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新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
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第6話

 佑奈邸にて一晩モノポリーに興じさせられた勲。頭はいいがゲームセンスは無くボロ負け。翌朝例の衣裳部屋で目が覚める。そして少しばかり記憶が曖昧になっているご様子。

「僕、昨日の夜何してたっけ…?」

 敗北を味わっていただけです。ケツの毛までむしられて寝落ち。気付かぬうちにこの部屋に放り込まれていた様ざまである。着替えが無いため昨日出かけたそのままの格好。寝癖の頭そのままに隣のリビングへと続く扉を開く。

「おはようございま…、おっと」

 言いかけて口を閉じる。相変わらず早起きの勲、まだ7時台前半。佑奈と真白はまだリビングで寝息を立てている。そっとリビングの扉を閉じる。流石にこのままでは何もできないため、今のところは仕方なく帰ることにする。二人のスマホに「帰ります」とメッセージだけ送り佑奈の部屋を後にする。

 駅へと向かう道中、まだ連絡をしていなかった兄ミランダに連絡を入れる。「ご馳走様」と一言だけではあるが、それで十分だろう。余計な文言を付けると藪蛇になりそう、本能で控えた。


 土曜日の上り電車は空いている。難なく腰掛け渋谷まで戻り、どうせ戻っても食べないであろう朝食を、適当なコーヒーショップに入り済ませる。まだ動ききっていない都会の風景を見るのが、勲のひそかな楽しみ。人がいてしかるべき場所にいない、そのアンバランスさがどうも楽しいようである。

 二階の窓際の席に30分ほど居座り、人の往来と街並みを眺めている勲。ただボーっと眺めるだけではなく、その人にどのような事情、人生があって今歩いているかなどを考えながら眺めている。自身の学問に通ずる部分もあるのだろう、飽きることなく外を見ている。

 店に人が増えてきたタイミングで店を後にする。改めて電車に乗り一度家に帰りシャワーを浴び、着替えを済ませ改めて外に出る勲。授業はないが大学に用事があるため、自転車に跨り大学へ向かう。直に寒い季節が訪れる。自転車で走るのにも寒い季節だが、東北育ちの勲にはこちらの寒さなどへでもない。雨さえ降らなければ自電車で大学へ通うことだろう。


 10時を回ったころ、真白から連絡が入る。「何で帰るのさー!」と、声が聞こえてきそうなメッセージ。ああやっぱりと思いながらもお詫びと事情を返す勲。すると即座に「じゃあ午後はヒマか」と折り返しがくる。ここんところ会えなかったうっぷんを晴らそうという気がありありと見えてくる。あいにく夕方前まで大学にいる予定のためその旨を伝える。するとまた即座に「じゃあ夕方家に行く」とのご要望。勲も久しぶりと言うこともあるので快諾する。因みに佑奈は夜遊びが原因か、少し風邪っぽいのでパスらしい。

「相変わらず忙しい人だ」嬉しそうにスマホを閉じる。そして幼児の目的地である図書館に消えていく勲。そこから夕方までは一歩も外に出ず、ただ本の虫になっていた。

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