前編
白ヶ音 雪様 主催「蛮族の嫁企画」参加です。
「どうしよう……」
シャナイアは困っていた。
巫女である自分の肩に一族の存亡がかかってる。しかし、何の手立てもなく彼女は途方に暮れるしかなかった。
シャナイアの暮らす村は山奥の古くから続く精霊と会話が出来る部族だ。名をカトイ族という。
自然と精霊と共に暮らし、その恩恵を受ける希な部族だったのだが、生活に必要な便利な道具が次々と開発され、精霊に頼りきりだった生活が自分達で何とか出来ると分かってからは、人の思いが精霊から離れ始め、今や精霊と会話出来るのはカトイ族の中でもごく一部の人間となっていた。
シャナイアは村の巫女として精霊と会話出来る唯一となっていた。
シャナイアの村で精霊は信仰の対象であり、友であり、生活の一部であった。それが今や困った時の神頼みならぬ精霊頼みで、何でも屋みたいな扱いとなり、敬う気持ちなど微塵もなくなっていた。
それでも村では精霊信仰を形だけでも保ち、巫女に精霊への要望を伝えてもらうようにしていた。
求めるばかりで感謝もなく、昔のように友としての忠告も聞かないカトイ族に精霊達は離れ部族の人間の頼みを聞くのをやめてしまった。
唯一話をするのは昔と変わらず精霊と生活を共にするシャナイアだけだった。
山奥に住むカトイ族は、その立地から閉鎖的で外との接触はあまり好まなかった。
一歩村から出ると、周りは国同士の領土争いで常に戦争をしていて、山奥で狩りと農耕で暮らしていたカトイ族には争いなど無理な事だった。
特に近年戦争で領土を広げてるウルベルク帝国は部族の暮らす山にまで領土を広げ、部族の中ではいつ、侵略されるかと戦々恐々としていた。
そんな中、村では日照りが続き作物が育たない危機に瀕していた。このままでは保存していた穀物まで底を尽きてしまう。狩りだけで賄える状態ではない。
村ではどうしよもなく巫女であるシャナイアに精霊に雨を降らせるよう話をしてくれと頼んだのだった。
山奥に暮らすカトイ族でも足を踏み入れない秘境、精霊と会話するための聖なる場所、精霊の滝の前でシャナイアは困っていた。
一族のために精霊に雨を降らせてくれるように頼んだのだが、精霊達は『シャナイアの事は好きだが、カトイ族は精霊を捨てたから嫌い』と言ってシャナイアの頼みを聞いてくれないのだ。
何度お願いをしても精霊達の答えは同じで『カトイ族は嫌い』
このままでは一族は全滅だ。
シャナイアは必死で精霊達にお願いをするしかなかった。
「お願いよ、何でもするから村に雨を降らせて……!!」
シャナイアの必死の頼みに精霊の一つが答えた。
『何でも? ならば、この後の最初に出会ったモノの伴侶になるんだ』
「伴侶?」
『そう。最初に出会ったモノと結婚して一生を捧げるの。それは人ではないかもしれないよ。獣かも魚かも虫かもしれない。それでもいいという覚悟があるなら雨を降らせてもいい』
「……分かった。一族のためなら、どんなモノとでも結婚する。それでいい?」
シャナイアは精霊の方を真っ直ぐ見て応えた。
『契約成立だね。僕達は一旦消えるけど、シャナイアの事は見てるからね。この後、最初に出会ったモノが何かを確認するから』
そう言うと精霊達は一勢に光となって消えた。後には滝壺の前の祭壇にシャナイア一人が立っているだけだった。
シャナイアは、ほっと息をついたが、次の瞬間とんでもない約束を精霊としてしまったと思った。
──どうしよう。
勢いで結婚すると言ったけど、本当に人じゃないモノが出てきたら一生それが夫なるの!?
獣ならまだマシかな。毛並みをもふれるし。いや待って。肉食系だったら私が食べられちゃう(性的ではなく、物理的に)
それは嫌だな、痛そうだし。
魚だったら、一緒の家で暮らせない! 水の中で息ができないし魚ってどれも同じに見えるから、うっかりご飯用に捕って焼いちゃったら大変!! 魚と結婚したら一生魚が食べれない!? それはキツいな。
鳥がいいかも。自由に飛び回る姿は好きだし。私も飛べたらいいのに。
はっ!! 渡り鳥だったら彼等について行かないといけない!? 村の外に出た事ないのに大丈夫かな私。それに狩人から鳥旦那を守らないと!
