表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界門  作者: タロー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/28

それは始まりと終わりを告げる選定器

ブックマークして頂いている方、この作品を見て頂いた方、お読み頂いて有り難うございました。


あれからヒイロはもう1つ異界門を攻略していた。



【熱雨の捕食者】と呼ばれる異界門は、熱帯雨林のよう鬱蒼と繁る植物環境が主な異界門で、時折文字通りに80℃~100℃近い温度の雨が天から降り注ぐ。

熱雨による熱傷や、装備の消耗が著しく一気に継続戦闘力が落ちて劣勢に立たされる苦境が多いフィールドだ。


熱雨の発生するタイミングは決まっており、フィールドに冷たい風が起こると10分もしない内に降ってくる。

その間に熱雨をしのげる場所の確保すれば大概は防げるし、洞窟等のしのげる場所もそれなりに存在している。

しかし、その場所には人間以外にも魔物が集まってくる為、注意が必要となる。

熱雨時にものともせず活発な活動をする昆虫型の魔物も存在し、挑戦者からは旨味の少ない不人気な異界門であった。





今回の異界門の主は芋虫とヘビを思わすような4m級の細長い胴体の下に、申し訳ない程度の腹脚を纏っていた。

身体全体にぬめっとした液体を分泌させている。


この分泌物は熱と斬撃の耐性のほか、近寄ったり触れたりすれば高い確率で主の体内に保有している病原菌が猛威を振るう。

頭部には大きな複眼と十字の大牙が付いていて、喰らい付くときは倍以上に頭部分から膨れ上がって補食する<巨大蛭>と呼ばれる昆虫型を複合した主だった。



分泌物による高い熱耐性と斬撃耐性を有していたが、天夜叉から放たれる緋天の炎と斬撃には敵わず……病原菌にも天夜叉の状態異常耐性があるヒイロでは相性も良い相手だった為に、時間はかかったが最期には干からびながら消滅してしまった。




さてさて、ノーマルドロップ素材は複数あり、売却予定。


異界門の主であるドロップ素材は<大蛭蟲の蛇腹肉>。これは残しておく予定。



討伐の証たる青い宝物には<複魔眼の腕輪>と言う防具類入っており……後に鑑定した結果、装着すれば<方位視野拡張>と呼ばれる死角すら埋める異能が付与されたA等級の代物だった。









昂然と輝く帰還の門を前に、ヒイロは己の胸元にある<秘奥の紋章>を意識する。


そこに今回の異界門で手に入れた素材ドロップと、異界門の主の討伐した証である青い宝箱の中身に触れた。



「さあ、帰ろう」


汗と泥汚れの格好に苦笑する。


早くシャワーとお風呂にはいらなきゃ。



あの【古代樹の守護蟲】で偶然遭遇した不可思議な体験は、新たなチカラである<アニマ>をヒイロにもたらしていた。



そして、ヒイロは帰還の門をくぐった。











あの【古代樹の守護蟲】での主たる青い宝箱に入っていた、始まりを告げる(キー)が光となって消え去り、そこで初めて胸に<秘奥の紋章>が現れた。

同胞として、アルマースの民であり黄金神の4人の大神官の手によって刻まれた。





誰かと話していたような、人生を何千何万回もやり直したいような?

思い出す事がもどかしいほど当時の記憶が所々、途切れている。

まるで、思い出すことを精神が恐怖しているような……そんな気さえする。


ヒイロは覚えてないがあの時、最期のアルマースの民であり、最上位の存在として生まれ変わった。







血管の隅々、細胞の果てまで体に満ちる力の解放感を味わいながら、ゆっくりと息を吸い込む。

秘奥の紋章として未完成だったアニマ。


何も知らないヒイロには、自らのルーツが黄金神と呼ばれる神を崇め、眷属となったアルマースの民ということさえ知らない。


世界に例え黄金神がいなくとも、その代理存在によって世界にある、ありとあらゆる全記憶(アカシックレコード)を司る世界樹(ユグドラシル)へ照合……最期のアルマースの民としての先祖返り(フィードバック)のような超覚醒に至ったという、大層なプロセスを組んでいたが……ヒイロ自身は良く解っていない。






