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短編三題噺作品集

作者: Kalka

お題:愛情、決意、アクシデント!


男「腹、へったなぁ……」

夜更け。無人のモノレールの駅に二つの人影があった。

女「もう、誰のせいよぉ」

女はしゃがみ込んで、地面に目を凝らす。

女「アンタがお財布落とさなければ、今頃、レストランで食事でも出来てたのに」

男「そいつぁ無理だなぁ、財布、2千円しかはいってないし」

女「中学生レベルじゃないのっ」

女「ほら、いいからアンタもさがしてよ、そもそもあんたの財布でしょっ?」

男「へーい」

男は渋々、といった様子でしゃがみ込む。

男「なぁ、財布の前に、部屋帰って飯にしねぇ?」

女「冷蔵庫何もないのっ。しかも運悪く買い置きのカップ麺も切れてるし」

男「まじかぁ」

女「まあ最後の一個食べたら、ホワイトボードに書くようにって何度言っても聞いてくれない人がいるから、こうなるんだけどねっ」

男「あー……わるかったわるかった」

女「ごめんなさい、でしょ?」

男「はいはい、ごめんなさーい」

女「……アンタ謝る気ないでしょ?」

男「20%くらいはあるぜ?」

女「ほんとあんたって人は……」

やれやれ、と頭を抱える。

女「いい? あのお財布の中の2千円が今月あと3日生き残るための貴重な資金なの」

男「……ってことは?」

女「見つからなかったら、明日から朝昼晩ご飯抜きよ、私もあんたも」

男「まじかぁ、それはつらいぜ。せめて、こう、節約手作り料理とかできねぇ?」

女「節約してもお金がないんじゃ材料が買えないでしょ」

男「それもそうか……」

男「おっし、わかった。今度から、俺財布落とさないように気を付ける」

女「そんな当たり前のことまるで重大な決心するみたいに言ってもかっこつかないわよ」

男「そっかぁ」

男「じゃあともかく探すしかないかぁ」

きょろきょろとあたりを見回す。

終電はとうに過ぎ、月明りだけの照らすホームは薄暗い。

男「なあ、ライト付けようぜ? これじゃあ見えねぇって」

女「そんなことしたら、こっそりホームに忍び込んでるのばれちゃうでしょ?」

男「でもよぉ、この暗さじゃ財布もわかんねぇって。真っ白ならまだしも、財布紺だぜ、紺」

女「まぁ、財布が見つからなければ元も子もないものね……待ってて」

そういって女は小ぶりなポシェットに手を入れる。

女「スマホ、スマホ……っと、あれ……?」

男「? どうかしたか?」

女がすっと手を引き出すと、その手には紺色の財布が握られていた。

女「あ、あれ……?」

女「あー、そうだわ、昨日コンビニに行く時にアンタから受け取ってそれでそのまま……」

男「…おい」

女「い、いやー、すっかり忘れてたわ!とにかく財布があってよかったー!」

男「……おいって」

女「さ、さあ帰りましょ? 今日は私が愛情たっぷりのハンバーグを作ってあげるわ! ハンバーグ好きでしょ?」

男「……」

女「……」

男「ごめんなさい、は?」

女「……財布落としたって疑っちゃって、ごめんなさいぃぃぃっ」

こうして二人は無事給料前の3日間を乗り切ることができたとさ。

めでたしめでたし。

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