…。)


 到着したホーロー山の遺跡のさらに奥で、トウカは気持ちを切り替える。

 ここでの敵はトウカが油断してしまえば、チカはあっけなく沈む相手だからだ。


 今戦っている相手は、このホーロー山最強ランクの空飛ぶ小型のドラゴン『ドラレー』。

 チカは数日前からこれを相手に戦っている。

 討伐推奨レベルは20。

 小型のドラゴンとは言え魔物のサイズから言えば中型クラス。

 その身体はチカやトウカの背丈よりはもちろん、普通の馬車よりも大きかった。


「行くわよ、チカちゃん。」

「はい!」


 トウカはチカの頭上に重力を発生、それを利用し、チカはドラレーに向かって飛ぶ!

 チカはトウカの正確で的確な重力魔法のトスもあって宙での二段ジャンプまでなら出来るようになっていた。

 つまり空の相手に対し、一回ならフェイントがかけられる。

 しかしドラレーも大人しくただ攻撃を待っているだけではない。

 ドラレーの攻撃!

 四本の足の鋭い爪を煌かせチカに襲い来る!

 今までのホーロー山の遺跡でのチカの相手、プラテスやグライディラーなどとは全く次元が違う魔物。

 今のチカではトウカが一緒でなければ確実に沈められているであろう強さだ。


「おぅわっ…!」


挿絵(By みてみん)


 チカは空中でバランスを崩す!

 そこへ切り返したドラレーの狙い済ました尾の鋭い切断刃がチカに迫る!

 すれ違い様に相手を切り刻む、この魔物の必勝戦法だ。

 だがドラレーの切断刃がチカを捉えるよりも早くトウカが飛び、光魔のハンマーのスタン技でドラレーの動きを止める。

 光魔のハンマーは高性能で、光属性のバリアや、スタン衝撃波を繰り出せる能力も備わっていた。


「トウカさん、ナイス!」



 ―――トウカさんがいる、絶対に助けてくれる―――。



 チカはそう分かってはいても嫌な汗が腋から垂れるのを感じた。

 動きの止まったドラレーをチカはハンマーで地上に叩き落とす!

 そして着地したチカにタイミングを合わせトウカは、ドラレーに向かい重力魔法を唱えた。

 5G程の重力が掛かる。

 大きな身体だ。それに空を舞う魔物の骨はそれ程強くはない。

 それでドラレーは動けなくなった。

 チカはトウカに新しく買い与えられたスチールハンマーを振るう。

「いっただき!」

 チカはドラレーに向かって重力魔法を唱える。一直線!

 地上に落とし、動きが止まれば空の敵だろうと関係なはかった。

 地上の相手と対処は同じ。

 チカの重力魔法+スチールハンマーの一撃!

 チカはドラレーを何とか叩き伏せた。

 ドラレーを倒した。



 トウカとの連携の練習も兼ねたレベル上げで、チカのレベルは13になっていた。

 武器のハンマーだけではない。防具も一新され、ブロンズからスチール一式になっていた。

 鳥の最弱ランクの魔物グライディラーを相手に四苦八苦していた二週間前のチカの面影はもう無い。

 当面の目標レベル、15到達は目前だった。

 だが5G、6Gの重力を簡単に連続で生み出せるトウカと違い戦士であるチカが今、発生する事が出来る魔法の重力はせいぜい0.7~8Gがやっと。

 範囲も1メートル四方と言った所でそれも単発で数秒が限界だ。

 チカの重力魔法単体では精々空中の敵のバランスを崩させる事や、ハンマーの威力を増せる程度だ。

 足止め程度にしか使えず、重力魔法単体での攻撃力はまだ無かった。

 それに今のチカでは連続での乱用はまだ出来ない。

 戦士故の魔力のスタミナが足りない事もある。

 それにまだチカ一人の力ではトウカのような柔軟で、トリッキーな重力飛びはまだ出来なかった。


「トウカさん、ありがとう! 助かったわ。」

 ドラレーを倒したチカが嬉しそうに言う。

 しかしトウカは晴れなかった。


 レベル上げと並行しての連携の訓練はトウカが2、3人分動いてるとは言え、流れるような連携は出来ずにいた。

 チカを飛ばして、守っての精々3~4回までの単調な連携―――。


「……ダメね。やっぱり二人じゃ限界がある。単調になるし、連携の練習をするならせめてもう一人は仲間がほしいわ。」

「そうかな? そうかも…。」


 だがそれはトウカの建前だった。

 一週間行った連携の練習の中でトウカは、チカが過剰に自分を信頼するあまり緊張感に欠け、動きが雑になっている事を見抜いていた。

 信頼される事は良い。

 しかしトウカのレベル86と言う圧倒的力量差が、逆にチカにとって枷になっていると感じた。

 ――信頼されてる事と甘えられる事は違う――。


(あまり私と居すぎてもダメになる。やっぱりチカちゃんには、同程度の仲間が必要だわ。)


「……じゃあトウカさん、もう一人メンバースカウトしに行く?」

 沈黙し、何かを考えているトウカにチカは声をかける。

「―――そうね、ギルドに……。」

「カンラーん家に行けばいい人紹介してくれるかも。トウカさん紹介してくれたのもカンラーだったし。」

「そう言えばそうだったわね。でもどうやって? 行くって言ってもカンラーにこっちから会うにはウンエイに色々申請して、アポ取って……。そもそもカンラーの家や連絡先なんて誰も、私も知らないわ。神出鬼没だし。」

「そうなの? この足首の、クライアンクレットでカンラーん家まで一発よ? 街中でしか使えないからダンジョンや外とかじゃ使えないから一回街まで戻らなきゃだけど。」

「そうなの?」

「うん、そう。」


 驚くトウカにチカは少し誇らしげになる。

 初めてトウカの知らない事を知っていたからだ。

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