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異界門  作者: タロー


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12/28

デュークの過去



デュークさんは今から10年前にパーティーを組んで異界門を攻略していたそうだ。


これからヒイロに見てもらう剣は、その時に手に入れたモノらしい。


神殿長が驚いた表情を浮かべていた事も気になる。

どのような剣なのだろうか?





神殿の保管庫に仕舞われてある剣を、神殿長が専用の部屋へと持ってきて貰う間、デュークさんが自分の過去を話してくれた。





10年前。神殿都市でも新進気鋭の挑戦者達が集まって作られたパーティーがあった。


特殊な歩法を使う一族で、剣一本でのし上がってきたパーティーの前衛 剣士ラドルフ。


見る者を魅了する槍術はパーティー随一のオールラウンダー 女槍士マーベット。


天高くパーティーを守護する心優しき力自慢 大盾士ミュンヘン。


マッピングから罠解除まで敵の存在を見逃さない 斥候盗賊士ヒューリ。


ここに、神殿都市一の射手として呼び名が高かったのデュークさんが入って結成されたパーティーは、瞬く間にその名を知られていくようになった。








そろそろ緑級(グリーン)になるだろうと自他共に実力が付いてきたある日、知り合いのパーティーから武系統の異界門<天夜鬼の試練>の合同攻略の話が持ち掛けられた。



鬼の名の付く異界門の通り、オーガと呼ばれる力自慢の亜人型の魔物が武装して待ち構えている。


提示された報酬も50名近く参加する挑戦者1人当たり最低金貨20枚。

成功報酬では更に上乗せされる……と、非常に魅力的な報酬額だった。


彼等は未だ異界門の主と交戦した事が無かったメンバーは、その話を受ける事にした。


当日、デュークさん達を加えた総勢48名(内3名は荷物係)は異界門<天夜鬼の試練>へ向かった。



規格外の強さを持つとはこの事で、最下層の主は、<夜叉(ヤクシャ)>と呼ばれる鬼種の魔物の中でも最上位の格を持っていた。


2本の鋭い角が頭部から生え、青い肌には入墨のような幾何学的な紋様が刻まれている。

首には黄金の首飾り、絹のような服を防具として纏い、手足には金属の輪っかが嵌められていた。


最初の一人が斬りかかる。手にするのは鍛えられた良質の鋼の直剣。

夜叉(ヤクシャ)はそれを避けもせずに、吸い込まれるように剣を頭で受け止めた。


仕留めた。


ニヤッとした挑戦者の顔が歪んだ。


ゴムのような弾力の塊に剣を振り下ろした感覚が残り、驚愕の表情のまま夜叉(ヤクシャ)に唐竹割りにされる。

何人か同じ目にあって倒され、異能持ちの武器使いが攻撃を当てた時、ようやく一筋の切り傷が付いた。



この事により、最低でも異能が付与された武器でないと傷付ける事は出来ないと判断する。


即座に撤退の号令がかけられる。


しかし、とんでもない怪力から繰り出される攻撃と、有り得ない程の超速度で夜叉(ヤクシャ)は暴れまわった。


二刀流の夜叉(ヤクシャ)が通り過ぎると、瞬く間に人が倒れていった。

夜叉(ヤクシャ)は準備運動をするように、まるで遊び半分で剣技のみしか使わなかったのだった。




最初の討伐の際に30人以上が殺された中に、パーティーメンバーである大盾士のミュンヘンと斥候のヒューリも含まれている。


マーベットも残ろうとしたが、友に頼まれたラドルフとデュークは暴れる彼女を無理矢理連れ出した。


この2人が深手を負い、助からない命と覚悟を決めて命がけで時間を稼いでくれた。


そのお陰でデューク達の逃げ出す時間をくれたのだった。



撤退時、夜叉(ヤクシャ)は追ってこなかった。

また楽しませろ……と、言わんばかりの表情を残して眺めていた。











2度目の討伐隊のメンバーに誘われた時、夜叉(ヤクシャ)と戦う恐ろしさよりも、仲間を殺された復讐が勝った。


参加者全員が、各々何かしらの異能の付与された武具や、コーティングされた装備に身を包んだ。


ラドルフは剣を新調し、<魔力阻害>の異能が付与された武器を用意した。


マーベットは<斬撃強化>の槍を、そして命を削る劇薬を用意した。

命が縮まる代わりに強い高揚感と筋力、反応速度を引き出す薬だった。


今回は紫級(パープル)の挑戦者チームも、異界門の主のドロップを貰う事を報酬に参加してくれた。


これで……下準備は整った。


再度、夜叉(ヤクシャ)との戦いは最初の時に比べて一方的では無くなったが、苦しい戦いに違いない。


今度は刺し違えるようにマーベットが死んだ。

かの槍は夜叉(ヤクシャ)の鋭角を一本斬り落とし、恋人であったミュンヘンの仇をとるため一矢報いた。


鋭角を落とされた夜叉(ヤクシャ)は目に見えて身体能力を落とした。

ここからが絶好の攻め時だった。






2度目の討伐隊で逃げる挑戦者はいなかった。

背中を見せれば死ぬ状況もあったが、もしかしたら勝てる機会が訪れたと判断した者が多かったからだ。

命を捨てる気で挑み、死ぬ。その度に傷を積み重ねるように負わせていく。


デュークも死ぬつもりで参戦していたと言う。


魔力を阻害させる鏃な矢を有るだけ用意し、無くなれば普通の矢に錬金術士の薬を薬を塗りつけて対応した。

可能な限り矢を放ち、偶然にも片眼を潰した後は牽制に徹底し貢献した。




