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新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
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第23話

「お、アルファだ。お久しぶりー」真白が待ち人に手を振る。

「お、久しぶりーゆきち。じゃなくていいかもう。真白久しぶり」

「だねー」

 アルタ前で二人を待っていたアルファはイイチコだった。真白がバイトを辞めて以来、暫く会っていなかったが、先日勲が例の店に行くといったことに何かピンと来たイイチコがその後真白に連絡をして、そこから余計な方向に話が広がっていき「是非見たい」となったのが事の顛末。三人揃ってシャングリラへお出かけすることにあいなった。

「お久しぶりです、イイチコさん」

「やあ佑奈ちゃん、お久しぶり。あれ以来どう?」

「お陰さまで息災です」

「ならよかった。って、プライベートでイイチコってのも変だな。本名でいいよ。志帆だから、『小野寺志帆』ね」

「じゃあ志帆さんで」

「おうよ」男前である。

「で、ターゲットは?」

「多分迷ってる。ほっといて先に行こう」辛辣真白。

「ありゃ、相変わらずの田舎者だね。町村君」

「ダサすぎます」

「辿り着かないかもよ? せめて後ろから見守るくらいは…」

「大丈夫です。スマホのマップの使い方教えておきましたから」

「あ、あぁ。そう…」

 この会話だけ聞いていると、勲に一番気を遣っているのは確実に志帆であり、佑奈と真白はぞんざいもぞんざい。彼女だからこそこの扱いなのかもしれないが、志帆が勲を「尻に敷かれてんなぁ」とすぐに察してしまう程である。

「じゃあ行こうか。先に着かれてもマズいしね」

「まぁ大丈夫でしょうけどね」

「ねえさん、二丁目行ったことある?」

「一度だけあるよ、知り合いに連れられてね。いやー、オネエってあんなに面白いんだね、ビックリした」

「私ハマりそう」

 既にミランダにハマっている真白は沼に入るだけ。それにずいずい引きずり込まれることになる志帆、今は知らない。前回のように寄り道もせず真っ直ぐ二丁目方面へと向かう三人。勲はまだ駅員に道を尋ねている最中。


 15分ほどで三人はシャングリラ近辺へ到着する。先週より来訪した時間が遅いため、世界が少しだけ違う。すでに発展場の様相を呈している。男同士腕を組んだり、中には道端でキスをしているものもいる。

「おぉ、やっぱすげぇなこの街」

「いるんですね、やっぱり」

「町村君もこうなっちゃうのかぁ」そういう訳ではないのだけど、また心配している志帆。

「ねえさん、こっちやで」真白が路地へ誘導する。

「なんか入り組んだとこにあるねぇ」

 歩を進める三人。そして扉を開くと中にはヨーコが待っていた。

「いらっしゃーい。あら、一人多いわね」

「どうも。着いてきちゃいました、町村君の観察したくて」

「どうぞどうぞ。でもちょっとそうなると隠れる場所狭くなっちゃうけど、いい?」

 佑奈と真白の作戦としては、カウンターに座る勲を二階に隠れてカメラで眺める予定である。声は十分聞こえる距離にある。事務所兼倉庫の二階、そう広い場所ではない。そこに志帆が加わったため、多少手狭になることをヨーコは危惧していた。

「いいですよー別に。そんな何時間もってわけじゃないでしょうから」

「あら、じゃあ狭くて悪いけどちょっと我慢してね」

「はーい」

「じゃあ、我々は二階にドロンしましょうか」

 もう間もなく8時。勲もその男性も直に店にたどり着く頃だろう。三人は早速二階に場所を移す。ヨーコから待機中の食事と飲み物をお預かりして。


 三人が二階に上がって間もなく店の扉が開く。そこにある姿は勲ではなく、勲を呼び出したサラリーマン。今の情報では「陽ちゃん」としかわからない。

「お、来た来た」カメラを覗き込む三人

「別に普通のサラリーマンに見えますねぇ」

「ホモっぽくはないなぁ。もっとそれっぽいかと思った」

「いらっしゃい陽ちゃん。さ、どうぞどうぞ」

「こんばんは。すいませんマスター、無理言ってしまって」

「お礼なら今から来る人に言いなさい。私は仲介しただけで、のんでくれたのは彼なんだから」

「はい」

 寡黙、言葉少な。多くを話すタイプではないようである。一見すれば志帆の言う通りどこからどうみても普通の街に溶け込むサラリーマンである。

「もう少しで来ると思うから、ちょっと待っててね。いつものでいいかしら?」棚の毎ボトルに手を掛けるヨーコ。

「いえ。その人が来るのを待ちます。流石に先にやってるのは失礼ですから」

「ご立派」

 出しかけたボトルを一旦棚に戻す。

「町村君、未成年だよね?」

「はい、私たちとおないですから」

「酒は、さすがにダメだよね」

「シャンメリーで酔うタイプなんで、飲んだら私たちが運ばないといけなくなります」

「弱いな…」呆れる志帆。

「しっかし、もう8時まで5分とないぞ。やっぱ迷ったんじゃないの?」志帆が心配になって時計を見る。

「さすがにもう到着するんじゃないでしょうか」

「そこまでバカじゃないと思う。思いたい…」真白もちょっと不安になる。


 その頃勲。

「ここ、どこ?」

 勲の見上げる先には『高島屋』とデカデカと書かれた看板があった。どうやれば東口に行くのに南口に行けるのだろう。到着するのはしばらく先になりそう。

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