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第四章 審問

「お二人はこちらで少々お待ちください、すぐ食べ物を持ってまいります。」


アミレナは二人を1階の裏側にある小部屋まで案内した。小部屋の壁は木で出来ていて、飾るものはない。真ん中にテーブル一台と椅子四脚、キャンドルの光で暗い影を地面に落とす。


椅子に腰を沈めて、二人は「は…」と息をついた。

「没想到真的穿越到异世界,而且还是可以使用魔法的

(まさか、本当に異世界に、しかも、魔法が使えそうな異世界に来るなんて)。」

エキはテーブルに顔を伏せて、指でキャンドルを載せている小さい鉄柱の縁をいじりながら言う。


「我还是想去仙侠世界。你还没什么问题,我在这儿语言不通麻烦死了

(僕は仙侠の世界に行きたいけどな。お前はまだ大丈夫だけど、ここじゃ俺は言葉が通じなくて本当に面倒だ)。」

「你应该听得懂一些吧,这样也没啥问题了。多听多说,你也能行的

(お前、ある程度聞き取れるだろう。それだけで大丈夫だ。もっと聞いて話せば、お前もできるようになる)。」

「你半年前就告诉我了

(それはもう半年前に教えてもらった)。」

「唔,总之,要努力,ok?

(ぐぅ…とりあえず、努力だ、オッケー)?」


背もたれに寄りかかって、ユーは元気のない声で言う。

「以后该怎么办,你想过吗?如果真的是强者遍地走的世界,我们两个loser最多只能去扫个厕所

(これからどうするか、考えたことある?本当に強者だらけの世界なら、ルーザー二人で、せいぜいトイレの掃除しかできねーぜ)。」


「什么叫做loser啊

(ルーザーってなんだよ)。」

「你会使剑吗?

