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光のパラディントウカと。①【挿絵】

「ふい~…。やっぱしんどいわ……。」

「う、ウチら弱いですもんね……。か、固さとか、しゅ、守備面が………。」


 レベル上げの最中、ヒートとミズヒはパーティの防御力不足を痛感していた。つまり壁役になるべきチカが脆すぎるのだ。

 パーティの構成は、前衛二人、後衛二人が基本だ。前衛の壁兼アタッカーが二人、後衛の魔法でのアタッカー兼サポーターが一人、そしてヒーラーが一人、と言うのが理想的だ。

 いや、前衛アタッカーが強力なら前衛は一人だけでも問題は無いだろう。

 だがチカのレベルが問題だった。ヒートのレベルが18、ミズヒのレベルが23に対し、チカは今だレベル7と低すぎだった。

 レベルだけではない、防具も今だレザー主体と貧弱だ。

 さらに何故か何も装備出来ないチカの右腕も足を引っぱった。武器を持っていると盾を装備出来ない事もチカの脆さに拍車を掛けていたのだ。

 三人でパーティを組んでからは出来るだけいい防具をチカに回したり、パーティ内で一番固いミズヒが壁役になったりとして来た。

 ―――しかし―――、


「……限界だな。行くか、アイツんとこ。」

「そ、そうですね……。や、やっぱり、も、もう一人欲しいですん………。」

 ヒートとミズヒは半分伸びたチカを引きずり、カンラーの館へと向かった。


挿絵(By みてみん)


「つーわけだカンラー。出来るだけレベルの高い、そうだな…、上位職のパラディンかホーリーナイトあたり見繕えねえか?」

「スナック感覚で言わないでよ、ヒートさん! 前にも言ったでしょ! 仲間がほしいならまずはギルド行きなさいよ、ギルド!」

 何やら工具を出し、集中して作業をしている所を邪魔されたカンラーは悪態を付く。

「う、ウチらなんて、あ、相手してくれる人が、い、居るわけないじゃないですか……! わ、分かってるんですよ……? う、ウチらが、ぎ、ギルドなんて行っても、わ、笑い者になるだけだって…………。」

「自意識過剰だよもー! それにギルドで他の人と色々交渉する事も大事よ? 誰も相手なんてするわけないって決め付けないで自分達の力で……。」

 そうは言いつつもカンラーはリストを出しパラパラとめくった。

「それにレベルが高いパラディンとか、ホーリーナイトとか、そんな都合のいい人が……。やっぱ大事よ? 身の丈って。」

「まどろっこしい! リスト貸せ!」

「あ、もう! それ個人情報だから!」

 ヒートはカンラーから取り上げたリスト帳をペラペラとめくる。

「うお! な、何だコイツ!? すげぇ……。」

「どしたのヒーさん?」

 チカが背伸びをしリストを覗き込む。

「見ろ! チカ! ミズヒ! クリア・クラウン付きだ!」

「え? ほ、本当ですん!?」

「えー、見せて見せて! 『職業:パラディン レベル:86 属性:光 備考:クリア・クラウン取得』……。」

 チカは目を輝かせた。

「嘘だろこんな……。超上位職でクリア・クラウン付き、しかも属性もレアの光の属性じゃねぇか……。」

「こ、こんな人、い、いる所には、い、居るんですね………。」

「名前……、〝トウカ〟………。カンラー! この人! あたしら、この人パーティに入れる、入れます!」

 チカは誰よりも乗り出す。

「〝入れます!〟って気軽に言うけどね、チカさん? このトウカさんね、この人は……、無理だと思うよ?」

「何で?」

「ちょっと変わった人でねー……。」

 チカの疑問にカンラーは答えを濁す。

「あーたしかに。そりゃそうだよなー。クリア・クラウン付きでこのリスト入りなら地雷に決まってんよなー。」

「そ、そうですね……。ぼ、暴君だったり、は、犯罪者みたいな、ひ、人かもしれないですし…………。」

 カンラーの態度からそのトウカの人物像を察するヒートとミズヒ。浮かれた気持ちが一気に現実に引き戻される。

「行こ! この人んち!」

 しかし乗り気で無い二人に対しチカは張り切り、その場を仕切り出す。

「マジかよ? チカ、チャレンジャーだな。」

「ち、チカさん、う、ウチは嫌ですよ? こ、怖い人だったら……? や、やっぱり身分相応な…………、」

「ん~…、何か大丈夫な気がする。あたし、この人嫌いじゃないかも! カンラー、おねがい!」

 チカはリストを手に不思議な親近感と安心感を感じていた。

「そう? そこまで言うなら……。まあいずれは何とかしようとは思ってた人ではあるけどねー。連れ出してくれたらありがたいって言ったら、ありがたいんだけど……。」

 カンラーに連れられチカ達はその〝トウカ〟の家へと向かう事にした。



 ―――首都城『エトスポリス』―――。


 その山の手の閑静な場所にある大きな白い豪邸、流石はクリア・クラウン持ちの家と言った所だ。

 長めのショートカットに整った顔、年齢は16~7歳と言った所か? 年齢で何処となくあどけなく感じる、けれど隙はない、自分に絶対の自信があるのだろう。落ち着いた近寄りがたい雰囲気。それがこの家の家主、パラディンのトウカだった。