そのためヒイロは本来ならば最上位眷属として支えるべき黄金神が存在しないが、神が存在した欠片としてアルマースの血筋には黄金神の<アニマ>が遺されている。


また直接黄金神の加護は無くとも、最上位眷属となったヒイロにはアニマの他にも、完全ではないが大神官級の肉体性能補正が加護として加算されている。


これはアルマースの民の持つ元々優れた肉体でも3倍近い数値であり、反応速度や神経伝達すら兼ね備える。


【器】システムの中でも緑級の上位に相当する肉体補正だった。

この経緯があったために、あの時ニーズホック商会の暗殺メイドであるシャリアを退ける事が出来たのだった。


また、欠陥としてヒイロの生来(・・)の壁は、以前ではどうしても青級が限界であった。

しかし、存在ソノモノを丸ごと昇華されたヒイロは、潜在能力の全てを成長(・・)する【器】の恩恵にあずかれる。




そんな超覚醒に対しても、記憶がないヒイロは以前に比べて体の調子が物凄く良くなったと思っているだけだった。


そうやって実感のまだある身体能力の強化に対して、自分でも良く解っていない<アニマ>の能力が顕となったのは更に半年が過ぎた事のこと!



何だか急かされるような気持ちになりながら、ヒイロは4つの異界門を攻略し終えていた。













<これまでの異界門の攻略の成果として>




①主素材はニーズホック・センチビートの多千脚。

青の宝箱の中身は、新生したヒイロの始まりを告げる鍵として消費。



②主素材はレアな主でもある降魔ダニの大生命石(ハイライフストーン)

青の宝箱の中身は、黒煉鋼と呼ぶ異界門でしか入手不可能、精練出来ない黒曜石のような輝きを放つ金属の塊を入手。

手触りは堅そうな質感をしている。




③主素材は大蛭蟲の蛇腹肉と呼ばれる剛筋繊維。ぬるぬる弾力がっちり。

青の宝箱の中身は複魔眼の腕輪。





④主素材は合計過去3度討伐したお馴染みとなった異界門の主である地殻蝉。前脚にのみある発達した両棘腕。

青の宝箱の中身はスキルカード【頑健頑強】








無意識に何かを求め、探しているようにも感じられた半年だったと後から思う。

イッサー東神殿長とエレナさんに頼み込み、普段よりもハイペースで異界門へと潜り続けた。

その結果、戦闘は必須であり、生命を奪った際に発動する<若返りの呪い>の影響で、かなり幼くなってしまった間は拭えない。


今は18~20歳前程の外見から、既に15歳前後にまで年齢は下がってしまっている。




そしてたった今、激闘の末に挑んでいた異界門の主の触覚を斬り砕きとどめを刺す。



5つ目の異界門【大地を喰らう切断蟲】

攻略し終えた異界門の主素材は、重装甲を身に纏い魔力によって鋼鉄よりも固い大結晶に覆われ、刀のような3m級の触覚を振り回す巨大な切断蟲(カミキリムシ)であった頭蓋殻。

青の宝箱の中身は、トパーズに煌めく大地の結晶にて、持ち手から細身の剣身までが芸術品の如く作り込まれた刺突剣 ヘルガイアは初発見されたA等級の<オールド・ウェポン>だった。