虫が相手ってのも……そもそも虫とどうやって会話をするの?
虫って寿命短くない? 私、結婚して次の年には未亡人?
色々ツッコミどころ満載だが、シャナイアは精霊との突飛な約束に冷静さを欠いていた。
ぐるぐると精霊との無茶な約束に頭を悩ませながら滝壺の周りをウロウロしていたので、シャナイアは周りの異変に気付くのに一瞬遅れた。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぎぃやぁああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
雄叫びとも奇声ともつかない声がして慌ててその方を見上ると滝の上から何かが流れ落ちてきた。
「おおおぉぉぉ……!!」
「やぁぁぁぁぁぁ……!!」
「「……!!!」」
ドッと爆音と共に二つの塊が滝壺に落ちていった。
「……」
シャナイアは何が起きたのか分からず、呆然と滝壺を見ていた。
すると水底から何かが上がってきた。
ハッと、シャナイアはもしかしてこれが自分の一生の伴侶なのかもと思い、急いで浮いてきた何かに向かっていった。
精霊達との対話のための正装が濡れるのも構わずシャナイアは滝壺の近くまで何とか歩いていった。腰まで水に浸かった所で浮いてきた何かが彼女の方に流れてきた。
「え!? ゴリラ?」
シャナイアの元に二匹の服を着たゴリラが浮かんでいた。
「え!? どっち?」
シャナイアは混乱していた。
──シャナイアがゴリラを拾う半日前──
ウルベルク帝国騎士団第一団長ロバートと第二団長フィリップは新しく領土となった山林の野盗、敵国の残党の大規模討伐をしていた。
力こそ正義を掲げる武力大国の前に討伐はあっさりと終わり、二人は部下達に帰還命令を出して自分達も下山しようとしていた。
「こうも簡単に終わるとつまらないな」
「はあ? これだから平民上がりの野蛮人は。弱き者をいたぶるのが好きと言う」
「誰が野蛮人だ。フィリップこそ力こそ正義の我が国でインテリぶって。貴族だか何だか知らないが同じ騎士団にいる以上立場は同等だからな」
「野蛮人と一緒にするな。俺は力もあるが頭も良く、更にいい男だ」
「はいはい。言ってろ言ってろ」
慣れない土地の山道を二人はぎゃいぎゃい言い争いながら進んで行く。
するとロバートが急に立ち止まった。
「どうした、ロバート」
「しっ。静かに」
二人は立ち止まり、耳を澄まし辺りの様子を見た。
「……一人、二人……三人か」
「取りこぼしがあったか。ロバートはどっち行く?」
「俺は右へ」
「じゃあ、左か。野蛮人に二人譲ってやる」
そういうや否や二人は左右に分かれて背後から迫ってきていた野盗に襲いかかった。
襲うつもりが逆に奇襲をかけられ、野盗達は慌てて逃げ出した。
ロバートとフィリップは、それも見越して近くの木を殴り倒した。
ドオォンドオォンと音を立てながら木を殴り倒して野盗の逃げ道を塞いでいく。
「ばっ、化け物……!!」
「ひいぃぃぃ」
野盗達はロバートとフィリップの人とは思えない腕力に恐れをなしていた。
力こそ正義を掲げるウルベルク帝国は身分関係なく、強い者が上に立つという実力主義の国で、その中でロバートとフィリップは、そこそこの実力を持っていた。
木を殴り倒す二人でさえ、そこそこの実力。
その頂点に立つのは王族で帝国の中でも桁違いに強かった。
圧倒的な力の差に野盗達はあっさり捕まると思っていた。
しかし、一人が隙を突いて山奥へ逃げてしまった。
野盗二人を縛り上げ、ロバートとフィリップは逃げた野盗を追いかけた。
「この力馬鹿! 一人取り逃してるじゃないか!」
「フィリップこそ油断してたくせに!」
