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異界門  作者: タロー
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異界門の種類



更新した装備を身体に馴染ませる為に、練兵場にて丸1日訓練に使い込む。


また難癖をつけられると覚悟していたが、今日はラッツの姿は無かった。




翌朝、東神殿寮の食事を終えたヒイロはいつ異界門へ入るかどうか……を真剣に悩んでいた。


挑戦者となる決意はしたものの、一度異界門に挑めば最下層の主を倒すか、特別なアイテム【帰還門】と呼ばれる異界門で稀に発見される帰還用アイテムを使うか……の、どちらかだ。



サルゴウさんとの1ヶ月に渡る修行の卒業祝いに、神殿長から1つ渡されたアイテムがある。


【帰還門】


このアイテムは異界門であればどこからでも帰還する事が出来る、非常に有能なアイテム。

異界門に稀に発見される宝箱からしか入手出来る事はない。



そのため非常に高額なアイテムであり、金貨5枚で取引されている。






ここで今更ながら通貨の単位を説明しよう。



この世界の通貨は国によっても違いもあるそうだが、この都市で暮らす以上は少なくとも覚える必要はないそうだ。




神殿都市で流通しているのは鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨と別れている。


鉄貨10枚で銅貨1枚分。


銅貨10枚で銀貨1枚分。


銀貨10枚で金貨1枚分。


そして金貨は桁が1つ増えた100枚で大金貨1枚分となる価値がある。




一般家庭でも銀貨までが主な流通で金貨を手にする事は非常に稀で、金貨1枚あれば節約しながら一年間は過ごせるそうなのだ。





ヒイロが装備している銅のショートソードは銀貨1枚。

レザーの防具セットは銀貨が各2枚。

緋色のスカーフは銅貨3枚。



合計でほぼ金貨1枚分になる。

これでも武具としては最低限で安い代物でも、一般家庭一年間分の金額が掛かっている。


例えば店売りの鉄製の防具や剣は金貨が必要だ。

鋼鉄製の代物になるとぐんと値段は上がり、金貨は10枚以上からが最低必要となってくる。





これでも神殿都市の武具類は他所の国から見れば低価格なのだ。


安定した供給が望める魔物素材や各種金属等の需要は異界門で調達が可能だ。


その為、異界門からもたらされる素材の豊富さが、駆け出しの初心者でも何とか購入出来るように価格調整もされているためだ。



因みにニーズホックにある異界門産の宝箱で発見された<完全火耐性>の異能が付与された赤茶色の全身マント。

現代では再現出来ない貴重な品ともあって、値段は金貨250枚。


かなりの高価格にも思えるが、神殿都市の上位陣の挑戦者からしたら良心的な価格で販売している。





その為、実力のある者は異界門へと挑む。

一攫千金を狙う挑戦者となる事で成功する……それが血気盛んな若者が1度は憧れる職業となっていた。

















取り敢えず、神殿まで行こう。

後はそこから考えよう。


そう後ろ向きな決意して東神殿まで歩くと、外でサルゴウさんが待っていてくれていた。


ヒイロが前もって頼んでいたのだった。


サルゴウさんに頼って申し訳なかった。


しかし、行こう行こうと思っても、なかなか前に踏み出せないヒイロの苦肉の策だった。



今日はいつもの神官服ではなく、上から神殿の紋章が刻まれているハーフプレートを着込んだ重厚感のある装備で、物々しい雰囲気を醸し出している。


正に戦うもの……生粋の戦士だ。


間違いなく子供が見たら泣くだろう格好のサルゴウさんは、メイスを片手に笑顔を浮かべると熊のように愛嬌のある表情を覗かせた。



「サルゴウさんおはようございます。お待せしました」


「いえいえ、教え子が初めて異界門に挑むです。少し早く家を出すぎてしまいましたぞ」


「ご迷惑をおかけしますが、本日は宜しくお願いします」



ぐっと袖をまくり上げたサルゴウさんの二の腕が超頼もしい。


そのまま並んで東神殿へと入り、異界門の受付へと行く。


サルゴウさんが異界門の使用の為に、美人なお姉さんの受付嬢に話し掛けた。


「はい、今日はどのような……ってサルゴウさんではありませんか」


「久しぶりだなエレナ。今日は教え子を見送りに来たんだ」


「そうでしたか。では、こちらがあのヒイロさんですね?

