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9,最終試験

 試験は最終試験を残し俺は特待生入りを果たした。

 合格発表は明日なので今日は宿で泊まる予定だ。

 まぁ俺にとっては意味のないものになってしまったが、他のやつはまだ最後の試験がある。

 俺は暇になったので見にいくことにした。


 最後の試験は案の定模擬戦だ。

 最低限の戦闘力がないと実習で辛い目にあうだけらしい。

 模擬戦はこの学校の訓練場で行う。

 この訓練場は魔力結界で観客は安全に見れるらしい。


 実際に着くと訓練場は闘技場みたいだった。

 真ん中に戦う場所があり、一階上がったところから椅子に座り試合を見るような感じだ。

 席に座ってみていると二人一組を作っているみたいだ。

 皆殺気立っている。

 その中でキョロキョロしてるやつと目があった。

 どっかで見覚えがあるような…


「おい!お前!お前落ちたのか?落ちたからそこでみてるんだろう?恥ずかしいな、あんだけ調子に乗っておいて落ちるなんて」


 試験の前の時にあったやつだ。

 にしてもあいつ何言ってんだ?周りを見て見ると確かに不合格とか言われてた連中もいた。

 そういうことか。

 俺がここにいたから落ちたと勘違いされたみたいだ。


「何を言ってるんだ。天野くんは特待生合格だ。あまり変なこと言うんじゃないぞ」


 よかった先生が注意してくれたみたいだ。

 さすがに不合格呼ばわりはひどいからな。


「はっ、何を言ってるんですか先生。そいつが特待生?冗談にしちゃバレバレですよ」


 こいつ、認めたくないだけだ。

 まぁあんだけ調子に乗っておいて相手が特待生だったら信じたくはないわな。


「貴様調子にのるなよ。口の使い方を気をつけろ。それに冗談なんかじゃない。天野くんの特待生入りは校長先生自ら認めたことだ。それ以上軽口を叩くなら落とすぞ」


「こ、校長先生だと?あの校長自らって…」


 ほう?あの校長そんなにすごい人なのか?

 確かに魔力は凄そうだったけど。


「いいからお前は早く戻って二人組を作るんだ」


「わ、わかりました」


 そう言うとあいつは去っていった。

 そう言えばあいつ名前なんだっけ?


「すまないね。あの生徒は叱っておくから許してやってくれ」


「いえ、気にしてませんよ」


 おお、この先生いい人だな。


「それにしても君はすごいね。あの校長自ら特待生になってくれなんて君が初めてだよ」


「そうなんですか。そういえば校長先生ってどんな人なんですか?」


「君、あのグリムドを知らないのかい?」


「知りませんけど…そんなにすごいんですか?」


「すごいも何もあの人は一人であのスライムに勝った人ですよ!」


 え?ス、スライム?…スライムってあの序盤に出てくる雑魚モンスターだよな?

 どこがすごいんだよ。


「スライムって、そんなに強いんですか?」


「スライムが強いかなんて今更だよ。スライムっていうのは魔族の中でも上位クラスで討伐難易度はAクラスの化け物だよ。スライムの中でもアルティメットスライムは魔王の幹部にもなるようなモンスターだ」


 スライムが討伐難易度A?

 Aって言ったらドラゴンとかと同じくらいだよな?

 ま、マジなの?しかも魔王の幹部ってどういうことだよ。


「そ、そうなんですか。へ、へぇーすすすごい強いんですね」


「まぁ君くらいの魔法使いには弱く感じるかもしれない。だが中にはとてつもなく強くなったやつもいるんだ。くれぐれも油断しないようにしてくれよ」


「ありがとうございます。気をつけるようにします」


「出会わないとは思うんだけどね。スライムが出たら討伐隊がすぐ組まれるし…」


 討伐隊?そんなにか?…でもそうか。

 魔王の幹部なるようなやつもいるかもだしな。

 んっ?下がざわつき始めたな。


「そろそろ始まるみたいだ。どんな戦いをするか楽しみだね」


「そうですね」


 下がうるさいのはそのせいか。

 しかしあの…誰だっけ。

 まぁナントカさんでいっか。

 ナントカさんどんな戦い方するのかな?

 一応最終まで残ってるみたいだしそれなりに実力があるんだろうが。


「それではこれから最終試験の模擬戦を行う。一応武器として木刀を持ってもらう。この試験では相手を殺したりするなどの危険な行為は禁止だ。あくまで模擬戦ということをわすれないように。それと怪我をしてもこちらでなおせるので君たちの力を見せてくれ。この試験の合格の判断は戦闘を見て校長先生が行う。最後まで残った諸君のことだ恥ずかしい戦闘だけはしないようにな。それでは1組目以外は控え室に行けそこにモニターがある。試合の様子はそれでみろ。移動開始!」


