伍 アダマスの御子
ヒイロのアニマの力、大神官の一端の力が見られます。
キレたヒイロさん、大量殺あるので注意あります。
7月16日加筆修正しました。
エリザベートとの決着から時が少し戻る。
番人蝶が最大強化を果たした頃、見計らったように鎖が騒ぎ、別の方向に敵がいることを示した。
「ん、此れってどういう?」
「どうしたの、ヒイロちゃん。主がもう来るわよ」
「エリザベートさん、封獄界の鎖が別の方向に敵対反応を示してるらしくて……これってどういう事ですかね?」
「何ですってぇ!……こんな時に、いえ、こんな時だからかしら」
所謂、横殴りという行為、行動の説明を簡単に受けた。
挑戦者において主討伐戦の際には、暗黙のルールが敷かれている。
先に挑戦者がいればそのパーティーから、助けを求められて応じるか、撤退するかの2択だった。
異界門の主を討伐すればその異界門は崩壊する。
そのため、順番待ちはなく早い者勝ちである。
ただ、発生した異界門に対して主の討伐戦を行う際は、事前の申請が必要だ。
先だって神殿にパーティー申請を行うことで、そのズレを無くさせているが、それでも少なからず他のパーティーと鉢合わせすることもあった。
その際は上記の暗黙のルールを使用する訳である。
しかし、それを守らない者達もいる。
好んで消耗した所を漁夫の利を得るために両者とも討伐する横殴り行為。
消耗した異界門の主の討伐と、参戦しないで戦利品を別けなくて構わないように、全てを異界門の中で始末するブラックな挑戦者達も確かに存在していた。
バレれば懲罰執行権を持つ凄腕の神殿関係者が容赦なく殲滅に参るほど、ダーティーな所業は厳しく取り締まられてはいるが……現代では激減しているものの、やはり一定数は残ってしまっている。
そんな奴らが来たのだと短く説明したつもりだったが、果たして今回の妖精郷の蝶型妖精の主討伐戦は、今回入念に練られ神殿……特に東神殿長イッサー主導により行われたもの。
この異界門には乱入出来ないよう神殿騎士が配置されていた事を考えると……これはおかしい。
しかし、考えている暇はない。もう番人蝶の最大強化はすんだ模様で、今にも此方に飛び出そうとしている。
「……っ、ヒイロちゃん。貴女は鎖の示した先へ行ってくれるかしら?この我儘王子様のお相手は私に任せてね」
「ええっ、無理「無理じゃないわ……ヒイロちゃん」です」
途中の言葉すら被せるようにヒイロを諭すエリザベート。
「フフッ、ここはオネーさんに任せなさい。貴女は無粋な気配のある彼方をお願いね」
「……直ぐに確認してから戻ってきます。だから……だから」
3本の鎖をこの地に固定したヒイロは駆け出した。
ここを離れればエリザベートさんにはもう会えない。そんな予感をヒイロに告げていた。
しかし、放っておいてはもっとマズイ事が起こる……アレは放っておけないと本能が告げていた。
悲しみで言葉にならないヒイロは、鎖に一縷の望みをかけて、この場を離れたヒイロだった。
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妖精郷の異界門入り口には、40名を超える物々しい武装した兵力が待機していた。
美しい景観の平原や花は軍靴によって踏み荒らされていた。
皆、神殿から支給された装備を身に付けている。
一般神殿兵士25名、神殿戦士10名、上級神殿兵士4名を引き連れた大所帯を指揮するのは一際目出す装備をした神殿騎士のアウロ・ナスティグロ。
その後ろに従者神官ナービャがメイスと鎖帷子を着込み控えていた。
これら全ての兵力はアウロの実家であるナスティグロ家が有する私兵兵力の一部だ。
ナスティグロ家は北神殿を派閥とする一派だ。
今回は秘密裏に他神殿の異界門に干渉する装置を北神殿より使用した。
これらの装置は緊急事態において他神殿の挑戦者、神殿関係者を救援支援目的で出動できるよう、異界門に干渉して割り込みをかけられる装置が備えてあった。
