プロローグ【挿絵】
『この宇宙は、コンピューターが作り出した世界で、現実ではない。』
オカルトか何かの界隈でそう言う説がある、らしい。
―――よくは知らないが。
この世界が正にそう。
この世界はコンピューターが作り出した虚像で、現実ではない。
だからあたしはここでは気楽に生きる。
適当に魔物を倒して、適当にお金を稼ぎ、適当に冒険、―――とはとても言えない散歩程度の遠出をする。
だってここは作り物の嘘の世界。
だから無理も無茶も楽しく出来るはずだ。
でもここでは地に立てるし、火は熱く、水は潤い、光は眩しく、そして暖かかった。
喉も渇くし腹も減る。
寝なければ眠くもなるし、たくさん動けば体も疲れる。
―――だけどここは現実ではない―――。
だってあたしは、覚えているから。
みんなの事も、そしてこのみんなと向かう先に、新しい大地があると言う事も。
あたしの名前は〝代置 千佳瑠〟。
何かに登録したりする時は『チカ』と付ける事が多い。
ここでの私の名前は〝チカ〟。職業は戦士、属性は地、現在のレベルは5。
右手や、半身を事故で怪我したあたしは、ケガが完治した後、リハビリも含めこのバーチャルゲームを始めた。
先に始めていた友達や、仲間には遅れてしまったけれど。
この世界を紐解き制した証、誰もが憧れる称号、それが『クリア・クラウン』。
これを持つ者は、将来を約束される。特権階級になれるのだ。
―――もっともこのバーチャル世界の中だけの話だが。
でも皆がやっきになって求める物、それが『クリア・クラウン』。
普通にやると10年はかかると言われている。
このやる事が無い、眠る事が一番なこんな場所では時間つぶしには丁度いいが……。
ここでは無くなったはずのあたしの右手も、在るかのごとく自由に動く。
便利だが便利すぎて不便だ。
「……早く左手に慣れなきゃ……。」
あたしは設定で右手の使用を制限した。
〔利き腕を左に設定、右腕の使用を制限。盾や武器を右手に装備できませんが、よろしいですか?〕
あたしは迷わず〝はい〟を選んだ。
どうせリハビリも兼ねた遊びの場だ。
職業は前衛で動きまくらなければならない戦士を選んだ。
武器も使いづらいとされているハンマーを選択。
「まあ、一回目は試しだしこれでいっか。」
あたしは全てを設定し終えるとこの世界へと入った。
今のあたしは12・3歳ぐらいの姿。
もちろん姿だけで記憶や知識までは戻らない。
ここでは一番楽しかった時の姿へと自動的になるらしい。
見渡すとやはりみんな二十歳前後が多かった。
あたし一人、小中学生な外見が少し気恥ずかしい。
この世界に入って半年程経っただろうか?
左手の使い方にもだいぶ慣れてきた。
うっかりしているとまだ右手が出てしまうけれど。
ここは冷凍睡眠と併用のバーチャルゲーム。ただ眠ってるよりは有意義だ。
あたしはまず最初に仲間を、知り合いを捜した。
けれど友達や顔見知りにはまだ会えてはいない。
あたしより一年以上前に入ったのだ。
高いレベルになっていて、かなり先まで進んでいるのだろう。
あるいは別の大陸に配置されたか?
―――まあこうしててもしょうがない。
いずれひょこり会える日も来るだろう。
あたしは今日もいつも通りの行動をしていた。
適当に魔物を狩ってのんびりそこら辺を歩く。
そんな毎日を。
しかし〝それ〟は、あたしの前に突然現れた。