「俺はちゃんと一人捕まえたし、お前に譲ってやったんだ!」
「はいはい。手柄を譲ってくれたと。それは、どーも」
二人は野盗を追い掛けながら言い争いをしていた。
目の端に野盗を捉えていたが、しっかりと周りを見ていなかったのが仇となった。
野盗が急に向きを変えてこちらに向かってきた。二人は止まろうとしたが勢い余って直ぐには止まれず、野盗の方に顔を向けながら速度を緩めた。が、次の一歩を踏むことは出来なかった。
木々が開けたと思った瞬間、崖に足を出してしまった。
「うわっ!」
ロバートは咄嗟に近くの木の枝に掴まって崖から落ちるのを回避したが、フィリップが勢いが止められず、落ちていこうとしていた。
「ふぁっ!!」
フィリップは手近な物に掴まろうと手を伸ばした。
「おおっ!?」
ロバートの脚にしがみつき何とか落ちずに済んだ。
「おい、フィリップ!どこを掴んでやがる!!」
「どこって野蛮人の脚を仕方なく掴んでやってるんだ! 早く安全な場所へ移動しろ!」
「無茶言うな。この微妙な体勢で枝に掴まってるんだ。フィリップ、お前が移動して何とかしろ」
「はあぁ!? なんでヤローの体を這っていかなきゃいけないんだ」
「俺だってヤローに掴まられるなんて御免だ。早くしろ!」
「なんだと!?」
二人で騒いでる間にロバートが掴んでいた枝が二人の自重に耐えられず徐々に軋んでいく。
「こうなったら、どちらが強いかハッキリさせようじゃないか!」
「上等だ。俺は負けない」
二人が拳を握り締めた時、バキッとロバートが掴んでいた枝が折れて二人は崖に真っ逆さまに落ちていった。
「え!? ええぇぇぇ!?」
「ロバートてめえぇぇぇ!!」
絶叫と一緒に激流の川に落ち、流されていった。
「ブハッ! フィリップ! フィリップは無事か!?」
「かっ! くっ、この俺がそんな軟弱に見えるか! 力馬鹿」
二人は流されながらもお互いの無事を確認し、状況把握に努めた。
「どうやら崖から運良く川に落ちたみたいだな」
「そんなの言われなくても分かってる! この流れがどこに繋がってるかが重要なんだ!」
「確か、国境付近に大きな川があったのを地図で見た。たぶん、その川だろう」
「なるほど。で、この川はどこに向かってるんだ?」
「精霊の滝って書いてあった気がする」
「精霊の滝? 滝!?」
どこか掴まる所がないか探しながら悠長に川の流れに身を任せていたが、フィリップはロバートの言葉に慌てた。
「ロバート、そんなのんびり流されてる場合じゃない! このままだと滝へ真っ逆さまだ!」
「そうは言ってもフィリップ、この激しい流れに流石の俺達もなす術がないし、もう手遅れだ」
「は!?」
ロバートの視線の先にフィリップが目を向けるとゴゴゴゴゴと音を轟かせ川が途切れていた。
「嘘だろぉぉぉ!!」
「いや、大本気だ」
「ロバート、ふざけんな!!」
「俺はいつだって真面目だ」
激流に翻弄されながらも言い争いを止めない二人に川は無情にも途切れた。
「ぎぃやああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
二人は滝に飲まれていった。
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シャナイアは水から何とか二匹のゴリラを引き上げて息があるか確認した。
大丈夫、息はある。目立つ所に怪我らしきものもない。
うーん、ゴリラを拾ってしまった。
拾った? うん、拾ったんだよね。
精霊の約束の通りなら私はこのゴリラと結婚する事になる。問題はどちらのゴリラと結婚するか。
もしかして結婚相手は一匹とは限らない!?
え!? 一夫多妻制!? いや、この場合は多夫一婦制?