北神殿側では装置の管理をナスティグロ家が行っていたため、今回のような不正使用に関しては別段発覚の恐れはない。
ただし割り込んだ所で異界門の使用者数には表示されるため、割り込みが発覚する可能性が高かった。
そのため、何年も前から各神殿の受付嬢を取り込み、明るみにしないように裏工作を行なっていた。
イッサー東神殿長のスケジュールも押さえ、今日1日だけは邪魔の入らぬよう協力者の御方に尽力して頂いていた。
こうして万端な準備を得て、今日を迎えたのだった。
「良く集まってくれた諸君。これより神殿より盗まれたオールド・ウェポン回収する」
「賊はイッサー東神殿長様との協力により、この異界門へと追い詰めた。
捕縛が難しいなら生殺与奪も構わないとの命もある」
「さぁ、迅速に進軍せよ。栄光は我らにありぃっっ!!」
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大神殿の宝物庫に使用者未定ないし不明として回収された選定器の1つから、僅かな光がもれ、飛び出した。
小さな珠となって浮遊した光は自らが先読みした未来によってこの異界門に割り込んだ。
何日間かかけて定着すると同時に、零れ溢れる力は徐々に異界門に影響を与えていった。
著明に現れたのは、この異界門の主たる番人蝶と呼ばれる存在だった。
この異界門の主軸たる主は溢れ出でる力を余さず吸い込み、存在の格を大幅に上げる事に成功していた。
通常種級から2段階もランク上昇させ、魔王種級まで至った前代未聞たる【小英雄の番人蝶】。
しかしさしもの主であってもこれ以上の吸収は既に器を超えていたため、不可能だった。
パンパンに膨れた器は限界を迎え、例えるなら杯にこれ以上水を注いでも零れていくだけ……。
あと数日遅ければ異界門もろとも原因不明として崩壊していたに違いない。
どこからか聞こえる不可思議な声。
神秘的であり、醜悪でもあり、心地良くもある。
ヒイロと神殿側の兵力とが激突する前の区画には、暗闇の空間があった。
その何も見えない場所から浮かび上がる幾何学的模様は、そこにある全て何もかもを飲み込み、妖精も音も暗闇すらも吸い込んだ。
僅かに残った光が発生する。
『₯≠฿₥₫』
『₯?』
『฿₥₫ ₢₩₰₶』
か、か、かかかか
かぁ、かぁぁく、かぁけぇにぃ、ー。ん。
確認した。
『干渉完了……受肉』
鋼ように鍛えられた美しい身体の青年は半裸だった。頭皮を始めとした全ての体毛はなく、光輝くほどの艶が肌を覆っている。
『フゥム、流石我が肉体よ』
腕をさすりながらゆっくりと持ち上げた。
『我は美しい』
あれこれと己の顕現した自慢の肉体美の点検を済ませ終えた後、ある予感によって遺した力をここへと顕現した。
しかし、予定とは違う気配も感じていた。
『この時間軸は本来の未来にない……予定調和されていない気配がする』
神たる備えた権能を使い、世界に干渉する。
すぐに〈全知〉の効果にてアクセスし、知りたいことを入手した。
『黄金神は既にロストされた筈なのに、何故此れ程までの力を……アルマースとして最上位の力を受け継いだ個体が産まれたのダ?』
【アダマスの御子】の1人として確認せねば成るまい。
しかしこの地の門に干渉し続けるは酷く不安定である。因果を結び、存在を確定させねばならぬ。
迫る神殿側の兵力に対し、別枠で物事が動き出す。神というファクターはどう関係していくのだろうか。
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大いなる力によって時空の干渉を受けた事で、門中の大気が震え、怯えていた。
ヒイロは新たに感知した未知の軋む波動に対し、恐怖よりもなぜか既視感を覚えていた。
この出現した存在が、気になるけど、これはさておき、問題は目先のこと。
研ぎ澄ました感覚は既に敵を補足していた。
訓練された軍隊の足音が既にそこまで迫っていた。
無性にイライラがとまらない。
今日私がなにかしたかなぁ?