今まで好んで蟲系統の異界門が攻略されなかった背景と共に、巨大な切断蟲もA級の中の異界門の主ではトップ級の戦闘力を持つがゆえに、好き好んでは挑戦しなかった。

無理をして挑戦するより、他の異界門の方が採集や素材がいいため、いつからか誰も討伐をすることなく、成し遂げた事もない不敗の主でもあった。




オールドウェポンと呼ばれる強大な武器が入手出来た。思わぬ収穫に嬉しさは隠せない。

詳しい鑑定は明日して、今日はもう寝よう。







そうして異界門から帰還したヒイロが部屋で眠る頃、ひっそりと胸にある<秘奥の紋章>は輝きを増した。


全ての条件は整えられた。


そう判断したアニマは、保管してあった全ての主素材は集められ、また入手したばなりの刺突剣すら<秘奥の紋章>に吸い込む。




<秘奥の紋章>の中では異空間が形成されており、雲のようなふんわりした繭があった。

ヒイロと濃い縁と繋がりを待つ新たな存在が産まれようとしている。










ヒイロが授かったアニマは、本体であるヒイロから誕生し意思を宿す半独立性自立型と分類される非常に珍しい……唯一無二のアニマであった。




記憶も自覚もないヒイロに代わり、黄金神の4大神官がお膳立てし、密かに遺した置き土産は確実に力を蓄えていた。







ヒイロが持つアニマのチカラ。



かつて黄金神が管理していた世界機構であるユグドラシル機関の1つ。

神界にて黄金神の全ての記憶を宿すアカシックレコード<黄金の世界樹>に対して、セキリティに触れず直に照合・参照する事して情報をいつでも引き出せる力を有していた。

これは、黄金神が存在しないが為に現世では世界樹へ新しく情報を蓄えられることないが、それまでの間古今東西、過去において全ての担当する情報が蓄えられている。




世界と同様の質量と言っても過言ではない情報量。

それは普通の人間が扱うのでは、容易に死毒となりえる。

一瞬でも触れればいとも簡単に脳を焼き付くし、一瞬でこの世のありとあらえる苦痛が襲い掛かる。

精神が耐えきれず狂うまもなく生命活動が終わり、刹那の内に死人となって世界から朽ちるだろう。







それは生物として最上位眷属としての大神官級の潜在能力と肉体細胞を有する事になったヒイロだとしても同様で……触れれば例外無く決して生き残る事は出来ない。


その為、<秘奥の紋章>が発現したきに時、超覚醒した防衛本能は一瞬でも世界樹へ繋がったアニマの情報を遮断する為に無意識領域から新たな独立した意思を構築して守ったのだった。

それに耐えうるだけの超高速演算・補助頭脳のような独立特化した意思を有する事で、一時的に分離・一定遮断する事が可能となる。


黄金の世界樹から、世界に匹敵する情報容量を条件付きではあるが任意で活用できるようになったのだ。






流石に直ぐに受け入れられるだけの構築は無理であり、暫くは精一杯その調整と適応に終われた。


凄まじいばかりの情報量に触れる事で最低限に保つだけだった特化した意思は、次第に自我と感情を持つようになった。


それは、ただ本体(ヒイロ)のアニマを抑え込むだけの存在と成り果てる……それで良いのかと考えるようになった。

半年前ならば、それでも良いと感じていたが。


それは小さな感情の発露。

徐々に自らの存在意義を思考と考察を繰り返しつつ、膨大な情報を読み取りながら半年以上が過ぎた。

その頃には少なくとも人格と呼べるだけの個が形成されていた。


いつものように調整を繰り返しながら、日課となった黄金の世界樹へアクセスしていると非常に興味深い情報を発見した。


<選定器>と呼ばれる存在だ。


<選定器>とは、この世界において神の権能(チカラ)を宿す現世に存在する非常に稀な代物。

それだけに上位や高位存在、更には最上位としての眷属まで位階を高めた者に対してだけ、信仰する神から触れる事が許される特別なモノ。


それは滅多にお目にかかれない程希少であり、現存する選定器はこの神殿都市においても3つしか存在しない。

選定器は身につけるアクセサリーであったり、道具や武具類であったりと信仰する神によって形は千差万別。



神々が試練として、自らが管理(・・)する特別な異界門でその存在を高めさせる。


そこで仲間とともに勝ち取った異界門の主の素材や、特別な金属、鉱石等らを材料に、鍛冶神によって特別な称号と鍛冶技術を持つ一族の鍛冶士が命を懸けて腕を奮い、命を吹き込む。

