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新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
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第14話

 翌日仕事があるため、11時頃に撤収するメグル・リリィ組。明日授業がある組はまだ佑奈の家にいた。結局部屋に来て酒を飲んで帰っていくくらいのことしかしていないが、勲にとってはそれなりに有意義で収穫のある会話だった。

「さて、結局どうしますか?」

「うーん」

「お人よしもほどほどにしなよ。いつか損しちゃうよ」

「そうなんですよねぇ」

「結論、出てなさそうですね」

「…はい」

「まー、時間制限あるわけじゃないんだ。ゆっくり考えなよ。私らも彼氏がそっちになられてもちょっと複雑だから」

「そうします」

 結論は先送り、もう少し考えることにした。身近にいた似た癖へき、と言っては失礼か。性質を持った人の意見を聞いて迷いが生じたのは事実。だからといって付き合ったりなどとそうなることは考えられない。物見遊山的にその人を見るなんて失礼なことはしないが、人として興味があるのもまた事実。一度くらいなら、と今は考えている。

「さて、明日授業あるので帰りますね。まだ電車ありますよね」

「あ、私も帰る。明日1限からなんだよねー」

「私もです。じゃあ今日はお開きということで。町村さん、結論出たら教えてくださいね」

「はい、もちろん」

 メグル達に続いて勲と真白も佑奈の家を後にする。少し速足で駅まで二人向かう。その道中真白が当然色々聞いてくる。

「あの人だよね、お店行った時にいた男の人」

「ええ、そうです。よくあの時間でそういう感情生まれたなって思いますけど、そんなもんでしょうか」

「一目惚れみたいなもんじゃない? 私だってそんなもんだし」

「ふぅん…。あれ?」

 何かサラッと大変なことを告げられたことに気付く。慌てて真白を見るが暗がりでちょうど街灯と街灯の間で表情がよくわからない。さすがに向きくらいはわかる、正面を向いたまま。

「ダーリンはズルいな。こういうことを言わせるだけ言わせて、こっちは聞いたことがない」

「ご、ごめんなさい」

「本当に好かれてるのか心配になるよ。男に浮気されちゃうんじゃないか心配で心配で」

「それは絶対ありませんから」冗談で言った事だろうが、それがきっかけで繋いでいなかった手をやっと繋ぐ。

「お、がんばったね」

「これくらいなら…」赤くなったのは結局勲の方。どれだけ奥手なのか。それでいて男からの誘いに乗る可能性を示唆しているのだから、この男わからない。

「んー。で、結局どうする?」

「わかりませんけど、話すだけならいいかなって今ちょっと思い始めてます」

「体は?」

「許すわけないでしょう」

「そりゃよかった」

「人として、どんなことを考えて思っているのか、会って確かめてみたいんです」

「勉強として?」

「多分…、そうです」

「多分ていうのが心配だなー」

「だから、そういうのはないですって」いうと同時に握った手を放し、肩から真白を抱き寄せる。

「お? えへへ、嬉しいなぁ」隠さず照れだす真白。

「信じられないなら、抱きますよ?」草食が珍しく肉食発言をする。

「やれるもんなら。でも今日は無理だな、さすがに帰らないと」

「ですよね…」

 勇気を出していってみたものの、今日ばかりはタイミングが悪かった。しかし、その言葉がどれほど嬉しかったのだろう。真白は勲に抱き着いたままの状態で駅に到着する。日曜の夜、人が少ないのが幸い。そのままの状態で電車にも乗り、結局別れるまで二人はべったりだった。

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