第51話
「何かある」勲はそう感じていた。突然のお泊り要請、今日に限ってやたらと優しい(いつもどんな扱い受けているんだ)真白がやたらとベタベタしてくる(いつもか)佑奈が何も言わずに突然高校時代の制服に着替えてくる(?)そしてスマホを見ようとするとなにかと声を掛けられ遮られその手が止まる。確実に何かある、そう思わない方が不自然な状況。すでに夜になり、リビングで三人宅配ピザを頬張っているが、味がよくわからない(それは単純に珍妙な味を注文したからだと気づいていない)
「ちょっと、トイレに…」ごく自然の行動のついで、何気なくスマホを手に取りトイレへ向かおうとする。しかし、即座に両足をつかまれる。顔面から倒れる。
「ごむぎゅう!」
「スマホは置いてっていいんじゃないかなー?」
「落としたら大変ですよー」
「そ、そうですね。じゃあここに…」
なぜそこまでスマホを見せようとしないのか。間違いなく何かある。大人しくスマホをテーブルに置き、後ろから刺さる二人の視線を気にしつつトイレへと向かう。
「何かやばいものでも写ってるのかな。そんなもの撮影した覚えはないんだけど…」用を足しながら考える勲。
「そういえば、この家に来てから時間の経ち方が変なんだよな。気付くと一時間たっちゃってるとか…は! まさかその間に何か二人に変なことしちゃったかな!?」されたほうです。
時間の経過がおかしいことはうすうす気づいている勲。記憶を飛ばすほどのことをしでかしてしまったのではと急に心配になる。酒を飲むわけもなく、それに似たものも出ていない。自分が記憶を飛ばすようなトリガーは何一つない。しかし、あまりの凶行を犯してしまったため、本能的に記憶を閉ざしてしまったのでは! なんて考えているけど全部誤解。どちらかというと貴方が詫びられる側なんですけど。それは数日後までわからない。
「とりあえず、部屋に戻って二人の顔色チェックしよう」水を流してトイレを出る。そしてリビングに戻る。
「おかえりー。ホラおいでおいで」
「ピザ冷めちゃったので温めておきましたよ」
(やっぱり優しい!!)
「あ、ど、どうも…」二人の間に挟まるようにソファーに腰かける。
「食べる? はい、あーん」ピザを食べさせてくれようとする真白。それを幽霊でも見たかのような顔で見る勲。
「なんだその顔は、コラ」いつもの返し。
「あの、僕何かしました?」
思い切って切り出す勲。その質問に少しだけピクッと反応を示したかのように見えた佑奈と真白。一瞬ではあったがそれに気が付く勲。やはり何かあったのだろうか、さらに追及すべきかここまでにすべきか。非常に悩む。
「何もしてませんよ、何も…」反対から佑奈が答える。しかし目は合わせず自身のピザを食べながら不気味に言い放つ。というかその目は何かある。絶対何かある。わかっちゃう勲。
「大丈夫。仮に二人いっぺんに襲われたとしたって、今の私たちは君を許す」真白に肩を叩かれる。
「えぇー…」逆に怖い。
「さて、ご飯が終わったらお風呂にしましょう。今日は三人で入りましょう…」
「ぜってーヤバいことになってるー!!!!!」
夜は更けていくYO。




