第4話 「うわぁ⋯⋯きれい」
この世界は魔法が全てを支配する。
火、水、風、土、光、闇の六つの魔法があり、それを操り日夜モンスターと戦う者を魔法師と呼ぶ。
「安いよ安いよ〜! 今なら銅貨三十枚だ!」
「俺たちとパーティー組まないか?」
「あっはは。待ってー!」
ここは草原に位置する初心者魔法師が集まる町アドラステア。
大きな通路が、町の噴水を中心に十字を切るような形で広がっている。
⋯⋯と、お姉さんは言っていた。
あの後、ぶっちゃけると、この世界のことを色々と細かく教えてもらったのです。
私は驚きを通り越すと、感情が一周回って逆に冷静になるといういらない情報も知った。
そして、おまけに一銭も持っていない私にこの世界の通貨だろうか、銀貨を五枚も頂いてしまった。
果たしてどれくらいの価値があるかは分からない。
町への道のりを教えてもらった後、もしよかったら付いて行こうかと気遣ってもらったが、流石にそこまではして頂くわけはいかないのでやんわりとお断りした。
『ブレイズ』と唱えた魔法は火魔法の中でも上級クラスだと言っていたので、あのお姉さんは凄腕の魔法師だったのだろう。
そんなことを呑気に考えつつ、私はアドラステアの門をくぐる。
「うわぁ⋯⋯きれい」
辺りはすっかり暗くなってしまったが、街灯や住宅から溢れる光が街並みを明るく照らしている。
私はお姉さんに教えてもらったとある場所へ向かう。
この世界で魔法師として生きるためには、"クエスト"と呼ばれる依頼を達成しお金を稼がなければならない。
魔法師になるためには、まず適性を測り、登録を行わなければいけないんだとか。
そのためには、魔法師の仕事を主に扱う"ギルド"という建物に行くのがいいそうだ。
実を言うと、私は今すぐにでも飛び出してギルドに行きたい。
この世界では魔法師として生きる以外に、ただ普通に働くという手もある。
だが、こんな私を雇ってくれる場所はそう多くないだろう。
それに、異世界であるという高揚感が私を魔法師へと推し進めた。
だって異世界だよ?
魔法が使えるんだよ?
「でも、外はもう暗いし、明日にしようかな」
この世界に降り立ってから時間はそんなに経っていないはずだが、いろんなことがあったなぁ。
疲れを癒すためにも、宿屋にでも行こうか。
「お部屋は二百三番となります。ごゆっくりどうぞ」
無愛想な店員に軽く会釈し、宿屋の一室の鍵を握りながら一晩をそこで過ごすことにした。