素敵なお友達と初の異界門探索、初主トライ日だったよね?
何日も何日もアイテム選んだり、買い足したり、妖精を調べたりって……本当に楽しかったんだよ。
それを、まぁ、良い所で、しかも、死地になりかける、ばしょに。ともだち、オイテ……。
「こんっなぁぁフザケたことってあぁるぅうぅぅ!!!!!」
アルビオンブーツの駆ける速さすらもどかしく、目標まで駆け抜け、問答無用の速さで白い集団へと飛び掛かっていった。
いつもの無表情ではなく、ヒイロには誰にも見せたことない憤怒の表情が浮んでいる。
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見渡す限り、血溜まりに沈んだ大地は赤一色に染められた。美しい世界が血色に汚され、凄惨で虚ろな死体は静寂のみを語る。
むせ返るほどの濃い血の臭い が充満している空間に、似つかわしくない2人がいた。
『良くやったアルマース』
1人が口を開いた。
倒れ伏した死体の小山を一瞥し、何の感情のないまま言い放つ、半裸でスキンヘッドの肉体美を誇る青年は一部始終を全て遥かなる空より眺めていた。
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戦闘が開始してから、ヒイロが想定するより長くも時間が経過してしまっていた。
こんな奴らでも、腐っても神殿が誇る戦闘集団。
相手が察知する前に、とんでもない跳躍力を見せて先頭集団に飛び掛かったヒイロは、手前にいた一般神殿兵士1人の鎧を難なくサクッと突き捨てる。
本当の意味での【封獄界】を使い、その場を一方的な殺戮の場へと変えた。
慌てふためく現場を騎士の一声で統率しようする。集団行動や命令に対して直ぐ様、盾を並べ防御陣形を構築された。
通常ならそれでも良かった。
しかし、この場では魔力が乱され、干渉されていることで身を守る異能の効果が発揮されない。
そのため当然C~B等級程度の防御力だけでは、希代の刺突剣たるヘルガイアの切れ味を防げない。
盾を直接蹴られ、兵が1部よろけた所で空いた隙間に差し込み、肉を穿つ。
そして囲まれる気配を感じた所で逆に深く敵陣へと踏みいったヒイロは、狭い場所で突きだされた剣や槍を悠々とくぐり抜け、下がった頭兜の首を骨ごと完全に断ち切った。
その細身からは信じられないくらいの怪力と技量であり、その威力は風の如く立ち止まる事を知らない。
完全に囲まれる前に反転し、立ちはだかる者を一瞥。鎧の壁を蹴りあげ重量差をモノとせずに、更に足を刈り、転倒させる。
味方が倒れたその隙にヒイロの背中へ回り込んだ一団が全力でメイスを振り下ろす。
それらの戦意を背中で感じとって躱し、丁度撫でるように振り向き様に真横に剣を振るう。1人がひゅっと息を吐いて、鼻から上が兜ごと切り裂かれた。
多人数の戦場では留まっていたら自分が死ぬとわかっているため、ヒイロは回遊魚のように転々と、悠々と走る。
時に鎖を使い弾き、貫き、締め上げる。
無尽蔵に思える体力は一向に減らず、勢いは止まらない。
時々土を蹴り上げて目隠しとし、最悪数に押され囲まれた時は、相手の盾を、腕を、太ももをとんでもない体幹と運動神経、筋力でかけ登り、その度に一太刀、一太刀と斬り加える。
ヒイロが最初に戦った主である地殻蝉戦だったころから、カウンターは得意だった。
主という超常の存在に比べれば、異界門で鍛え上げられたとはいえ人間である。
戦闘を主体としている兵士とはいえ、異界門の主である装甲や筋力はない。例え【蟲の天敵】ギフトがなくとも今のヒイロの相手にならないのは明白。
対人経験や実戦経験豊富な兵達は、ここまで一方的にやられていた訳ではない。
ただ、攻撃が当たらない。
