第46話(間あいたけど終わってませんよ?)
三人で食事中、テーブルに置いてあるスマホの画面が立ち上がる。電話ではなさそう、いずれかからのメッセージが届いたようである。箸を置きスマホを手に取る勲。「…、あ」佑奈からだった。
「どうした?」
「あ、いや。地元の友達からだった」
巽には言えない。誤魔化して一旦画面を閉じる。「なんだろう。まぁ後で確認しよう」既読マッハで返信しないとキレられるような関係でもない。そもそも未読、二人との食事が終わってからゆっくりと確認することにしてスマホは改めて机の上に伏せる。
「勲彼女いるんでしょう?」急に津田野からの質問が勲に飛ぶ。
「あ、まぁね」
「うちの大学、じゃないよね」
「う、うん。別の大学」
「東京に出てきてまだ1年も経ってないってのに、手が早いことで」
「結果そうなっただけだって。別に目の色変えて探してたわけじゃないし」
「草食のほうが受ける世の中だからなー。今から俺も変わるかな」
「遺伝子組み換えないと無理でしょう」津田野から盛大なツッコミが入る。
「ジャガイモみたいだな、巽」
「祖の理論だと、俺も組み換え可能ってことだよな」
「ムリムリ」二人そろって否定する。
「それこそ、妹さんに紹介してもらえばいいんじゃない? 別の大学だよね、合コンセッティングしてもらうとか」
津田野の「妹」という単語にビクッとする勲。まさしくその妹と今接点があったわけで、なんてタイムリーなと内心焦る。目線が勲から逸れていたため、震えたのが二人に気付かれていないのは幸い。
「まずないな。アイツ俺のことはゴミのようにしか思ってないし」
「東大生をゴミ扱いね…」
苦笑いしかできない津田野。「いえ、それ以上にゴミのように扱われている存在を知っています」と言い出せないのが申し訳ない勲。
「おっと、こんな時間。そろそろ帰らないと」
津田野が時計を見ると、すでに夜の9時を回っている。大学を出たのが7時を回ってたため入店も遅く、談笑していたらアッという間に時は過ぎていた。
「おお、そろそろ帰るか。おばちゃーん、お会計おねがーい」
「はーい」
巽が店主に声をかけ三人分の勘定をまとめて済ませる。「ありがとう、またおいでよ」と、既に馴染の店主から挨拶され店を後にする。
「じゃ、俺たち電車だから。勲、またな」
「うん、また明日」
一人自転車の勲は店の前で二人と別れる。二人が見えなくなったところで「そういえば」とスマホを取り出し、佑奈からのメッセージに目を通す。そこにはこう書かれている。
「すいません。週末でいいので、おひとりで私の家に来てもらえますか?」
「そういうことですかー!!??」
メッセージ見るなり膝から落ちつつガッツポーズ。どうして男はエロいほうエロいほうへと思考が向かうのだろう。悲しい性さが、東大生も何も関係ない。マッハで「もちろん!」と一言返事をする。そこからはもう羽が生えたかのように軽やかに自転車をこいで、夜の東京を自宅に向けて走っていった。




