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新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
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第26話

 新宿から佑奈の家まで、結局タクシーを使うことになり帰る4人。「なんか不憫だ」と、志帆もついてくる。当然タクシー代は中村持ち。最初から最後までゴチになりっぱなし。タクシーの表示にはしっかり「割増」とある。

「ねぇ、町村君の意識ある?」

「ほぼない」

 結局あの後中村の「デート希望!」に対し反応をしたものの、勲は落ちた。中村にという意味ではない、酒にである(ただしノンアル)案の定佑奈と真白に引きずられ店を後にする。ヨーコにタクシーを呼んでもらい、一旦二丁目とおさらば。中村への返事は後日することでハーフタイム突入。

「まったく。男が女装してそっち系の人と酒飲んで、それで告白されるって。そうないぞ、この経験」

「ホント、ネタに困らない人ですね、この人は」

「自伝出したらいいんじゃね?」

 伸びているのをいいことに、勲のことを肴にして話す三人。運転手は「え、男? どの人?」って顔でバックミラーと隣に座っている志帆を見ている。ちょうど真ん中で伸びてるのがソレです。

「まさか、私たちまで拝み倒されるとはねー。どんだけ好かれたんよ」

「とうとう後ろはおしまいですかねぇ」

「やめなよ、佑奈ちゃん…」

「綺麗なままでいてほしかったんですけどね。無念です」

「だから…w」

「そういえばねえさん、今日大丈夫なの? 明日仕事は?」

「あぁ、実は今日明日明後日と珍しく連休なのさ。日曜日に主催している撮影会あるから、その準備もあって休みにしたんだよね」

「なるー」

「撮影ですか。しばらくされてないですね。なんか感覚忘れちゃいました」

 志帆がイイチコに戻る時、彼女本来の姿。佑奈も真白も前述の通りめっきりイベントには顔を出していないため、撮影されるという感覚を忘れてしまっている。化けることに関してはむしろ隣で伸びている男の方が身近なくらい。

「撮影会、か…」真白が何か考えている。

「ん、どうした?」

「ねえさん、それ私たちも参加できないかな?」

「え、どうした突然。別に構わないけど」

「ふっふっふ。ちょいと私に考えが」

 もうよからぬことというのは間違いないだろう。家に着いたら詳しくは話すということで、一旦この会話は終了。次にタクシーの運転手に絡みだす。毎度おなじみ「これ男に見えます?」の質問。因みにどんだけ嬉しかったのか、割り増し分をサービスしてくれたようである。


 佑奈んち。


 隣の部屋に早々に布団を敷いて勲をぶち込む。その後リビングでは女子会、とは言えるような内容ではないミーティングが開始される。

「撮影会に、ダーリンを出す」

「は?」

「あー、いいですね」

 提案したのは真白。驚いたのは志帆。同意したのは当然佑奈。もうわかり易い構図。真白はなぜ一体そんなことを。

「もうこうなったら、あの男の人満足させるまで付き合ってやろうじゃない。それにはダーリンがどこまで成り切れるかだよ。まぁ前のでそこそこ出来ているとはおもってるけどさ、今日の見てるとなまってるね。リハビリリハビリ」

「あー。それは感じましたね。今日のは男でよかったとはいえ、今度の要望はそうじゃないですからねぇ」

「本人の許可は…?」恐る恐る尋ねる志帆。

「要らない」

「要りません」

「左様で…」

 要望、さてなんのことか。それは少し前、店での最後の出来事に繋がっている。


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