密集しても個別で撃破されていき、一旦下がるも絶妙な間取りで距離を詰められる。
前線は後続からの支援が受けにくく、無理に支援攻撃を行えば味方に当たる方が高かった。
粘稠な動作となり思うように動けず、戦いにくさもあるだろうが、ここまで自らが保有している異能が発動しない。
一般神殿兵士になって貸与された武具は彼等が挑戦者だったときに愛用していた武具と遜色なかったり、寧ろ品質が良くなったていたことすらある。
これまで馴染んでいた【耐久上昇】や【硬化】などすらまともに発現、発動せず紙の如く切り裂かれていく。
「だ、誰だよ。小娘なっ、ぎゃあ」「唯の奪還任務じゃなかったの…か」「……いてぇ、いてぇよぉ」
既に30秒で8人を切り捨てた。
ポーションなどで回復可能な者達も加えれば斬った数はもっといるが、放っておけばどれも致命傷となるのは間違いない。
全身が滾り、活性化している。呼気と吸気を繰り返し、自らを制御する。
うっすら淡く、髪色の如く紅いオーラはヒイロの身を揺らめかせながら包む。
無意識の怒りによってアニマ・マテリアルを初発現させていたヒイロの黄金の左瞳には『秘奥の紋章』を浮かび上がらせた。
「お、お前、我らにこんなこと、をして無事に、すむと思って、いるのか」
(こ、小娘はただの下等平民ではなかったのか)
ここにきてようやくヒイロがただ者ではないことを実感し焦るアウロ。
発した言葉に立ち止まり、黙っているヒイロに交渉の余地があると感じたアウロは、折れかけた自尊心をかき集め言い放つ。
ナービャはアウロに代わり、負傷者にポーションによる治療指示と、無事だった者達に包囲を指示している。
そしてこのままでは終わらないだろうと待機してあった援軍を呼ぶことを伝え、1人離れた。
「ふん、ようやく立場がわかったのか反逆者め。大人しく投降しろ。貴様にはオールド・ウェポンを」
「……もう、いい」
覚悟を決めていた。
「な、なんだと」
「もう、いいと言ったぁぁ!!」
「来なさい、天夜叉」
左瞳に写し出された秘奥の紋章は、美しい緋皇鋼で造られた美剣を出現させた。
右手にヘルガイア、左手に天夜叉。
首のスカーフをたなびかせ、紅き疾風怒濤となる。
そして、その場にいる誰も生き残れなかった。
そして冒頭にもどる。
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『我は醜悪なモノは嫌いだ。
もしお前よりも先に私が出会っていたら余りの汚さに、全てをこの異界門ごと浄化していただろう』
ヒイロは呆然としていた。
己のやった神殿兵殺しに……ではなく、友達であるエリザベートの事だった。
消えていくエリザベートの命の輝きに対して何もしてあげられなかったこと。
こんなの(神殿側や宙に浮くハゲ)放っておいて置けば良かったと何度思ったことか。
突然出現した宙に浮く半裸ハゲは、一方的にこちらに話しかけてきているが、とことん無視だ。
それでも耳は傾けなくてはいけない。
このハゲがとんでもない力を持つ者だと本能的に理解させられており、それこそ、ここの異界門の主である〈小英雄の番人蝶〉なんぞよりも余程危険で恐ろしい存在だと。
戯れに力を振るったとて、今のヒイロでは勝てない位の隔絶した力の差があることぐらい感じている。
だからこそ、エリザベートを残してでもこちらの方へ来たのだ。
これほどの力を放つ存在がどうするのかわからないからだ。
一気に放出した力で疲弊しているものの、エリザベートの元へ行かなきゃ……と。
思っていても、1歩動かすのに時間がかかり、行くなと足が向かうことを拒絶していた。
行かない訳にはいかない。
重い足取りのまま歩き出そうとすると、既にそこは主のエリアの入り口だった。
『……アニマの使い方がなっちゃあいない。使い方が美しくないぞ?