どっちでもいいや。とにかくゴリラが結婚相手で間違いない。
虫や魚よはマシか。
ゴリラが肉食獣でありませんように。
私が餌と認識されたら嫌だもん。
シャナイアは意識のないゴリラ二匹を見比べながら、うんうん唸っていた。
精霊達も彼女の様子を遠巻きから見ている。
まさか結婚相手となるモノが二匹一気に来るとは思っていなかったのだ。
シャナイアの元に寝かされてるゴリラ二匹は服を着ていた。それも一匹の服はかなり精密な刺繍がされている。まるで上流階級の貴族が着るような上着だ。
もう一匹は簡素に見えて丈夫で動きやすそうな服を着ていた。それもやはりそれなりにいい服なのは分かる。
二匹に共通してるのは、かなり大きなゴリラということだった。
精霊達は淡い光を纏いながらシャナイアに近付いた。
『シャナイア。僕達は、しかと結婚相手を確認した。どうする? 本当に結婚する? まあ、断ったら契約不履行で罰が下るけど』
「結婚はする。村に雨を降らせてくれる約束だもん。でも、一つ聞いていい?」
『何?』
「どっちと結婚するの? それとも両方?」
シャナイアは大真面目に精霊達を見た。
精霊達はシャナイアの周りをゆっくり回りながら少しの間沈黙した。
『どちらでもいいよ。シャナイアがいいと思った方と結婚すればいい。両方いいと思ったなら両方と結婚してもいい。そこはシャナイアの自由にしていい。結婚すればいいのだから』
精霊達は再び消えながらシャナイアに言った。
『僕達はいつでもシャナイアの傍にいるよ。どちらと結婚してもいいけど、僕達にも感情があるように相手にも感情があることを忘れないで……』
シャナイアは精霊達の言葉にハッとした。
そうだ。結婚は一方的じゃない。双方の気持ちがあってこそ出来るのだ。
気持ちの伴わない結婚は大きな国や貴族の政略結婚で、こんな辺境の山奥にある弱小部族の結婚は自分の意思が一番にくる。
ということは、このゴリラ達に結婚を了承してもらわないと。
シャナイアはとりあえず、ゴリラ達が目を覚ます前に何が食べ物を用意しようと思った。
相手の心を掴むにはまず胃袋からって言うし。
明後日の方向に頑張るシャナイアだった。
ゴリラって何を食べるんだろう?
肉? 魚? 果物? 虫?
分からないなら全部用意すればいい。少ない食糧から工面しなければ。
シャナイアはゴリラのための食べ物を取りに行った。
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何かの肉を焼く匂いとパチパチと薪が燃える音が聞こえてロバートはうっすらと瞼を開けた。
匂いの方を見るとそこに一人の少女らしき人が子豚の丸焼きの焼き加減を調節していた。
それは細かく子豚の焼き位置を変えて均等に火が通るように慎重に子豚を回していた。
豚の生焼けは危ない。命に関わる。
ロバートは少女の真剣な横顔に目を奪われていた
一心不乱に子豚の丸焼きを作る少女はロバートが見たこともない衣装と装飾をしていた。
鴉のような長い黒髪は緩く一つに編んであり、色とりどりの組み紐で括られていて背中に流されていた。褐色の肌は艶やかで服の袖から見える腕には何やら蔦のような模様が描かれている。その模様が光の加減で薄くなったり濃くなったり見えて神秘的だった。
焼き加減を真剣に見る瞳は髪と同じ黒なのだろうが、火を見ているので今は緋色か濃い茶色が煌めいていた。
おそらく精霊の滝付近に暮らすと聞く民族、カトイ族の娘だろうとロバートは思った。
ロバートが暫く娘に見蕩れていると、娘は丸焼きが出来上がったのか、大きな葉っぱの上に焼きあがった子豚を乗せた。そしてロバート達の方を見た。
「あ……」
二人はしばし見つめ合った。
シャナイアは再び困っていた。
ゴリラと意思の疎通を図るにはどうしたらいいのか分からなかったからだ。
ゴリラ語ってあるのかな?
言葉の壁は大きいと痛感していた。
まさか、目の前のゴリラが最近村の近くまで領土を広げたウルベルク帝国の騎士とは微塵も思っていないのだ。
一方、ゴリラ……もとい、ロバートの方は正面からシャナイアを見て自分の反応に戸惑っていた。
少女の何かとてつもない覚悟をした強い光を宿す瞳にロバートは自分の心臓が鷲掴みされたような感覚に陥っていた。
何なんだ、この感覚は。
彼女から目が離せない。
息が苦しい。
その瞳に映るのは自分だけであって欲しい。
もしかして、これが一目惚れ……?
