表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
63/74

第58話

  遅くなっても構わないから私の(佑奈の)家へ来て(ください)


 そうメッセージが入っていた送り主は佑奈と真白だった。しかもどちらか片方ではなく二人から同一のメッセージが。気付いたのがまだ佑奈邸を通り過ぎる前だったので行き先を変更したどり着く。既に時間は深夜1時を回っている。

「ありがとうございました、お気をつけて」

 扉が閉まり走り去っていくタクシー。それを見送った勲はすぐにマンションへと入っていく。遅くなってもいいとは言われたものの既に丑三つ時に近い。インターホンを鳴らすことなく合鍵で入っていく。エントランスから入ったところでメッセージを送る。すぐに既読が付き「起きている」と返事が来る。そのまま部屋の前までたどり着き改めて合鍵を用いて部屋に入る。

「こんばんわー…」そろそろと扉を開けて中を覗く勲。しかし今日は玄関へのお迎えはない。

「部屋、だよね多分」

 靴を脱いで奥へと進む。リビングへ通じる扉からは光が漏れていて、二人が起きていることをうかがわせる。ノブに手をかける。すると勲は得も言われぬ寒気のようななんというか、そんなものに襲われる。

「…何かいる」そりゃ二人はいるだろうよ。

 恐る恐る扉を開く、そして「こんばんわー」と改めて声をかけ中を覗き込む。

「二人ともいてm…%&$=+*#”!?@℡㍉㍍」声にならない声が上がる。

「あ、普通だ」

「普通ですね」

「何やってんですか二人とも!?」

 部屋の中には三つ指着いた二人が、なんと下着姿で待ち構えていた。真白に至っては割りとスケスケ。そりゃ勲も声も出ず部屋を飛び出すわけである。

「興奮した?」

「する前に心臓が止まります! とりあえず服着てくださいよ、もう」

「さすがに寒いから一旦着ようか」

「んだね」

「早く着てください。こんな深夜に下半身に悪い…、一旦???」

 佑奈の言葉に少し引っ掛かるところがある勲。しかしそんな声は二人には届いていない。扉の向こうからは二人が動き何か衣類を着るような衣擦れの音が聞こえる。扉の曇りガラスの向こうに動く影。ちょっと落ち着いた勲は見えないものかとちょっと覗く。

「もういいよー」

 真白から合図があり、恐る恐るまた扉を開く。

「もう大丈夫ですよ。驚かせてごめんなさい」佑奈がゴメンと手を合わせて勲を部屋に迎え入れる。

「本当ですよもう。改めてこんばんは」

「ほれ」真白がピケの胸元をめくってブラチラしてみせる。

「だから!」ちゃんと覗くは覗く。

「はぁ、眠いのにもう…」

「ごめんよ。どうしても謝りたいことがあってさ」真白が思いもよらない言葉を発する。

「謝る?」

「はい。町村さんに悪いことしちゃったなって」

「なにかされましたっけ、僕? あぁ、もしかしてヨーコさん宛のメッセージ?」

 既に割り切っている勲、別にそんなことをとがめるつもりはこれっぽっちもない。だからこそ今日もヨーコの元へと行っているわけである。

「いえ、そんなもんじゃありません」

「そ、…え?」そんなもんじゃないらしい。ビビる勲。

「ダーリン、ここ最近なんかおかしいことはなかったかい?」

「おかしいことって…。日々おかしいことばっかりなんですけど、無い方が珍しいくらいです」

「だよね」だよねって。

「そんな中でも、いつもと違うことありませんでした?」

「えぇー、なんかあったかな」謝られるはずがなぜか問答が始まっている。悩む勲。

「うーん…、出したゴミが漁られていたことはあったなぁ」

「そんなことあったんだ。なんかとられてた?」

「いえ、さすがにそこまで確認はしてませんけど…。ってことは違うんですね」

「うん、それじゃない」

「私たちに関係あります」

「二人にって…。あ、もしかして」

「もしかして?」

「今この瞬間、二人が僕を誘惑していることか!?」

「不潔です」

「○ねばいいのに」

 違ったらしい。深夜2時前、もうちょっと悩む勲。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