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新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
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第32話

 有名なメンチカツを買い食いして、例の如くコーヒーチェーンに入り、窓際で人間観察をして。特に当てもなくアーケード内をうろちょろする勲。過去に一度スカウトされたことがあるため若干警戒しているが、今日はどうやらなさそう。一人で出歩くことの久しぶりなその感覚を味わっている。いつも大体真白か佑奈が一緒、隣にいる。二人で動くこともある。なにも常に佑奈と真白の開いている時間が被るわけではない。三人でばかりいるように思われがちだが、実はしっかり二人きりのデートも体験している。そんなとっかえひっかえデートするものだから、勲がよく行くラーメン店の店員からは「コイツ二股かよ。しかも二人ともチョー可愛いし」と、既に目を付けられ恨みを買っている。残念、公認なんです。


 アーケードを抜け出し、北から南へ、郊外へ向かう勲。少し歩いて「井の頭公園」に到着する。正式には「井の頭恩賜公園」一通り見渡してみるがゴローちゃんはいなさそう。

「ここか、来ると別れるっていうボートのある公園は」

 佑奈真白ともきたことはない。取り敢えず園内をブラつく。いい季節とは言えないため、ボートに乗っている人もまばら。元気そうな学生らしい男二人が、必死に足漕ぎスワンボートを漕いでいる姿が見える。

「あの二人、別れるのか」そうではない。そう見えちゃう辺り少し毒されている勲。

 親子連れなどはみえるが、今日はカップルはいなさそうである。観察しても意味はないかな、と池を離れる。何もボートに乗っている最中急に「別れましょう」という場所ではないのであしからず。

 ただ、ボートには乗っていないものの、園内には数組のカップルがいる。どれを見てもいつも自分がしていることとそう変わらない行動をしているように見えるが。第三者視点で見るのは新鮮。少し休憩スペースに腰掛け観察する。

「僕も、いつもはあんな感じで佑奈さんや真白さんと歩いてるのかな?」大体あってる。

「ってことは、もし例の話でデートすることになったら、僕が女性役ってことだよね」だね。

「じゃあ、僕から腕組んだりなんかよくわからないけど男の人の周りクルクル回ったりしないといけないの!?」変なカップルに遭遇したのかな。それは普通じゃない。

 ちょっと冷静ではいられなくなる勲。想像しただけゾッとする。それだけのことを過去に多少やってはいるが、それは周りの助けがあったからこそ。仲間に支えられて?あの会場にはいた。しかし今度は一人。全て一人で相手をしなくてはいけない。それに耐えられるか。

「やっぱ、遠慮しようかなぁ…」

 ちょっと考えが後ろ向きになる。しかし、当然ここで結論は出るはずもなく、公園を後にする。男に好かれる。LIKEではない、LOVE。この感情、どう収めていいものか。相談できる相手がいるけど居ないのがもどかしい。


 最終的に駅前に戻り、行きつけのラーメン屋に入り食事を済ませる。そこで店員から「今日は一人なんスね」と、ちょっと嫌味っぽく言われる勲。「あれ、覚えられてる!」気を付けないといけない。帰り際に変装用の伊達眼鏡を買って帰った。



 その頃佑奈は、メグル邸で勲用に仕立ててもらった衣装の最終調整を行っていた。真白はバイト中。お客さんから「一日だけデートしてもらえませんか」なんて要望を承っているが、「そういう店じゃないんで」と一蹴している最中。珍しく三人ばらばらの画。明日にはまた集合することになるのだが。

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