最終行程として支える神の<契約>を誓わせる事でようやく神力の一部が流れこむことで、真に完成するのだ。



それは神々の持つ偉大なる権能を世に知らしめ、万能の力を身に宿した自然災害のような絶対者と成りうるチカラを秘めている。


それが【器】システムと組み合うことで相乗効果を生み、一騎当千の英雄を超える<神の代行者>大神官や、選定器は無いが試練を超えた者として絶大な加護を身に宿した使徒が生まれる。







この<選定器>があれば……自らが全力制御しなくとも、アニマを制御出来る出来る可能性が高い。


慎重に情報を抜き出し、選び、精査していく。


本体(ヒイロ)の選定器作成には、本来ならば神と交信しその神力を宿す為に試練と契約が必要となるのだが……支えるべき神のいないヒイロには今回必要としない。

また、眷属であるが故に黄金神の残滓と言えど神力を最低限に扱える体質・資質を持っている。





後は材料だ。

異界門の主の素材だけが持つ特性と魔力があれば代用が可能であり、造り上げる事だけならば……<秘奥の紋章>の上位亜空間でも難しくはなさそうだ。





アニマは一定条件を満たした異界門の主素材を探し出し、それらを主な媒介・代用に加えてチカラを使う。




そこまでしても世界樹の演算で弾き出した選定器との融合成功率は……40%未満。


選定器を造り上げる事の出来る鍛冶の一族は、現在争いの耐えぬ地を見限り、別の大陸にへと移り住んだ。


それを補うために、入手した莫大な魔力を宿すオールドウェポンを主軸にし、この<秘奥の紋章>の支配空間にて微かに存在する黄金神の残滓のチカラを借りるのである。


他にはアニマと相性の良い5つの素材をオールドウェポンに共鳴させながら、選定器の土台を造り上げて<秘奥の紋章>で残滓を干渉……融合させていく。







更なるデメリットとしては、これは現状で行う上で造り上げる最善の手順なのだが、やはり最高の状態で正規の手順で作られていない選定器であること。



またそのまま無事完成しても、本来の黄金神が正規で契約する程のチカラを持たせられない。

黄金神の残滓にヒイロのアニマを融合させる事が精一杯であり、全体強化率も他と比べればおしなべて弱く、オールドウェポンを主軸としても現存する他神の選定器と比べて格段に劣るであろうこと。






不安は感じる。分の悪い賭けやも知れない。

覚悟はある。

やるしかない。


このままでいるよりは、本体(ヒイロ)を助ける事が出来るだろうと信ずるに値するからだ。





自我が生まれた為に特異点となったアニマは、最後に自らを【コクーン】名付けた。







<汝の力となりて我を奮わん>



本体(ヒイロ)の無意識領域から産まれ、発現したときの誓いをもう一度。


私はあるいは、もう1人の生まれたヒイロなのかも知れない。




新たに構築された繋がりを感じとれた。

我はコクーンなり……と、本体(ヒイロ)の脳裏へと繋がりを通して伝える。







世界で初めてアニマと選定器の融合を果たした意思を持つハイブリッド型となる。

自らを<混沌の繭>コクーンと名付けた存在の意識は、満足そうに深く優しくたゆたう闇の海へと委ねた。




後に最強の蟲滅殺者ヒイロの相棒となる誕生の瞬間だった。


この物語は完結します。


書いててワクワクする作品でもあり、初めての女性主人公でした。

本来ならもう8話程ストックがあるので、異界門のこと、登場人物のこと等、少し伏線を回収する予定でしたが……思うこともあり、この段階で締めさせて頂こうと思いました。



好きなキャラクターなのでヒイロは、また違う作品にて登場する人物かも知れません。


最後まで作者の拙い文章にお付き合い頂き、誠に有り難うございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