 チカは玄関先でいきなり、自分達のパーティのメンバーになってほしい旨をトウカに告げた。


「いいけど。別に。」


 そのトウカはあっさりしていた。カンラーの紹介もあってか、突然の訪問にも関わらずチカ達を屋敷に招き入れた。


「カンラーは帰っていいわ。後は私達で話をするから。」

「そう? じゃあトウカさん、後はよろしく。チカさん達、失礼の無いようにね。」

 トウカはカンラーを追い返す感じで帰すと、三人を居間に通した。

 居間と呼ぶにはあまりにも広いその部屋で、メイドがチカ達に茶を淹れる。チカ達が入れもしない高級店の菓子を添えて。


「ど、どうも。魔術師ヒートっス。」

「は、始めまして………。そ、僧侶の、み、ミズヒと言いますん………。」

「あたしはチカ、戦士! よろしくお願いします!」

 ソファーに座り、緊張するヒートとミズヒに対し、チカは不思議とリラックスしていた。

「ああ、私はトウカ。パラディンのトウカよ。見ての通りクリア・クラウン持ちの。」

 トウカもソファーに腰をかけ、足を組む。そして3人を見渡した。

「……それで、どうしてあなた達は私を仲間にしたいのかしら? 失礼だけど見た所レベルは平均20も無いようだし、逆に私があなた達の足枷になるんじゃないかしら? それに正直、あなた達の仲間になって私にメリットは?」

「え? そっちにメリットなんてとてもとても……。クリア・クラウン持ってる人が会ってくれるだけで、そりゃあもうありがたいって言うか……。このチカが身分不相応にアンタに、トウカさんに会いたいって言って聞かなくて……。もうなんて言うかこっちも困っちゃってて……。」

 ヒートはぎこちない受け答えでチカを盾にし、トウカとの会話の中心へと押しやった。ミズヒも居心地は悪い。当然だった。差がありすぎる者の前で萎縮してしまうのは。

 そんな中、チカ一人だけが目を輝かせていた。

「メリットなくて足枷ですが、よろしくお願いします! 仲間になって下さい!」

 チカはペコリと頭を下げた。そんなチカにトウカは目を配らせた。憧れを持ち、真っ直ぐにトウカを見つめる目――。


 ―――不意に既視感(デジャブ)がトウカを襲う―――。


「………。チカさんだったかしら。あなたどこかで会った事なかったかしら?」

「いえ、初めましてです!」

 チカは元気よく答える。

「そう、ごめんなさいね。私、人の顔を覚えるのが苦手なの。それにここ、何だかんだで人の出入りが多いから……。で、そちらの方々は何故私を?」

 トウカはヒートとミズヒにも理由を訊ねる。

「ええ、そりゃあもう尊敬出来るって言うか、クリア・クラウン所有者だからって言うか……。」

 ヒートはしどろもどろになり取り繕うとする。

「……クリア・クラウンなんて無意味よ。あっても上っ面の優越感だけ。いえ、余計この世界に飲み込まれるだけ。」

「はあ……、オレなんてまだ持ってないもんでそこら辺の境地はよくは……。」

 ヒートとミズヒはもう帰りたかった。

「ところであなた達、この世界どう思う?」

「は? どうって…? どう言うことッスか?」

 ヒートは急な、突拍子も無い質問に引く。

「こ、ここら辺は、し、首都エトスの一等地で、こ、ここも、と、とても良い、お、お屋敷だと思いますけど………?」

 ミズヒも返答に困る。

「そう、まあいいわ……。私も腕が鈍ってるし、ダンジョン1つ分ぐらいなら付き合ってあげても。」

「はあ、どうも……。ありがたい事で……。」



 ―――『この世界をどう思う』か―――。



 トウカの問いにチカはしばし考えていた。そして顔を上げ言う。


「あの、ここが現実味がないとか、他の何処かに、本当の世界があった気がするとか、そんな話ですか?」

「やめろチカ、お前のその話は色々こじれっから!」

 ヒートはチカのその話を止めようとする。当然だ。チカとパーティを組んだばかりの頃、そのおかしな与太話を何度も聞かされていたからだ。

「! いいのよ、続けて。」

 チカを止めようとするヒートをトウカは制す。

「そのお話、もっと聞きたいわ。」

 トウカの目の色が変わる。

「チカさん、現実味が無いってどんな?」

「何か忘れてる気がするんです。」

「何かって?」

「えー……、それがよく思い出せないんです。本当の、ここじゃない所が本当の場所って言うか………。何だっけ?」

 チカは上手く説明出来ずヒートの方を見た。

「オレに振るなよ……。」

「―――ここが嘘の世界、って事かしら?」

 トウカはチカのおぼつか無い言葉を汲み取り、自分なりに解釈する。

「ああ、ハイ。それ、そんな感じ。ふわふわして宙に浮かんでたけど、それで何か『ドカーン!』ってなった感じの………、何だっけ?」

「だからオレに振んなって、分かんねーよ!」

「……そう……。それでチカさんはこの世界からどうしたいって思っているのかしら?」

「え? いずれは出なきゃいけないとは思ってるんですけど……。まあそんな気がしてるだけですけど……。」



 ―――何かを、何かを忘れている。この前まで覚えていた何かを―――。

 チカは無意識に左手で右の上腕を擦る。



「そう、面白い子ね。いいわ! 私、あなた達のパーティに入らせてもらうわ。よろしくね。」

「え? ほんと? やったー! ほらね、ヒート! 大丈夫だって言った通りだったでしょ?」

「……マジかよ……。」

「え、ええ……。ほ、本当に……、ですん……?」

 チカ達に、トウカが仲間に加わった。


挿絵(By みてみん)


 しかしこのパラディンのトウカには密かな野心があった。



 『ウンエイの正体の暴露』と『この世界からの脱出』と言う野心が。

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