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異界門  作者: タロー


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壊れ剣マニア


天夜叉の黒鞘に仕舞った銅のショートソードは、翌日新品同様に見事に修復されていた。


この黒鞘の異能の検証の為に、赤級から黄級の挑戦者が良く通う武具のお店で、捨て値で販売していた中古の鋼剣を買った。


本来ならば金貨10枚の価値があったが、欠けおち、剣としてギリギリ使える範囲という評価だった為、金貨2枚の値段だった。






検証してみて解ったのだが、剣によっては黒鞘が修復する迄の時間が違う事が判明した。


殆ど使いモノにならない程のダメージを受けた銅のショートソードは、丸1日で修復されたが、店で買った鋼剣は1日では直らず、剣身の周囲が整えられていただけだった。

この鋼剣が新品同様になるまで、実に3日を要した。



恐らく材質や破損の状態で直る時間が変わる。

と、詳しい情報や知識が出せない私にはそう推測するしかなかった。







パーティーを組みいつでも異界門に行く挑戦者には、装備品の点検やメンテナンスは命を預ける大事な事だ。

剣が壊れた時に稼げない事は致命的なロスに繋がる。

ましてやパーティーに迷惑をかける事に繋がり、剣の代物にもよるが、直すよりも買う方が早い場合はそうするだろう。




しかし、ヒイロにとってソレは当てはまらない。


第一にパーティーを組まないソロであるため、時間に拘束されない。

また、虫専門の異界門でなくては挑戦しない為、時間さえあれば修復可能ならば、ある意味時間が有り余っているヒイロには持ってこいだ。




暫くはこうして掘り出し物を探すのに、店巡りするのも悪くない。

もしかしたらどこかのお店に中古で壊れた剣の中に異能が付与されたモノがあっても……あるかも知れない。


異能付きの武器や防具は魔力を帯びている事が殆どだが、鑑定でも使わない限り見抜くのは困難だ。

武具店に目利きの眼は鍛えていても、鑑定のスキルを持つ従業員は恐らくいない。


そのスキルがあれば神殿で高給で雇われているだろうからだ。

例外があるとすれば、店主自身が鑑定のスキル持ちの可能性がある事だろうが、そんな人物が店をしていれば噂にならない筈がない。


今の所そんな噂は聞かない。


かなり低い確率だが、異能付きがあればお買い得と思って廻ってみよう。




本当を言えばニーズホック商会にも、高確率で壊れた異能付の剣がありそうで行って見たいのだが、あの孫娘との最悪な出会いから行く気になれなかった。






実は【天夜叉】の売却を断った報復処置としてメイアは誹謗中傷を流して、神殿都市でも有名な武器屋や防具屋、腕の良い鍛治士がいる店の立ち入りを禁止するように圧力をかけていた。