ロバートは初めての恋にどうしていいか分からなかった。
とにかく何か言わなければとロバートが口を開いた時、少女が動いた。
「ウホ」
少女は両手を挙げて一言。
「ウホ、ウホホ」
何かを必死に訴えてるがロバートには何を言ってるのか分からなかった。
なんてことだ! 原住民の言葉が分からない!
折角彼女が話し掛けてくれてるのに何を言ってるのか分からないなんて!!
どうしたらいいんだ。
まさか一目惚れした相手が公用語を喋れないなんて!
ロバートは頭を抱えた。しかし直ぐにシャナイアの方を見て、彼女のように両手を挙げた。
「うほ、うほほ。うほ、うほほ」
シャナイアが言った言葉をそのまま繰り返した。若干発音が違うが、だいたい同じだろうと、とにかく必死だ。
ロバートはシャナイアから殺気がないことから彼女が自分達に友好的だと判断して、何とか交流をしようと真似をしたのだ。
「ウホ、ウホホ。ウホッウホッ」
「うほ、うほほ。うほっうほっ」
「ウッホホーイ、ウホウホ」
「うっほほーい、うほうほ」
ロバートが返事をした事により二人のコミュニケーションは進歩した。言葉を交えながら手も動かし始めたのだ。傍から見ると手旗信号を送りあってるようにも見える。
「ロバート、何やってんだ?」
ロバートとシャナイアの謎の交流を実は最初から見ていたフィリップは延々と続きそうなやり取りに横槍を入れた。
「フィリップ、邪魔しないでくれ。彼女との意思の疎通を図ってるんだ。もうすぐ彼女が家族構成を教えてくれるはずだから」
「一体何を言ってるんだ? 崖から落ちた時に頭でも打ったか?」
「俺は至って正常だ。彼女の真剣な眼差しにやられた哀れな親友を思うなら空気を読んで寝ててくれないか。これから恋の求愛ダンスをするから」
「やっぱり頭を打ってるな。しかも重症だ」
フィリップはやれやれと頭を振った。
「もしかして、言葉が通じるの?」
二人の会話を耳にしてシャナイアが驚いた。
「君は公用語を喋れるんだね! 良かった」
ロバートはシャナイアと会話出来る事に喜んだ。
「君はこの辺りに住んでいるのか? ここはどこだい?」
言葉が通じて浮かれてる力馬鹿を無視してフィリップはシャナイアに聞いた。
「ここは精霊の滝。私はこの山に住むカトイ族の巫女、シャナイア。ようこそカトイ族の村へ。ゴリラさん達」
シャナイアはゴリラが人間の言葉を話せる事に驚きつつ、歓迎した。何せ彼等のどちらと結婚しないと一族が滅んでしまうからだ。
「ん? ゴリラ?」
「俺達はウルベルク帝国騎士団の騎士、俺はフィリップ。こっちの野暮ったいゴリラがロバート」
「ウルベルク帝国……聞いたことある。この辺一帯を治めてる国……まさかゴリラの国だったなんて」
「え!? え!? ちょっと待って。俺達は人間だよ。ゴリラじゃないから。それからフィリップ、野暮ったいんじゃない、俺は実用性を重視なんだ。これから彼女と親密になろうと思ってるのにネガティブキャンペーンはやめてくれないか。はっ! さてはフィリップ、お前も彼女に一目惚れしたな!! 彼女は渡さない。俺の方が先に好きになったんだ!」
「うるさい。誰がこの異常事態で一目惚れなんかするか。そんなんだから野蛮人と間違われるんだ。ロバート、お前と一緒だと高貴な俺までゴリラにされてしまう」
「いや、二人共ゴリラだから」
「「ゴリラじゃない!!」」
普段絶対意見の合わない二人が珍しく意見が一致した瞬間だった。
ゴリラ語(訳:シャナイア)【訳:ロバート】
ウホ(初めまして)【初めまして】
ウホホ(私は無害)【俺は騎士】
ウホッウホッ(よろしく)【俺は】
ウッホホーイ(お腹空いてる)【君が】
ウホウホ(ご飯食べる)【好きです】




