第7章:中途半端は、かえって失礼かもな・・・(第42話)
休憩時間も終わりが近づき、二部が始まる時間が迫る。徐々に参加するカメラマンが到着しだす。ただいるだけでは申し訳ないと、参加者の案内やら受付なんかを手伝っている勲。柏木こそ毎度志帆に付き合っているので顔見知りもそこそこいるため、訪れるカメラマンの何人かとは知った風にあいさつを交わしている。
しかし勲は「なんだコイツ」という目で見られて、若干浮いた存在になっている。イケメンなのも問題の一つ。おそらく「おまえイイチコさんのなんなのさ?」と内心思われているのだろう。「ただの同僚です」と大っぴらに言えないのが悔しい。いや、いったらバレるからそれもそれでツラい。
2階から先行して志帆が下りてくる。来客対応だろう。勲を見てしかめっ面になったカメラマンたちの顔が一気に明るくなるナウ。
「現金だなぁ」ボソリとつぶやく勲。
「言わない」
小声で柏木が諭してくる。への字口になっていた勲の口が真一文字に紡がれ感情を失ったような顔つきになる。それはそれで不自然なツラなのだが。続けて入ってくるカメラマンがその顔を見て何事かと眉をしかめる。
「ようこそ○○さん。お久しぶりでーす」
しかしその顔も志帆に声をかけられることでコロッと変わる。男とは単純な生き物だ。自分も佑奈や真白に声をかけられるとこうなのだろうか。いつもの自分を考えてみる…。でもそんなことはなさそうだ。自分はズレているのかな、なんて思っている勲。
「さ、これで全員来たね。僕らも準備しようか」
「はい。あ、カメラってどうすれば」
「これ使いな」
あらかじめ準備しておいてくれたカメラを柏木から受け取る勲。簡素なデジタルカメラとはちょっと違う。柏木が首から下げているものよりはよっぽど単純そうな造りだが、それでも勲は触ったことも見たこともない代物。
「普通のコンパクトじゃあないんですね」
「ミラーレスっていうんだよ。コンデジよりは様になるから、それ使いな」
ありがたくお借りする勲。これがきっかけでちょっとカメラにはまるのは少し後のお話。借りたカメラを首から下げ、部屋の隅に移動する。
柏木はというと、撮影されているときから気になってはいたのだが、でっかいトレイのような、それでいて素材はなんだか柔らか素材。何の用途かわからないものを広げて色々調整しだしている。
「フリス、ビー?」そう見えるお前は阿呆である。
「んなわけあるかい」
「おわっ!」いつの間にか降りてきていた真白にツッコまれる。
「あれはレフ板っていうの」
「レフ板?」
「まぁなんだ。簡単に言うと光を集めるもので、被写体を輝かすためのアイテム」
「へー。あー通りでまぶしいわけだ、撮影されてた時」
「気づけよ」
「あの、カメラから伸びてるコードは何ですか?」ついでにいろいろ聞きだす勲。
「あれはレリーズって言います。リモートでシャッター切る機械です」
「おわ!」反対にいた佑奈から説明が入る。気付かないのはなんでだろう。
「構えているとどうしてもブレますけど、あれならぶれずにシャッター切れますからね」
「ふーん、いろんなもんがありますねぇ。お金かかりそう」
「あの人だと、ワンセットで50万くらいいってるんじゃないですか」一人のカメラマンをこっそり指で差す佑奈。
「50!?」
「カメラじゃ驚くほどの額でもないよ」
「じゃ、じゃあこの首からかけてる借りたカメラは一体…」恐る恐る借りたカメラを見る勲。
「あー、最近出たばっかりのミラーレスですね。15万くらいしますね」さすが佑奈。瞬時にその価値を見抜く。
「ひぃーーー!!!!」
「壊したら大変やで」脅すのは真白。
「か、返してこようかな…」
そんなはたから見るとイチャイチャしているようにしか見えない三人。またカメラマンたちが勲を「○ねよ」という目で見ている。でも勲は気づいていない、幸せ。
そして程なく撮影が始まる。結局あまり前に出ることは無く後ろからこっそり撮影されているモデル4人を見ている勲。たまにカメラを構えてレンズ越しにそれを見る。しばらくして勲が気付く。
「あぁ、僕じゃダメだ」




