#1 人間間違いは有るもの
皆さんは、『言霊』と言う言葉を知っていますか?言霊とは、言葉に宿る神秘的な力の事。例えば…其を自在に操る者が居たとして、彼が「死ね」と対象に向かって言うだけで死ぬ…と言った事です。
そして言霊使いとは、言霊を自在に操る者の事なのです……
朝。好きでも無く、嫌いでもないこの時間帯は、同時に学校への登校を促す。
『言霊』が科学と同じ位浸透した世界で、『言霊』によって自分の居場所は奪われた。優秀な言霊使いを輩出してきたこの家系で、唯一言霊の使えない自分の居場所は何処にも無かった。正確に言えば、『言霊』は使えないので合って、何も出来ないとは言っていない。不思議な事に、召喚は出来るのだ。それも通常は言霊を使わなければ出せない者達を。そうして誰も見ていない事を確認して、召喚を行った。
「お、お兄ちゃん・・・?」
甘かった。たっぶりの餡蜜を掛けた抹茶アイスクリームぐらいに確認が甘かった。
妹の奏は家系に沿って優秀な言霊使いで、日本でも有名な東京言霊学園で<氷帝>の異名を持つ、氷の言霊使いだ。そして俺が一番これを見られたく無かった人間だ。そう…こいつは、
「お兄ちゃん言霊使えたの!?お母さんー!お兄ちゃん言霊使えたよ!」
勘違いが酷い。俺が使ってるのは魔術に近い。偶々学校から帰ってきた際に拾った小さいバックに三万もの魔術書や錬金術書、陰陽書、そして様々な武器が入っていて、それを隠れて4年間学んだ結果、言霊使いと同レベルに達しただけだ。
奏の勘違いの結果、俺は最も憎んでいたはずの東京言霊学園に転入させられた。黒と青のチェック、そして中心の白で構成された制服は、奏によると「めちゃくちゃ似合ってる」らしい。尚俺は二年生なので奏の先輩と言う事になる。俺のクラスは、召喚したのがたまたまゼウスだったので、Sクラスらしい。
「お兄ちゃん、Sクラスは実力主義だから、気を付けて!」
等と無駄な心配を奏にされながらも俺は教室に足を踏み入れた。
正直な感想は面倒臭い。それだけだ。そして俺の意志とは相反するのに物語は始まった。