(お前、剣使える)?」

「不会(使えない)。」

「魔法呢?(魔法は)?」

「现在不行,只是现在,呐

(今では使えない。今では、な)。」

エキは手をユーの肩に乗せて言う。

「没问题的,我们不是穿越者吗?肯定有外挂的

(大丈夫だって。俺たちは転移者だろう?ならばチートがあるはずさ)。」

「所以呢,挂呢(で、そのチートは)?」

「比如(例えば)。」


体を起こし、エキは掌を壁に向ける。


「言出法随之类的(言霊とか)。壁よ!破れ!」

まるで、阿呆を見ているような目をしているユー。

「好像,可能弄错对象了

(ちょっと、ターゲットを間違えたこもしれん)。」


エキは頭を掻いて、またテーブルに向けて言い出す。

「燃え尽きろ!テーブルよ!」

然后呢。」


「呀,挂是绝对有的

(いや、きっとあるさ、チート)…」

エキは諦める気がなく、続いて試す。

「也有可能是念动力呢,用这个蜡烛试试看

(念動力もあるかもしれんな、このキャンドルで試してみよう)。」


掌をキャンドルに向いて、それを動かそうとするエキ。

「うん!ぐぅ!はぁ!うぉぉぉ!」


「你在大便吗?说起来,厕所在哪儿啊

(うんこしているか?そういえば、トイレはどこ)?」

「别搞事!(邪魔すんな)!」


「はー」と一息ついて、やっと諦めたエキ。

「所以说,loser不管在哪个世界都是loser

(だから、ルーザーはどの世界でもルーザーのままだよ)。」

「别这样想啊,你不是一直说感觉感觉什么的吗。我可不信仅凭感觉就能从那个森林里脱身。说不定,你的方向感就是你的挂呢

(そう思うなって、お前、いつも感、感って言うんだけど、あの森を感だけで脱出できるとは思わないぜ。もしかしたら、それはお前のチートだよ)。」

「那我的挂也太弱了

(弱いな、俺のチート)…」

「完全不弱好吗

(全然弱くないだろう)!」

エキはどうしようもなくユーを見詰めて言う。

「总之,先想办法度过今日,再满怀希望迎接明天。

(とりあえず、今日をなんとか過ごして、希望を持って明日を迎えよう)。」

「好,ok(へい、へい)。」


「お二人さん。」

ドアが開けられて、皿を二つ持っているアミレナが入ってきた。

「申し訳ないですが、お金を払っていただかないとこんな食事しか用意できなくて。」

テーブルに、皿を並べて、二人を見て言うアミレナ。


「いや、結構いい食事です。ありがとう…ございます。」

エキは皿に乗せられている黒パンと可哀想なほど少ないスープを見て、頬の肉がすこし痙攣した。

「では、ごゆっくりどうぞ、何があれば私に聞いてください。いつもフロントのほうにいるので。」

「はい…お構いなく。」


ドアを閉めて出て行ったアミレナの足音もやがて消えた。ユーは、黒パンを持ち上げて、口元に運ぶ。

「满怀希望迎接明天哦

(希望を持って明日を迎えよう)。」

その言葉は、すでに皮肉にしか聞こえない。

「我…好想吃肉

(俺、肉食べてーな)。」


しばらく無言のまま、食事をする二人。黒パンは固くて、二人はそれを破って、スープに浸してから食べる。それでも、その食感は煮込んだ革製のベルトに近い。


「この中の二人ですか?」

外で、逞しい声が響いた。

エキは一瞬ぼけっとして、すこし残っているパンも指から滑り落ちる。


「该不会,是卫兵吧

(もしかして、衛兵)?」

ユーの目を見詰めて言うエキ。

「什么情况?卫兵,来这里了

(何があった?衛兵?ここにきたか)?」

ユーも食事を止めた。

「好像是,该不会,是那个叫阿米蕾娜的小姐姐叫过来的吧

(そのようだ。まさか、あのアミレナっていうねえさんが呼んできたわけじゃ)…」

「有可能是她。不过,我们也没干什么坏事,应该没问题吧

(多分、彼女が呼んできたと思う。まあ、僕たち悪事はやっていないし、大丈夫だろう)。」

「没问题才怪好吗,你有点紧张感啊

(大丈夫なわけないだろう、すこし緊張感持てよ)!」

エキは額に掌を当てる。


ぎぃーと、ドアが開けられた。そこにいたのは、衛兵模様の一人の男と、大きい紫色の魔女帽子を被った、男の目を奪うほどスタイルのいい女性。そして、白いドレスのアミレナ。


「申し訳ないですが、お二人にすこし、協力していただきたいことがあります。よろしければ、入らせていただけますか?」

「いや、別に、もともとこっちがお部屋を貸していただいているんですから、どうぞ。」

エキは不自然に笑いながら言う。


「緊張しなくてもよい。」

三人が座ってから、男が言い出す。


「俺はジョアン、アミレナ嬢に話を聞いて、ちょっと二人に聞きたいことがある。どうかご協力願おう。」

「はい。」

心細くなって、声が小さくなるエキ。そして、また茫然状態に入るユー。


「坊や。怖くないで、リラックスして。」

女性は片手の掌を差し出し、そこに一瞬、白い炎が燃えだした。

これはリラックスなんてできる訳ないじゃないか!!と思いつつ、エキはすぐ憧れの魔法だと認識し、冷静になってきた。


「私はディアン・セレスバードと申します。この炎は、人間が嘘をついているかどうかを判断してくれる炎です。まあ、二人は無事に町の門を通ったから、多分怪しい人じゃないと思いますが、一応、ね。」


ディアンの瞳はまるで紫の宝石、雪のように白い体を纏う服は、女性の魅力と神秘感を醸し出す。


町の門を無事に通ったと言った?つまりあの時の感じが...といろいろ考えるエキだが、すぐジョアンの質問に遮られた。


「では、二人の名前は?」

「エキです、こっちはユーです。」

炎は揺れすらもなかった。

どうやら、真実であれば、その炎は何も変わらないな、と思うエキ。

「どうしてユー殿は話さないか?」

「彼はワランドル語にまだなれていなくて、しばらく私が翻訳をやっています。」

三人は目を合わせると、ジョアンはまた尋ねる。


「二人は本当に、東の方から来たのか。」

「...」この質問を耳にした一瞬、今までのない緊張感がエキの心を襲った。

黙っているエキを見て、ジョアンは眉をひそめる。

「二人は本当に、東の方から来たのか?」




よろしければ、コメントお願いしますぅ(T△T)

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