表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
16/74

第15話

 家に帰りついた勲は、寝床に入りスマホを頭上に掲げ悩み続けている。急ぐことはないと言われているが、何となく落ち着かない。さっさと結論を告げて心構えをしたいという気持ちもどこかにある。

「何で告白するわけでもないのに、こんなにドキドキしてるんだよ、まったく。あーもー、めんどくさい!」

 スマホを枕元に投げ出し電気を消して、結局何もせずに寝に入る。「急ぐことはない」真白からその言葉を貰っていたので、自分の行為は正当化される。だから今は寝る。

「まぁいいや。今週中に連絡入れれば大丈夫だよね」

 猶予は5日間程度、自身でリミットを設定する。ぶつくさ言いながらも徐々に意識は遠のき、そして完全に眠りに落ちる。なんだかんだで結局土日も動きっぱなしになってしまった。学業に差し支えなければいいのだが。


「あぶな、寝過ごすところだった」

 基本目覚まし無しで起きられる勲だが、昨晩のことが祟り1限にぎりぎり間に合う時間に目を覚ます。朝食も牛乳コップに一杯、とっとと身支度を済ませ家を出る。何とか電車にも間に合い、大学に着いたのは1限開始滑り込みセーフ。講義室の後ろからコソコソ入り込み、先にいた巽の横が偶然空いていたためそこに座る。

「よう、勲。ギリじゃん」

「おはよう。昨日もちょっと遅くってさ」

「お前、なんか土日大体どっかいってね? 誘っても断られること多くなった気するんだよな。女でもできたか?」

 実のところ、巽にはまだ佑奈と付き合っている、そういう関係であるということは告げていない。まだ「お義兄にいさん」と呼ぶ気にはなれない。当然だが真白と二股なんて死んでも言えない(真白のことは知らないけど)

「いや、そういう訳じゃ…。あぁ、でも佑奈さんとはあの件以来たまに会うかな」

「なんだ、会ってるんじゃん。あいつ俺には何も教えてくれないから、別にいいんだけど。で、何お前ら、付き合ってんの?」

「いや、そういう訳じゃ…」隠すボキャブラリ少ない。

 既に授業開始のチャイムは鳴っているが、教授が遅れており、授業の開始もそれに伴い遅れる。しばらく巽と話をする勲。

「なぁ巽。新宿二丁目って行ったことある?」

「え? 今お前なんて?」

「だから、新宿二丁目…。あ、そういうんじゃないからな」弁解したところですでに遅い気はするが。

「お前、とうとう…」たじろぐ巽。少し勲から遠ざかる。そりゃそうなるのはごもっとも。巽の反応は至って自然なこと。

「違う、断じて違う!」

「俺はノンケだからな」

「僕もだよ!」

 そういえば兄のこともまだ教えていなかった。誤解を解くためにその日の昼に兄の真実を巽に告げることになる。それで誤解は解けることになる。その後授業は開始され会話は一旦終了。なんらかの危機を感じた巽は勲とちょっと距離を置いて授業を受けている。それに寄っていく勲。逃げる巽。だから余計誤解が生まれるんだってば。


 …時は過ぎて昼休み…


「お前の兄さん、そんな人だったのか。勲、お前すごいな」

「僕が凄いわけじゃないんだけどね。むしろ困ってる」

「だから二丁目にも知り合いいるのか、納得だわ」

「うん。金曜日学校帰りに佑奈さんとその友達と合流して、兄貴の知り合いの店に行って飯食って」

 学食で昼食を取りながら会話をする勲と巽。ミランダのことを説明し誤解は解ける。相変わらず蕎麦をすすっている勲に対して巽はいつもカツカレー。

「お前が新歓で女装したのもそうなると頷ける。素質あんだな、お前」

「あのことはもう忘れて…」

「結婚式やるならムービーに画像差し込んでやるよ」

「画像よこせ、すぐにこの世から抹殺してやるから」巽の肩を掴んで食ってかかる勲。

「落ち着け、冗談だ」そうは聞こえなかったのでこうなった。

「ホントやめてよ。記憶にない分余計恥ずかしい」

「わかってるって。しかし二丁目とは。俺は当然行ったこと無い。まだ飲めないし、そんな趣味ねぇし。行くならメイド喫茶巡るよ」

 また変なところから記憶が蘇る。あのことを巽は覚えていないようだが、勲がした罪にしたこと、心が痛む、ような痛まないような。

「ま、まぁそっちのがよっぽど健全だよな、うん」

「学祭も終わって落ち着いたし。一度行かないか?」

「あ、うん。それもいいかな」

 ここのところ付き合いが悪かったのは事実。たまには彼女二人と離れて男友達との付き合いを優先してもいい。気を紛らわす意味でもいいかもしれない。承諾する。

「よし。じゃあ早速だけど今日授業終わったら行こうぜ」

「え、今日?」

「なんだ、都合悪いのか?」

「いや、大丈夫。でも急だな」

「まぁ、行きたかったところでイベントやるんだよ。だからどうしてもな」

「イベント…」

 嫌な予感しかしない。勲の本能がそう告げている。巽は当然知らないことだが、事実勲の方がこの業界には詳しくなってしまっている。どこで何があるか、情報は毎週のようにスマホに送られてくる。あの人から。

「…ちなみに、どこかな?」

「秋葉原」

 はい当たった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