次代の神官に何を教えて来たんだアルマースの者共は。………むぅん。ほれ整えてやったぞ』
ごちゃごちゃいう半裸ハゲはそう言うと、ヒイロを望む場所へと転移させた。
転移した先でヒイロの本能は目を背けることを告げる。しかし、それは出来ないし、したくない。
激しい戦闘跡がここでの死闘を物語り、胸に大穴が空いて倒れ伏しているエリザベートを見付けた。
仲間、友ともいえる存在を初めて亡くす哀しみは、ヒイロの頭を真っ白に、心に癒えない深い傷を残す。
エリザベートは装備も身体もボロボロであった。
凄絶な最期を遂げる姿を見たヒイロは、ゆっくりとエリザベートの遺体を確認するようにゆっくりと、おずおずと、抱きしめる。
頬を伝い、いつのまにか溢れでてくる涙をとめられず、後悔に胸をかきむしった。
何も考えたくない。
声にならない声を上げて哭くのは久し振りだった。
そんな悲壮感漂うヒイロを放っておいて、半裸ハゲの青年はふわふわとエリザベートの元へと近づいていく。
『おぉ……おぉ……ソナタは何と……美しい魂よ』
権能によって干渉レコードを使い、ここで何が起こったのか一切合切を読み取った半裸ハゲは、思っていた以上の物語の美しさに感極まっている。
友のためにこの場に残り、恐らく死ぬことを予感していても送り出し、なお1人で主を討伐した剛の者。
その気高く美しく輝く生き様は我を信奉する民では無いとは言え、我らアダマスの教義に相応しい高潔な魂を併せ持つ信徒である。
よかろう。善かろう。
新たに迎える眷属に相応しい。
▼
半裸ハゲは遺体を抱いて嘆くヒイロを完全に無視した。
無理に顕現した残滓の自分では、この美しい魂を昇華するには交渉と契約が必要である。
『我がナはアダマスである。ソナタの名を告げる権利を与えよう』
『…………ふむ。フム?これは消滅しかかっておる。時間が足りぬな。この地に留まるため、美しく脆い魂を補強する。魂に干渉するゆえ死ぬほど痛いと思うが覚悟せよ』
アダマスと見えないアニマの糸が繋がった。
『ふム、叫び声1つとして上げぬとは何たる見上げた魂よ。しかしソナタの声は神である我には聞こえぬ。アニマを通して我に直接言葉を放つ権利を授ける』
『フムフム(φ(・ω・*)フムフム)、であるか。
高速深層言語で吸い上げるが……色々あったのだな。
ソナタの願う希望・要望に出来るだけ応えられるようには検討、調整しようではないか。
そもそもソナタが倒した主の丁度よいドロップ品もある。使えるかどうかは適性を調整してみる故、我の中で待つがよい。
よし鹵獲完了………ポチっとな。後は蘇生か』
▼
どれだけ時間が経過したのだろう。
少し気持ちが落ち着き、抱き締めたエリザベートの遺体を綺麗にして持ち帰ろうと思い始めたヒイロ。
無視し続けていたものの流石にうるさいなとハゲ青年の一人言を聞いてきたヒイロだったが、聞き捨てなら無い単語が聞こえた。
「ほけい(蘇生)?」
涙と鼻汁で上手く話せないヒイロを汚そうに見る半裸ハゲははっきりと肯定する。
『ほけい?ではない。蘇生だ』
少し悩んだ素振りをするものの、
『ん、アルマースにも蘇生術式の1つや2つくらいは有った筈だが伝わってないのか?……まあいい』
「えっえっええ?えっ?」
混乱しすぎているヒイロは何が何だかわからない。
マッスルポージングしながら神々しく手をかざす半裸ハゲは、恭しい所作でエリザベートの肉体を宙へ浮かした。
『この肉体は既に滅び、この美しく鍛え上げられた筋肉群は既に役目を終えている。
ゆえに普通であれば穏やかな死を迎え、世界に還元、召される。
しかし蘇生術式がある。