前衛が死ねば自分も即座に殺されると解っていた。




遂に最期の時がおとずれる。


止めを刺したのはラドルフだった。


脚の筋肉が断裂しても歩法を駆使して致死の攻撃を掻い潜り、2本目の鋭角を落とす。

新調された剣は既に欠け、ガタガタだったが気力を振り絞り、返す剣で夜叉(ヤクシャ)の首を斬り落とした。

そして役目を終えた<魔力阻害>の剣は半分から上が砕け散った。


主を倒した時に、生き残った者は僅か5人。


デュークは限界を超えて倒れ付し、指からは爪が剥がれて血が流れ、全ての力が入らなかった。


ラドルフも攻撃をかわし損ね、剣が僅かにかすった頭部から左側は焼け爛れ、耳は聞こえず目は開かなくなっていた。


誰もが満身創痍で満足に動け無かった。


夜叉(ヤクシャ)の形をした光の粒子を呆けたように眺め、やがて青い宝箱が現れた。


1番近くにいたラドルフがゆっくりとした手付きで宝箱を開けた。

それは、右手の剣身が半分砕けた剣は余りにずっと強く握りしめていた為か手から離れず、空いた左手と右の拳で開いていたからだ。


その中には夜叉(ヤクシャ)が右手に持った武器が入っていた。


黒い鞘を抜くと、赤い剣身が浮かび上がった。

その剣を手にしたラドルフは、暫く俯いた。

その後生き残った仲間に襲い掛かる。


あの夜叉(ヤクシャ)が憑依したかのような二刀流だった。







満身創痍だったメンバーは何の抵抗出来ずに死んでいった。



裏切り者……とデュークは叫び、ラドルフの剣によって片脚を斬り落とされる。


半身が砕けた剣でも構わず、利き手である右手から繰り出された一撃は、脚の切り口からは血が一滴も零れず、人と武器とが融合したかのような見事な腕前だった。


胸に剣が差し込まれた所でデュークは意識を失った。



その後、奇跡的に意識を取り戻したデュークは、死んだ仲間の元まで這いずり、死体から体力回復ポーションを探って使用した。

許す事など出来ない……その憤怒が激痛をこらえ、帰還を可能とさせたのだった。


<異界門の間>で瀕死のデュークを偶然にも最初に発見したのは、当時副神殿長を勤めていたイッサーだった。


保護し、事情を知ったイッサーはデュークを秘密裏に入院させた。

それから裏付け捜査を行い、事実だと判明した後にラドルフは秘密裏に逮捕された。





デュークが生き残れたのは、ラドルフも満身創痍だった事と、殺傷能力が著しく欠けた剣だったからだと思われる。


では何故、異界門の主産の剣を使わなかったかは判明してない。


話す前に、夜叉殺しの英雄から一転、裏切り者となった彼は財産を没収されて処刑されたからだ。






その時の異界門の主産のドロップ素材と、青い宝箱の中身であった剣の持ち主は唯一の生き残りとなったデュークに権利が与えられた。


復讐も終わり燃え尽きたようになっていたデュークは、異界門の主素材である<ヤクシャの鋭角>を売り払い、その大金で神殿都市で<再生>ポーションを買った。

使用した時は脚の付け根から生えてくるようにニョキニョキと植物のように再生し、無事脚が揃う。


異界門の主産の類い稀な剣は使う気にも見る気にも売る気にもなれず……神殿にずっと預かって貰っていた。

裏切られたショックと恐怖のトラウマで異界門に関われない程、眠れぬ夜を過ごした。


再生されたばかりの両脚と精神のリハビリの為にも、イッサーはデュークの身柄を預かって、実家の道場の弓部門の指南役に勧誘した。

先ずは一旦、異界門から離すことが大切だと思ったからだ。


その介あって少しずつ回復していき、人を教える立場に立つことで自信も取り戻していったと言う。


それから10年の月日は、様々な人との交流を得てデュークを異界門に挑戦させるまで、回復させていた。


倉庫に預けてあった当時の一番良い素材から弓を作って貰い、愛用しているが……より性能の良い弓を心の底から願っていた。


あの時を後悔しない。


力があればもしかしたら強硬に及ぶ仲間(ラドルフ)を止めていられたかも知れない……とずっと考えていたからだった。



その想いは今も変わっていない。







思ったよりも重い過去を話してくれた本人(デューク)は、スッキリとした表情を浮かべていた。


「暗い話ですまねぇな。でもヒイロには知っておいて欲しかったんだ」


「お話は解りました。でも良いんですか?そんな大事な剣を見せてもらっても」


「大事な剣……?そうか、思いもしなかったぜ」



「大事でしょう?本当に嫌だったら手元に絶対に残しませんから」


人から言われて初めて気付くこともある。


事情を知っている者は敢えてこの話題を避けてくれていたし、気を使って貰っていた。


ヒイロに言われた事で残っていた胸のしこりがすぅっと消えた気がした。


(10年か……長かったな。ラドルフよ、何でお前はあんな真似をしたんだ?)



消えたしこりを探すように胸に手を当てたデュークは、眼を瞑るとニカッと笑顔を浮かべた。




(わかんねぇ。いくら考えてもわかんねぇ……が考え続けてりゃ、いつか解んだろ)




全てを前向きに捉え、向き合えるだけの時間を過ごしてきた。


そして、知らずに見守っていてくれていた神殿長や知り合いに感謝する。




「大事な剣だからこそ……だぜヒイロ。

見てみて良かったら使ってくんねぇかな?」



今ならそう言える自分が初めて誇らしいと感じたデュークだった。


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