 校長先生が判断するのか。

 なんかすごいらしいし緊張する人もでてくるかもな。

 5分ほどで1組目以外の受験者が退場した。

 さてさてどんな戦いをするのやら。


「それでは両者向かい合って。これは模擬戦だ。無茶はしないように。それでは始めっ」


 お、二人とも詠唱している。

 魔法で戦うつもりか。

 ん?いや赤い髪のひと詠唱しながら木刀振り回してるぞ。

 もう一人の金髪の子は逃げながらも詠唱してるな。

 しかし詠唱してたのは中級だ、多分。あんなのは初級にはないしな。

 魔力は集まってるが量がかなり少ないな。

 あれならレベル2の時の俺の初級魔法と同じくらいだ。

 お、赤髪の方が魔法を打った。

 水のビームみたいなのだな。

 水砲って呼ぼう。

 魔法の詠唱も効果もわかったし練習すれば俺でも使えそうだな。

 金髪の子は魔法を打てずに水砲に当たって場外だ。

 どんまいだな。しかし赤い髪の人の打った水砲は込めた魔力の割には威力が少し高かった気がするな。

 これも初級と中級の差なのか?まぁ今はよくわからんが…


「そこまで。場外で勝負ありだ。次のペアを呼んでこい」


「わかりました、先生」


 なかなか楽しいな。

 人の戦闘を見るのは。

 勉強になるし…今まではディウスさん一瞬で終わるからなんも参考になんなかったしな。

 そうしてしばらく戦闘を見ているとあの…ナントカさんが出てきた。

 うわぁナントカさんが怒ってる。

 あんまり怖くないけど。


「始めっ」


 先生が試合の合図をした瞬間ナントカさんが木刀を投げ捨て詠唱を始めた。相手の子は『いいんだよね?攻撃していいんだよね?』とキョロキョロしている。

 そしてナントカさんの詠唱が終わる。ナントカさんの頭上には風が荒れていた。


「喰らえ!ウィンドカッター」


 なんだよウィンドカッターって。

 ププッ…ってなかなか威力は高いようだ。

 相手の子は……!!!全身が光をまとった。

 木刀がブレる。

 スパッ、そう音が聞こえんばかりの速度で木刀が抜かれ魔法を切った。


「な、なにをした!」


 ナントカさんが慌てている。

 木刀を投げ捨て詠唱するほどだ。

 それなりの自信はあったのだろう。

 だがそれを真っ二つにきられたのだ。少しは慌てても不思議ではないな。

 俺も何が起きたのかわからなかったし。


「別に魔力を纏い切っただけ…ですけど?」


「魔力を纏い切っただと?そんなことできるわけないだろう」


「あなたの説明してもわかりそうにないですしいいですよ」


 そう言うと青い髪の子は一瞬で背後に回り込み首に刀を当てた。

 いや木刀か。

 殺気がすごいな。

 足が震えそうだ。


「ま、参った」


 ナントカさんが負けを認めた。

 そう聞くと青い髪の子は殺気を解いた。

 するとさっきの表情から一変しあわわと口を押さえて…


「ごめんなさいっ」


 謝っていた。

 模擬戦の時のとは明らかに違った。

 あれだ、戦いになると性格が変わるとかそんなのだろう。

 今の彼女はドジっ子みたいになってる。

 ナントカさんも『?』という顔をしていた。


「謝る必要はないぞ。お前の勝ちだ。確かお前達で最後だよな?」


「いえ、まだひと組います」


「そうか呼んできてくれ」


「わかりました」


 まだひと組いるのか。

 でもあれだなナントカさんも見たし今日はもう宿に行こう。

 立ち上がろうとすると一緒に見ていた先生に止められた。


「天野くん。君も見た方がいいよ。最後のペアはこの学校の受験者の中で最も注目されてるふたりだ。もっとも、君のおかげで最も注目…ではなくなったけどね」


 あ、なんかすみませんね。


「そんなにいうなら見る価値ありそうですね。ありがとうございます」


「いいよ、ほらきたよ」


 入ってきた二人はどちらも女性だ。

 一人は金に近いが若干茶髪っぽい感じで長さは肩くらいだ。

 もう一人の方は黒髪ロングでストレートどちらも整った顔立ちをしている。あの二人が(俺を除く)最注目の受験者か。

 なんで特待生じゃないんだ?


「あの、どうしてあの二人は特待生じゃないんですか?注目されるほどすごいひとなんですよね?」


「特待生入りはしてるんだ。でも試験はすべ受けたいという本人達の希望さ。それにあの二人は君ほどではないけど魔法がすごくてね。見てればわかってもらえると思うよ」


「そうですか」


 見てればわかる、か。

 楽しみだな。


「始めっ」


 先生が合図した瞬間に魔法が放たれた。無詠唱でだ。


『ドガァ』


 勝負は一瞬で決まった。

 黒髪ロングの方が残り金髪っぽい人は吹き飛んでた。

 場外だったが無傷だ。

 なぜだろう。


「どうだい?あの二人は。一人は無詠唱魔法の使い手。もう一人は魔力障壁の使い手だ。だがステージが悪かったね。爆破の風圧でふきとんでしまったみたいだ」


 んー。どっちもすごいことだけわかった。

 あとで挨拶しとこう。


「お、二人ともすごいな。今日はこれで終わりだ。合格発表はきたかったらきてくれ」


「わかりました。それでは」


 下にいる先生驚いてたな。

 しかしあれだ。

 金髪っぽいひとはドライだな。

 黒髪ロングの人は…あ、目があった。会釈しとこ。

 頭を軽く下げて見るがプイっとそっぽを向いて控え室に戻っていった。

 なんでだろう…

 今度学校で会ったら俺もプイってしてやる。




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