これにはまず最低限損傷が少ない、重要臓器もある遺体が整っている事が条件だ。
神々によって仕様の条件は異なる。
例えば貴様のアルマースのように複雑怪奇な高難易度術式を贅沢に使い、無制限に輪廻再生ばかりは普通は出来んのだ。私に出来るのは……むっ』
僅かに顔をしかめた半裸ハゲは、
『その美しい有り様の魂は、消耗し脆く崩れていく。コトワリ従い、現世から完全に放たれる。
そうなれば如何に蘇生術式とはいえ蘇生は不可能となる。
それを我は赦さん、許さんことよ。
そのためにかの主のドロップ品とやらも全てもらうぞ。それらはこの魂から申し訳ないと言っているが、構わんだろう?では貴様に伝えたぞ。さぁ、はじめる』
独り言のように一方的に宣言する半裸ハゲはスキンヘッドが神々しく光る。
「はひ、いくらても使ってくだひゃい」
『むぅ……アニマを無駄に消費はしたくない』
〈全知〉により大神殿に奉られ封印されているアダマス由来の選定器。
我が力を宿す選定器の大鎌を無理矢理借りるとしよう。契約とはいえ、一瞬ならバレぬだろう。
少し念をこめた背部からエリザベートの身体ほどの大きな鎌が出現した。
やたらと神々しく、大鎌の刃が無数に分裂し光を吸収し重なっていく。刃と刃の間には輝く線で結ばれた幾何学的模様が現実感を薄れさせる。
『金剛大鎌よ、我がアニマを宿し、顕現するために簡易蘇生構築を開始せよ』
神々の古代神言語が宙に浮かび上がる。
【小英雄の逸脱妖精因子】
【逸脱番人蝶の脱げ皮】
『フームフム?現在のシミュレート結果は………Rは80%確定。SRは40%。SSRは6%!?渋い』
ちょいちょいと指を器用に動かしていく。
『これに本人因子と掛け合わせて……引き継ぎ注ぐアニマを増やしてやると確率は多少は上がったな。
せめてSR個体は狙いたいではないか……何百年振りの眷属ぞ??
あ、もちょっと、もうちょっとだけリソースを……』
と、良くわからない事をブツブツ呟きながら幾何学的模様は絡み合う。膨大なエネルギーがソコに注ぎ込まれ、軋む空間が悲鳴を上げていた。
ここが異界門ではなく現世であったのなら、間違いなく神殿都市は跡形もなく吹き飛ぶだけのエネルギーを有している。
幾分疲れ、煤け始めた半裸ハゲは、次第に薄れていく自身を感じながらヒイロの方を向く。
『新たな信徒も得た以上、新生したアルマースの民の事情なぞどうでも良くなったわ。
万が一に備え選定器に残した力も使いきって限界ゆえにな』
それと、ハゲではない。スキンヘッドだと付け加えて言う。
全ての力を使い果たしたスキンヘッド半裸は満足そうに消えていく。
『これで世界に因子を刻んだ』
『全ては完了した。
高潔なる魂よ。我の力を受け継ぐ新たなるアダマスの民として、信徒として神霊に誓い、我が選定器を受け継ぐにたる器を示せ。これは神託である』
『……ではな、我が愛しき御子よ』
そう言うと同時にこの場に新たな気配が出現する。
それはとても懐かしく、ヒイロの心の傷を満たしていくように暖かい。
「フフッ、ヒイロちゃん。帰ってきちゃったわ」
そこには声色や姿形こそ違うが、間違いない。
ヒイロの友達が帰ってきた。
「もう、もう。………お帰りなさい」
言いたいことは山ほどある。でも、何も言えず、抱きしめ合う2人は喜びに溢れている。
暗い話は苦手です。ですが、書いたほうがいいのかな?とも思います。
話を大分切り取り、付け加え、また除去しました。
見ていただいた皆さんに何とか読める内容になっているでしょうか?
残りは神殿関係の話で北神殿。
因みにナービャくんは北神殿側がスパイに送り込んだ人材です。
もしかしたら、陸は書かないかも?です。




