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新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
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第45話

 週が明け大学が始まる。二人に伝えた通り勲は忙しくなった。授業のない時間も昼休みも、学校が開いている限りなるべく、どこかでノートパソコンを開いて勲はレポートを作成している。今日は4限目がないためカフェで紅茶を飲みつつパソコンを開いてる。家に戻ると気が散ってしまう。学内にいたほうがいいようである。気がかりなことがあるとすれば、真白が押し掛けてくる可能性を否定できない。

 珍しく眼鏡をかけているが、決して目が悪いわけではない。ブルースクリーン対策の伊達眼鏡。眼鏡をかけると余計に佑奈に雰囲気が似ることに勲自身はまだ気づいていない。

「よう」

「あ、おっす」

 声をかけてきたのは例の如く巽だった。片手を軽く上げ返事をしてまたすぐ画面に向かう。

「やあ勲」

「お、津田野。久しぶり」

 学部が違う友人と久しぶりに会う。巽だけならながらで対応するつもりだったが、いったんレポートファイルを閉じてパソコンを閉じ眼鏡を外す。ちょっとブレイクタイム。一人で占領していた丸テーブルの椅子に二人も腰を下ろす。手には二人ともコーヒーを携えている。

「コーヒー派じゃなかったっけ?」津田野という友人が勲の飲み物を気にする。

「ああ、うん。最近ちょっとね」佑奈の影響だろう。紅茶にハマっている勲。

「レポート?」

「うん。今週中にはケリつきそうだけどね」

「俺はまだ全然だわー。ヤバイなー」

「巽はやらなさすぎだろう。遊び歩いてるんじゃないの?」

「わかるか? 勲と前に行ったメイド喫茶あるじゃん。あそこに定期的に通うようになっちゃってさ」

「ああ、さようでございますか…」他人事じゃない勲。店でなんかやらかしていないだろうかと気になってしまう。

「メイド喫茶ねぇ。楽しい?」

 津野田という友人が訪ねてくる。この人、別の学部ではあるが元々巽の友人で、少し前から絡むようになっている。非常にまじめでメイド喫茶の「メ」の字も知らないようなタイプ。勲とは何となく似ているため気が合うようだ。

「楽しいっていうか、目の保養だよな。いいぞあそこは」

「そうかなぁ」

「意見が分かれるね」

「勲は知り合いがいるから冷めてるだけだよ。羨ましいったらありゃしない」

「へぇ、意外だな」

「偶然だよ、偶然…」

 ちょっとビビる勲。関係者というだけならまだ言い逃れのしようもあるが、いまだ二股どころ付き合っていることすらバレていないためきょどってしまう。ましては元スタッフなんて知れたら、多分たかられる。

「でも、そういう場所おそらく僕も苦手だな。まだ新宿二丁目とかでオネエと話してるほうが気楽かも」津野田の発言にまたビクッてなる勲。

「ん、どうした勲?」気付く巽。

「い、いや二丁目って何なのかなーって…」

「そうか、しらないか。ソッチ系の人の街なんだよ」口元に手を裏返して当てて表現する巽。

「なんなら行ってみるか?」

「へぇ、そんなところがあるんだねぇ…。でも、いいかな」行ってますしね。

「ダメでしょう、未成年は」

「歩くだけならいいじゃん。行ってみっか?」

「いや、なんとなくいいや…」どうせ後日行くことになるし、お断りいたします。

「勲、早速だが今日この後秋葉原に…」

「断る」マッハで断る勲。

「だよね。巽もレポートやったほうがいいんじゃない? その断りはお前のためだと思うぞ」

「津田野の言う通り。手伝ってやらないからな、夏の時みたいには」

「付き合い悪いなぁ」

「お前のためだっての」

「じゃあ近場で二丁目なら」

「そういう問題じゃない」余計に断る。

「どうせこの後もここか学内のどこかでレポート書いてるんだろう。だったら晩飯くらい一緒に行かないか、あそこの食堂で」津田野から別の提案を受ける。

「そっちなら乗った」即座に承諾する勲。

「巽も今レポートやっちゃえって。どうせ後でやることになるんだから」

「はー、真面目な二人には逆らえんな。しゃーない」

 結局三人揃ってパソコンを広げ各々すべきことをしだす。大学生らしい光景。結局終わっていった場所といえば、津田野の提案した大学そばの大衆食堂。勲も久しぶりに大学生らしい生活をしていると、例の件はすっかり忘れていた。

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