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異界門  作者: タロー


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新生

超巨大ムカデ、ニーズホック・センチピードはヒイロを呑み込んで体内に押し込めたまま、古代樹へと戻る。

そして古代樹に巻き付くと、ズブズブと沈み混み、同調し光の粒子となって消え去った。









現在ヒイロは古代樹の中に取り込まれ、囚われていた。




ニーズホック・センチピードに飲み込まれた後、展開がまるで追い付いていないヒイロ。

半覚醒な意識のまま、何だか起きてるまま夢を見ているようだと錯覚していた。



とても現実的だとは思えない出来事ばかりが続くと、人間は感覚が麻痺していくようだ。





ほら、誰かが耳元で話している。



それも複数だ。



若い男性の声もあれば渋い女性の声、美しい声、幼き子供の声。


どれも共通しているのはヒイロの存在を気にせず、無視している事だ。



目が開けられない。瞼もピクリとも開かない。


声を出そうとしたが口も開かず、指の1本でさえ反応しない。


まるで身体が自分のモノでないような、切り離されているような不思議な感覚。


一方的に声だけが聞こえてくる



それも聞こえなくなってきた。



ヒイロの意識は閉ざされた。








古代樹の葉がザワザワと一斉に騒ぎだす。



根元から吸い上げる膨大な魔力が白銀の花を咲かせ、黄金の実を作った。


そして反動で何枚かの黄金葉が急速に枯れ落ちる。


【(ユグドラシル・ディヴィジョン)】



《我等は本体から切り離された故に、これ程の力を酷使出来うるのは一度限り》


《完全な実は1つ》


《魂と新たな身体を同調するため、元の肉体と受肉させよう》



声 《禁断の果肉》


声 《叡知の豊潤》


声 《不断の柔皮》


声 《混沌の種子》








しかし、どれもヒイロには適合しない。



渇望するチカラが足りなかったのだ。










《干渉された歪な素体、崩壊寸前の未熟な器。

アルマースでありながらアニマとの同調率の低さはその為》




《ギフトを保有している事が奇跡的な個体だ》



《一体、どうなっておる。この隔離された世界では情報が足りぬ》



憂慮、困惑、低迷……それらを含む声の中に、唯一の希望が混じる声。








《全知など望めぬ我等だが……初めてアルマースの種が我等にいるのだ。

今うてる最良の手段をとるしかあるまい》





《左様、最早やるしかあるまい》





《……この空間を形成した私ならば、かの神を奉る最期の私達ならば、この万が一、億が一の可能性を》



《うむ、さすれば我等がどうなろうと構わぬ》













《アニマ・マテリアル保持者を優先する。禁忌事項に接続……代理管理者権限を受諾。

本ユニットでは負荷に耐えられません。

再使用は不可能となりますが……承諾を受諾》



<位階の時空卵(アニマムンディ)を発動>



今ある時空を限定的な空間へと切り離し、何年、何百年、何千年と加速状態された異空間は、ヒイロの新生を見守る。



加速空間で様々な因子が混じり合い、遂に新たな可能性を掴みとった。



そして、最果ての世界の終わりと終わりの始まりは訪れる。




止まった世界が動き始める。








《これで歪な鎖はなくなり、育たない不完全な【器】は解消された》



《リソース不足……高貴な《呪い》までは解けぬ》


《出来うる限りは行った》



《後は弱き魂の錬磨……強制進化を果たせ》



《個体名 ヒイロ。その魂で自らのアルマースのチカラを完成させるのだ》



最期の魔力を凝縮させ、自らの守護者を呼び寄せた。




一方的な語りかけは終わる。


古代樹が目論んだ完成の為に、ヒイロは急速に意識を覚醒させていった。










ヒイロは目を覚ますと、見知らぬ大地に立っていた。

暗黒の空間に枯れ果てた残骸のような大樹が目に入った。



かつて古代樹と呼ばれた超巨大な大樹は、根元からポッキリと折れ、既に化石化している。