挑戦者としてヒイロの存在を抹消しようと動いていた。

ニーズホック商会にも、ヒイロには何も売らないようにする事を従業員に徹底させていた為、行っても徒労に終わるだけだったのだ。







ヒイロは有名な武具を扱っている店ではなく、中古屋さんや小さな個人店を回っていたので全く関係なかった。


こうして、新しい異界門<古代樹の守護蟲>と呼ばれる虫型の魔物と鳥型の魔物等、複数の魔物が混合した特殊型の異界門の存在を全く知らずに過ごしていた。





最近ではニーズホック商会の会長が<古代樹の守護蟲>攻略の為に膨大な報酬を用意し、有能な挑戦者を集めていると聞く。


そんな世間から取り残されるようにヒイロはマイペースに暮らしていた。






それからまた半月近くが経過した。


ヒイロの掘り出し物巡りの苦労?の介あって、修復した中に1本、異能が付与された剣が混じっていた。


売ってくれた店の主人がいつから置いてあるのか忘れていた位、昔から在るらしい。


ただ売りにきた人間は覚えているそうで、酷い怪我の状態で挑戦者を引退するから売りに来たと言っていたそうだ。


何と闘ったら剣がこうなのか解らんと言わしめた程、その剣の半身は砕けていた。

普通なら買い取りもしないのだが、二束三文でも良いと言われて買い取ったそうだ。


何度か鋳造しようと思ったが、何故かそんな気になれずに中古の武器籠に放り込んであったそうだ。


ヒイロは何本か壊れた剣を、各銀貨1枚でその店から買い取った。

その半壊した剣を最後に黒鞘へ入れて置くと、一番最長期間の半月で完全に修復が終わっていた。


見事な剣の出来映えに只の剣では無いと感じ、一度神殿で<物品鑑定>を頼んだ。







この剣の鑑定はこうだった。





【マッドウォーリアの剣】 C等級 長剣



武の異界門のマッドウォーリアのレアドロップする剣。低位異能の<魔害>を備えていた。

魔銀を少量加えて鍛え直す事で完成した剣は、新しく異能を宿した。



体外・体内の魔力を乱し、阻害させる効果を発揮する<魔力阻害>









<魔害>とは、魔力を僅かに散らすだけの効果しかない低位に分類される異能だ。

それでも魔物に対しては気を逸らさせて集中出来なくしたり、僅かに魔力を散らせた部分の防御力低下が見込める為、全くの無駄では無い。



<魔力阻害>とはそれが幾分使いやすくなり、威力が増加しているんだろう。



この異能の更に上位互換に<魔力破壊>や<魔力途絶>等があるとされている。

魔物の殆どは魔力を宿しているので、充分役に立つ有能な異能だった。




少し重いがヒイロでも片手で持てるし、威力を出したい時は両手持も出来るので、予備武器としてナイフを外して、反対側の腰ベルトに差し込んでいる。



剣の持ち手の革がボロボロだったので新しい革で巻き直して貰うと、新品同様の剣に生まれ変わる。





因みに他の修復した剣は、軒並み神殿へ少し安いが買い取って貰っていた。

その差額で儲け、新しく壊れた剣を直して売る転売のサイクルの中で、店からヒイロは謎美人の<壊れ剣マニア>の称号を付けられていた。



壊れた剣ばかりを買う緋色の髪の美人が来れば店が儲かる……と、あとの時代で神殿都市伝説の1つとして語り継がれていく。







解る人には検討の付くようで、修復した剣を売る為に神殿に寄った際にイッサー神殿長から呼び出しを受けた。



神殿長室へ入ると、たまたま来ていたデュークもいて大いにからかわれて笑われた。




「クックック、ヒイロのやる事は何やっても面白れーな」


「良いじゃないですか、謎美人」


「そこは<壊れ剣マニア>の方を気にするんじゃないのかね?」


そんな感じで軽口を叩いていると、イッサー神殿長が区切りとして、呼び出した用件を伝える。


「君達は<古代樹の守護蟲>の攻略の話を知っているかね?

後10日程で固定できなくなる異界門さ」


「忙しかったので、全く知りません」



「あーー、あれね。

俺にもニーズホック会長さんから話があったんだけどな。ちょっと都合が合わなくて断ったんだぜ」


ヒイロとデュークは二者一様の返答を返した。




この異界門はニーズホック商会の初代会長が攻略した異界門だそうで、是非とも攻略したいと挑戦者を集めて異界門の主の討伐に乗り出した。



全面的なバックアップと膨大な報酬でも異名を持つトップの挑戦者には全員断られたそうだが、紫級(パープル)緑級(グリーン)が中心となって集まり、黄級(イエロー)が大部分を占めた討伐隊は異界門の主迄たどり着き、果敢に挑んだ。



そして殆どの挑戦者は地上へ帰って来れなかった。

生き残った者も支給された【帰還門】で何とか逃げ延びた者が5名程で、恐怖で精神的に病んだ者が多く、病院で治療を受けている最中だ。


その彼等から何とか聞き出し情報を総合すると、驚くべき事に1階自体が最下層となっているそうだ。

途方もなく広いフィールドから遠目からでも解る、中央の巨大な樹。

そこから魔物が涌き出るように進軍してきた。


主に地を這う蟲型の魔物に、飛行して攻撃を仕掛けてくる鳥型の魔物。

ネズミを大きくしたラージマウスなど、様々な魔物が混在している特殊なフィールドだ。


異界門の主はニーズホックの名の付くと思わしき超巨大なムカデ。

大きな実がなっている古代樹に、そいつは長い身体を巻き付いているそうだ。

そこから離れず、古代樹から小型の眷属が何匹も降りてきて戦わせていたのだと言う。

小型の眷属は毒を放った事から、恐らくは毒に対して何らかの対策は必要。


そして戦いも中盤くらいで死んだ挑戦者の死体(眷属を含む)を喰らう為だけに古代樹から降りてきて、生き残りにも猛威を震ったそうだ。




ここまでの情報で、再募集には今の所誰も名乗りを上げていないそうだ。



「ヒイロくんは知らなかったのか。ここ最近有名な話何だかだがね」


「ん、多分ニーズホック商会の話題絡みは無意識的に避けていたと思うので、余計に知らないと思います」


「おや、会長と何かあったのかね?

