第67話
東京駅構内を奥へ下へと進み京葉線のホームへと辿り着く。停車中の電車に乗り込み出発を待つ。勲と中村はすでに二人の世界のため、付き添いの三人は改めて二人に合流することはせず、少し遠巻きに二人を監視している。口には出さないものの三人は三人とも心の中で「友人って感じにはみえぇねな」と見解は一致している。それもこれもあの勲の笑顔。完全にデートに誘われて喜んでいる乙女の顔。舞浜に到着するまでずーっとその顔を眺めていた。
「まいはまーまいはまー」乗っている電車がホームに入線する。
「時間ずれてもこの人だもんなぁ。いつくりゃここは空いているんだ」ホームに降り立った志帆が呟く。
「バクにでも夢食われなきゃムリじゃないですか?」
「夢の国だからか、なるほど」
「所詮バイトが中に入っているだけなんだけどねぇ」
「言うなっての…」勲の代わりに志帆がツッコミ役。
「さて、見失うとマズい」真白が勲を探す。そしてそれはすぐに見つかる。
「こっちです」と言わんばかりに中村が足を止め三人を待っている。さすが大人、撒いて約束を違えるようなことはしない。合流し改札を抜け、いよいよ夢の国の前へと辿り着く。
「いつぶりかなー。佑奈と高校の時に遊びに来た時以来?」腰に手を当て手を額に当て眺めるように真白が口に出す。
「だよねぇ。そうくるところじゃないですし。どっちかといえばスペースワールドの方が面白いですからね」
「あー、あそこ楽しかったね。閉園は残念だが」
「別宇宙でやってるらしいですから、そのうち戻ってくるんじゃないですか? もしくは残骸をどこかの企業が買い取って何か始めるかもしれませんし」
「行ったんだ…」
「さて、お二人はっと…」
会場前でまた改めて勲達を探す。今度もすぐに見つかる。既に中村がチケットを買うために列に並び、後ろで勲が待っている。久しぶりに別々になった二人、勲のもとに三人が駆け寄る。
「ダーリンよ、ここからしばらく別行動だけど、大丈夫?」
「大丈夫って、何がですか?♪」
「だよね。じゃあほっといて我々も楽しむので」
「ええ、お構いなく。私も中村さんと楽しんできますから♪」
「お、おう…」余りにまぶしい笑顔で返されるのでたじろぐ真白。
「お待たせしました」
中村がチケットを携え戻ってくる。すぐさま勲は中村の傍らに移動する。全員にチケットを手渡し入場の準備は完了する。
「さて、私たちは町村さんがシーに行きたいというのでそちらに行きます」
「あ、はい」
「三人とも楽しんでくださいね♪」
「あ、うん…」
「では、また後程」そういって手をつなぐことまではしないものの、二人はゲートをくぐり園内へと消えていく。それをただ目で追って遠くなる背中をポカーンとみている。
「なんか…」
「なんか」
「すごいな、おい」
事が一気に進んで置いていかれる三人。手にはおごってもらったパスポートがある。しかしそんなことは今は頭の片隅にもない。何か不思議な空気が三人を包んでいる。
「ねぇ」
「うん」
「ちょっといいかな?」
「多分、同じこと考えているよね?」
「同じこと」さてそれは一体。既に正午を回ったディズニー前。今から何時間のデートが繰り広げられるのか、そして付き添い三人の取る行動は!?




