第1話 「これ⋯⋯なんだろう」
私────旗見雫は某都会の中学校に通う、いたって普通の女の子だ。
母の遺伝ということもあり、生まれつき髪は銀色。
顔立ちも比較的整っていたということもあったのだろうか、私は周囲の中でも特に異彩を放ち、目立つことが多かった。
それ故に同性からは嫉妬の対象として見られ、理不尽にもいじめられていた。
最近はいじめなどの悪戯はやや収まりつつあるのだが、周囲から孤立させられていた私は学校では一人ぼっちだ。
こんな日常を日々普通だと感じ始めた私は、既に普通ではないのかもしれない。
「はぁ⋯⋯いつからこうなっちゃったんだろう」
私のような年頃の女の子は、放課後に学校に残っておしゃべりをしたり、帰りに寄り道をしたりなどは当たり前であろう。
如何にせよ私には友達がいないので分かりませんが。
「ただいま。って、誰もいないか」
玄関の扉をいつもの如く無造作に開けたとき、両親は今日から海外出張でしばらくいないと言っていたことを思い出した。
「うーん。特に出掛ける用事も無いし、何しようかなぁ⋯⋯。あっ、そうだ。部屋の片付けしなきゃいけないんだった」
物を散らかしがちで面倒くさがりな私は、部屋の中がすぐに要塞と化すのだ。
私ははぁ、とため息にも似た声を漏らしつつも早速部屋に散らかった本や服などを片付け始めた。
しかし、その中に奇妙な物を発見した。
「これ⋯⋯なんだろう」
表面がが真っ黒の箱が一つ置かれていた。
こんな気色悪いもの、私の物ではない。
きっと家族の誰かが私の部屋に置き忘れたのだろう。
とりあえず作業に戻ろう、そう思ったのだが。
「⋯⋯⋯⋯」
どうして。
なぜか目が離せない。
それどころか目を逸らそうとしても、私の中の本能がこの箱から背くことを拒んでいる。
そして私は興味本位でその箱を手に取ってしまった。
一体、その中身に何を期待してしまったのだろうか。
好奇心が心を揺り動かし箱を開けた。その瞬間、
「──えぇっ? ちょ、ちょっ⋯⋯──────」
部屋全体が白い光に照らされ、私を覆いこんだ。