有望な挑戦者だから宜しくお願いする旨を伝えておいたんだけど」


「会長さんはお会いしましたよ。問題があるとすればそこの孫娘ですね」


と、ヒイロはニーズホック商会で起こった出来事を説明すると、デュークは怒りの表情でイッサー神殿長は額に手を当てていた。


「なるほどね、あのメイア嬢のことか。

誰も諌める者がいないから、あのやらかし癖は治ってないようだね」


それに……と続ける。


「こちらも迂闊だったよ。

まさか東神殿の個人情報が筒抜けだったとは……恐らく職員にニーズホック商会の手の者が紛れているね」


精査せねば……と、イッサー神殿長が溜め息を吐く。


それとは裏腹に鼻息の荒いデュークは怒っていた。


「あんの小娘……会長には悪いが、最初の攻略要請を断って良かったぜ」


「その会長から、是非に<古代樹の守護蟲>の攻略に手を貸して欲しいと先程要請されてね。

強制ではないから断っていたんだが、神殿都市に1番大きな額の寄付金を出しているニーズホック商会の会長の懇願を……これ以上は断りにくい」


やれやれと眼鏡の位置を直しながら、イッサー神殿長の話は続く。


「まぁ、参加するメンバーに【帰還門】の支給と高価なポーションの支給、そしてニーズホック商会の品ならばどれか1つ持ち出しても構わないそうだ。

攻略時はその品がボーナス報酬として付けて貰える。

会長が望むのは、ニーズホックの名の付く主の素材だけださ。

青い宝箱は討伐チームの者にして良いそうだ。

攻略合同チームを発足して、そこにヒイロくんとデュークを誘う気でいたんだ」


どうする?と問いかけてくる。



「他のメンバーを尋ねても良いですか?」


後は私の役割についても。


「ちょっとまて、ヒイロは受ける気なのか」


「ええ。ニーズホック商会の孫娘と対応には思う所はありますが、今回の件は特に支障ありません」


(まあ、会長さんには悪いと思いますが2度と買い物や依頼を受けようと思いませんし)


その内心を洞察力の強いイッサー神殿長が見逃さない。

ヒイロは神殿都市に2人としかいないギフト・ホルダーなのだ。


しかも、虫の魔物に関して結果は既に出している。

単独で異界門の主を討伐出来る可能性のある戦力を、そんな理由で失う訳にはいない。


ニーズホック商会の孫娘も精査の対象に上げると決めた。


そんな事をおくびにも出さずに、イッサーは答える。


「東神殿側からは私と……もう1人大神殿から剣士が赴く予定だ」


「まさか若が前線に立つのか!?

それに大神殿から赴いてくる剣士なら相当な実力だろ、そりゃあ偉い戦力だぜ」


「と言っても【帰還門】もあるし、威力偵察くらいだがね。

一応、神殿側の協力している姿勢を見せておかなければならないだろうしね」


「さて、ヒイロくんにはその力を見込んで超巨大ムカデ……一応、コードネームとしてニーズホック・センチピードと名付け、その眷属を担当して貰おうと思う。

デュークもその琥珀弓で空から来る敵の対処や、場合によって遊撃役も行って貰う予定だよ。

2人とも、どうかね?」




悩んだ先に答えのはデュークだった。


「……俺は若が行くと決めた以上、着いていくつもりだぜ。そんな不義理はしないつもりだし、コイツも行くなら尚更だな」


「えっ、まだ行くとは決めてませんよ」


「悩むって事は、行くって事だろ。さっさと決めて、ニーズホック商会の品でも餞別として貰いに行こうぜ」


「……そうですね。餞別としてなら精々高い品を選びましょうか」


「私と大神殿から参加する剣士の分はいらないから、選んで来るといい」


そう言ってヒイロの参戦が決まった。



しかし、そこからまたひと悶着があるのだった。

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