まるで何千年もの時が経過した跡のようであった。


既に黄金の神々しい雰囲気などなく、<古代樹の守護蟲>の古代樹は役目を終えているように見える。





この場にあるのは、真っ暗な空間にヒイロただ一人。

しかも全裸の状態だった。


身に付けていた女性用の神殿装着品も、マッドウォーリアの剣もどこにもない。


ただ、黒鞘に納められた天夜叉のみを持っていた。





暫くするとヒイロを目掛けて此処へ向かってくる存在を感知した。


地は割れ砕け、ヒイロを再度飲み込まんと大口を開けたニーズホック・センチピードが姿を表した。




全体を深緑色の甲殻に身を纏った超巨大ムカデ【ニーズホック・センチピード】は、大顎で地面毎そのまま飲み込んだ。


ヒイロは飲み込まれると、いつの間にか黒鞘に納められていた天夜叉を静かに引き抜いた。


天夜叉からチカラの流出が感じ取れた。


今の自分なら応えてくれる。何故か解った。


ヒイロの胸には、以前無かった紋章のような欠片模様が光を放っている。





天夜叉のチカラを解放したヒイロは圧倒的な超スピードで縦横無尽に駆け回り、体内から存分に焼き払う。


全身の体内から襲われる灼熱の苦しみは、ニーズホック・センチピードの超巨大を支える膨大な筋肉群、全神経をズタボロにして深刻なダメージを与えた。


生存本能に従い餌として飲み込んだ筈の小さな異物が、自身にとってこれほど迄の苦痛をもたらした事に驚愕と恐怖を与える。



今も侵入者を殺そうと、ニーズホック・センチピードの体内にある生物を瞬時に腐らせる程に強力な毒素が働いている。


ヒイロの全身は淡い光に包まれ、天夜叉の異能が働いて2重に守られている故に何の影響も及ぼさない。


このままでは死ぬ。

そう判断を下したニーズホック・センチピードは自らの身体に魔力をドンドン溜め込んでいく。


自らの身をを惜しんだ訳ではない。


体内を魔力で過剰に飽和させた状態で核融合に迫る破滅的な大爆発を起こさせ、自分もろとも侵入者であるヒイロを葬ろうとした。



瞬く間に満ちていく魔力。


後少しで極限まで満ちる僅かな時間に、ヒイロは避けられない死を感じ取った。




そして、約束(・・)された試練(・・)は始まる。



ヒイロの胸の紋章に見える欠片模様から光が強さを増し、ニーズホック・センチピードを全て覆った。





異界門の主を任される程の魔物の桁外れの魔力エネルギーがヒイロの新たに形成された【器】の器官に注入され、全身細胞が最大活性化する。


取り込んだ魔力エネルギーは、ヒイロを形成する弱い箇所から死滅していき、それを上回る超再生を繰り返す。


それは生きたままに何度も地獄を味わう苦しみに近い。

ヒイロにとって真の意味での誕生する為に必要な行為だった。


ここまではいつも()り。


大概は最後まで耐えきれず、新生(・・)を果たせないまま終わっていくのだ。



今回(・・)のヒイロは違った。


余すことなくそのエネルギーを受け入れる為に、身体が作り替えられ適応進化していく。



ようやく全てを吸収し終えた時、一瞬目映いばかりの輝きが世界を満たす。






戦い終えたヒイロの胸の中央には光輝く【秘奥の宝珠】を表す《紋章》が存在した。


この《紋章》は幾千幾万と渡り、可能性の世界で求め続けた末に究竟覚醒した結果である。

《アニマ・マテリアル》と呼ばれるヒイロ固有の能力を発現させていた。




力を使いきったヒイロはフラフラになりながらも、半ば感覚的に念じるとニーズホック・センチピードの巨大なドロップ素材は紋章へと吸い込まれる。






再び空間は完全な暗黒となり、ヒイロの身体は自動的に発生した赤い歪みに飲み込まれていく。


異界門から最後に何か声が聞こえた気がしたが、何かは聞き取れなかった。











《最後の試練(しあげ)も無事終了したようだ》



幼き声は最期に小さく、嬉しそうに笑った。


《後は私の全てを……与えよう》


こうしてヒイロに処置を施した古代樹は、跡形もなく粉々に崩れ堕ち、砂となって世界から完全に消滅した。

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