<異界門の間>についてご説明させて頂きます」



この東神殿には5つの異界門が常時展開されていると言う。

神々の神業によって、<異界門の間>と呼ばれる特別な場所に固定しているらしい。


主を討伐して攻略すれば、即座に新しい異界門がその異界門の間へと転送される仕組みになっているのだと教えて貰った。


正直、神殿でもその仕組みは解ってないそうだ。



本来は異界門の使用については、神殿側からのテストがある。

それに合格した者しか使用出来ないルールだった。


テスト内容は筆記試験と実技試験、そして何十時間に及ぶ講習をクリア出来た人間は、最後に誓約書にサインを書いて終了となる。









ヒイロは始めての使用となるため、簡単な説明を受けることになった。


固定された異界門は1度に何人でも入っても構わないそうだ。

しかし、1つの異界門に集中する事を避けるために1度に50人以上は入れないように制限を設けている。


どうしてもと言う場合は、先に入った人達が出てくるまで待って貰うのがルール。



他、原則として異界門の中での挑戦者同士の争いは禁止。

これが守られない場合は、最悪永久に異界門の使用資格の停止となり、トラブルがあって争った場合は双方から事情を聞いて裁判が行われる。





魔物の横取りや主の討伐の際には神殿側はトラブルには関与しないことを注意事項として説明された。




異界門の主について。



どの異界門にも主は最下層に一体しか存在していない。

その為、主を討伐する場合は基本的に早い者勝ちとなる。


共闘したり、途中に救援を頼んでも構わない。

討伐後の報酬等で起こりうるトラブルについては神殿は関与せず、当事者通しの話し合いが必要だ。









異界門の種類について。


挑戦する異界門にはフィールドと呼ばれる環境(平原や森、火山地帯など)を進むタイプと、建物の中(塔や遺跡)を進む探索型のタイプが殆どだ。

中にはごく稀に、特殊型と呼ばれる空間領域を形成する異界門もあるらしい。










放っておいたら細かく延々と話し続けるエレナさん。

遂にサルゴウさんが合いの手を入れた。


「さて、説明はそのくらいにしてエレナ、初心者にオススメな異界門はあるかな」


「もうサルゴウさん、まだ全ての規則についてお話がすんでいないのに……」





ぶつぶつ言いながら、5つの異界門をリストアップしてくれた。





<蜜蝉の小森> 使用中 空き45


<武の鼓動> 使用中 空き3


<小鬼の草原> 使用中 空き11


<浅瀬の岩砂場> 使用中 空き0


<薬草林の洞窟> 使用中 空き0








まず異界門自体に名がある事に驚く。


使用中は誰か異界門に入っている状態を指して、50人が定員の空き状況を表している。

中で人が死んだり、帰還すれば空きがすぐ解る仕組みになっている。



新しい異界門が表示されると、勝手に名付けされた状態で表示されるそうだ。


不思議だ。



例えば小鬼の草原はそのままゴブリンと呼ばれる子供のような身長の小さな鬼の魔物が存在している。

低知能な上に粗末だが武器を持って襲ってくる。

実力的にはそこまで強敵ではないが、数が多く、人型の魔物である。


こん棒や錆びた剣等の武器を持っている事が多いので、囲まれないように立ち回りしないといけない。


ごく稀に魔法を使って攻撃してくる個体もいるため侮れない。

倒せばドロップ品は<ゴブリンの鉤鼻>や<小鬼の爪>が落ちる。

稀にゴブリンが使っていた粗末な剣や欠けた小斧、腰布が落ちるそうだ。



どんな用途に使われるのかは知らないが、神殿は買い取ってくれる。安いけど。


それでも基本的に持っていても仕方のないドロップ品なので、売り払うのが定番だ。




因みに何度も見掛けるメジャーな異界門の名前だそうで、ドロップする情報も集まっている。


そこの異界門の主は大概ゴブリンキングって言う大型で武装が充実したゴブリン。

個体としても強いが、配下が沢山いて総合力の勝負となる。


過去に何回か討伐されている記録もあるが、主だけあって討伐数以上に挑戦者を返り討ちにしているとのこと。



どうやら前もって以前からこの日に予約してある団体があって、丁度今から11人で主討伐を目的とした攻略を開始すると言う。

彼等がゴブリンの餌となるか、糧となるかどちらかは解らないが、祈らせて貰おう。








<武の鼓動>は黄級(イエロー)以上の挑戦者に人気がある異界門。

その名の通り、剣や斧、槍といった武装した人型の魔物が主に多く出現する。


ドロップ品はかなりの確率で倒した魔物が装備していた武具の一部が多いそうで、魔物の素材は稀とのこと。

腕に自身がある者にとって、沢山落ちる武具は稼ぎには丁度いいそうだ。


初心者には向かない異界門だ。



他の異界門<浅瀬の岩砂場>と<薬草林の洞窟>は採取を目的とした素材専門に近く、魔物も少なくて比較的安心な異界門。


しかし、それ故戦闘が得意ではない挑戦者にとってや、調合士や食素材専門の挑戦者にとって人気が高い。

既に枠が埋まっていて、両方暫くは空かないと容易に判断出来る。





残るは最初に表示された異界門<蜜蝉の小森>だけである。


「この異界門は討伐採集がメインの異界門ね。他に比べて人気が少ないのは<浅瀬の岩砂場>や<薬草林の洞窟>と違って採集するために木に停まっている蜜蝉を討伐しなきゃいけないの。

そのドロップ品が<蜜蝉の甘露>といってとっても甘い高級食材になるのよ」



木に停まっている蜜蝉は、体長50㎝程の蝉としては巨大な魔物だ。

高い木に好んで停まる傾向が見られる。


しかし、発見してから討伐が大変なのだ。

何故ならこの魔物は、敵に気付くと一目散に逃げる。

そして下腹部からとても臭い汁をかけて逃げていくのだ。


気付かれずに倒すか、飛道具を使って倒す事が一般的になってくる。


そのかかる手間が不人気な理由に繋がっているそうだ。




うーん。聞く感じ必ずしも魔物と戦わなくても言いようだし、この異界門にしてみようかな。


虫の魔物が出現する異界門だからギフトが最大限に効果を発揮する筈だ。






こうして初めての異界門は<蜜蝉の小森>に決まった。



受付を済ませ、異界門の間に向かうまでサルゴウさんとエレナさんに見送られる。


「初挑戦、無理はしないでね」


「危ないと思えば直ぐにアイテムを使って帰還する事ですぞ!」




重厚な扉が開いて、異界門の間に通される。


そこには巨大な柱に囲まれた大きな門が扉を開いてまっていた。


門の先は歪んでいて何も見えない。


ふと、あのギフトオーブを手に入れた場所を思い出させた。




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