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異界門  作者: タロー
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序章



「ここは ……どこ?」


かすれた声が薄暗い場所に響く。


目を凝らしても良く見えない。

暫く目を開いていれば暗闇にも慣れてくるだろう。


私の名前……は?あれ、確か、私は……?


何でこんなところにいる?


目の前の光景は暗く何も見えない。


何故、こんな所にいるんだろう。考えても考えても、答えは出ない。


何かを思い出そうとすると、ズキズキと酷く頭が痛む。


思わず痛みの原因である頭に手をやると、べったりと生暖かいモノが手についた。


……血だった。それもまだ出血は止まらない。


何か拭くものは……血に濡れた左手で必死に探すと、何かグニャリとしたモノを掴んだ。


「ひっ……」


その感触の気持ち悪さに思わず投げ捨てると、ベチャリと音を立てた。


ここから逃げ出さなければ……恐怖が本能を刺激して、良く見えない場所を歩き始めた。

ゴツゴツとした硬質な地面を躓きそうになりながらも何とか歩いていく。


出口はまだ見えない。







どれだけ歩いただろうか。


ようやく暗闇に目が慣れてきた。


解った事がある。ここはどうやら洞窟のようだ。

そして先程のグニャリとした感触の正体も。


あれはレッサースライムと呼ばれる下級の魔物(・・)だった。

戦闘能力が極めて低い。というよりか無いに等しい魔物。


そのため、小動物や植物。

それらの死体を獲物として体内に取り込む事で消化し栄養素に代えて生息している……筈だ。


魔物……?基本的に人間とは違い、大小の魔力を宿している生体系の生き物である。


そういう知識に関しては何となく解るようだ。


それは、世界の歪みから発生する……の、……?少なくとも私の仲間じゃない。


名も目的も解らない。



魔物と呼ばれる存在や言葉など解るが、それに付随する出来事や国、出身などは何故かハッキリと記憶が思い出せない。




そうそう、私の事について1つまた解った事がある。


まず頭の出血を止めるためにまさぐれば、身体に布と革で作られたレザーアーマーと呼ばれる種類の軽装鎧を装備していた。


しかし、それは戦いの末かボロボロであり、お陰様で布を引きちぎるのに苦労はしなかった。


そしてベルトには手の平サイズの小さなナイフが差し込んであった。

まさかこのような場所に武器もなく乗り込んだ訳ではあるまい。


何処かで落としたか、無くしたか……したのだろうと思われる。




レッサースライム以外にも魔物は生息している筈だ。

手に負えない魔物が出る前に、手元に武器がないのは不安でしかない。


どこかで武器を調達したい。


そして頭の怪我以外、特に外傷や、身体に痛みなどは見当たらない。



遥か先に見えた明かりを目指し、私はこの場所を更に歩き続けていく。













遥か先に見えた明かりの場所へと辿り着いた。

そこは半球状に広がった空間であり、発光する苔が天井を明るく照らしていた小さな湖が見えた。


湖は光に照らされエメラルドグリーン一色で美しい景色が広がっている。

水影には魚と思わしき影が見え、湖の縁を取り囲むように、細く白い道が続いていた。


警戒しながらエメラルドグリーンに輝く湖に近づく。浅瀬まで足につかるも、今のところ何も反応がない。


ゆっくりと、静かに手を伸ばし、湖の水を口に含んだ。


口の中でほんのり甘く芳醇な味わいが広がっていく。

そこで初めて激しい口渇を覚え、夢中で水を飲んだ。

手ではすくう程度では飽きたらず、遂には顔を湖に突っ込んで飲んだ。








ようやく満足した私は道へと座り込む。


未知の場所にて危険な真似をした自覚はある。

水を飲む間、私が襲われなかったのは、ただ運が良かっただけだ。



そして、また私に関する情報が増えた。


湖の水面からぼんやりとだが私が写っていた。



まず目に入る緋色に染まった髪は肩より上のボブカット。

ぱっちりと開いた二重瞼からは髪と同じ色の緋色の瞳。

少しふっくらとした唇と、芸術のように整えられた鼻梁。

良く言えばスラッとして中性的なでスタイリッシュな身体付き。

身長は一般女性の標準はある……と思う。


顔のパーツ、パーツが奇跡的に融合して全体的なバランスを保っていた。






泥や血で薄汚れていても、どうやら女であるようだ……身体をまさぐった時から僅かな胸の膨らみが有ることから、何となく気が付いてはいた。



しかし、記憶がない私にとって自らの姿は違和感でしかない。




縁で少し休憩が出来た所で、この白く細い道が奥まで続いている事に気付く。


丁度、向こう側に金属で出来た扉が見えた。

人工物である扉が向こうにあるのなら、むしろ行くべき。


湖からの襲撃を気にしながらも、私はゆっくりと扉の前まで来た。

近づいていった時から思ったのだが、目の前にして確信する。


私の身長の2倍以上もある金属製の大扉は、錆びが目立っている。

取っ手はあるが鍵穴は無い。


ここまで来て開かなかったどうしよう……?


そんな不安も関係なく大扉は手に触れた途端、キギ、ギ……と大きな音を立てて開いて行った。


中は真っ暗であり、何も見えない。


罠……の危険性も充分考えられるが、ここまで来た以上引き返せない。





覚悟を持って闇の中へと踏み出すと、大扉はまた音を奏でながら閉まっていった。

ひっそり始めました。


ひっそり文章直しました


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