第13話
「当然、同性愛はマイノリティ。マジョリティになることはないと思う。そうなっちゃったら人類が変な方向にいっちゃうだろうし、それこそ滅亡しちゃうかもしれない。でも、もしかしたら凄い進化してそれでも子孫残せるようになるかもしれないけどね」
「メグルさんっていつ頃から自分がそうだって気が付きましたか?」
「そうだなあ。小学生の頃はまだ男の子好きだったと思うけど。中学くらいかな、同棲を見る目が少し変わったのに気が付いたの。そして高校に入って確信した。あぁ、私は女の子が好きなんだって」
「後天的に、徐々にって感じだったんですね」
「そうかな。別に男の人は嫌いじゃないよ。私どっちかって言ったらバイだしね。でも今はリリィがいるから、大切だし」恋人はリリィ、そう断言するメグル。
「私は、気付いた時から女の子が好きデシタ。男の人と付き合ったことは一度もアリマセン」
「何で日本に? それこそ日本じゃ色々と大変なんじゃ」
「親の仕事の都合デス。残ろうとも思いマシタけど、小さかったのついてきて、そのままデス。メグルに会えていなかったらきっと今ここに居なかったと思いマス」
膝枕のまま、目線を合わせるメグルとリリィ。その表情はどちらもお互いを信じ切っている感じを受けた。
「けど、私たちみたいなのはまだ楽だと思う。トランスジェンダーが一番大変じゃないかな。それこそ二丁目にいっぱいいるんじゃないかな、きっと」
「そうでしょうね」
心の中にある辛さや悲しさを覆い隠すためにあれだけ明るく生きているのかもしれない。そんなことを勲は考えている。外から見ている以上にきっと大変で辛い目にあっているのだろう、きっと。
「神様のいたずらなのか、それとも病気なのか、私はよくわからないけど。ちなみにお兄さんってどうなの?」
「兄ですか? さぁ、そう言われてみるとアイツなんなんだろう…。ただ楽しんでいるように見えなくもないけど」
「いや、さすがにそれは無いんじゃないかな。多分LGBTのいずれかではあると思うよ」
「聞いたこと無いですね。いつか聞ける日が来たら聞いてみます」
「ま、兄弟とはいえ詮索しない方がいいこともあるからね」
「ですね」
そんな真面目な話をし続ける勲とメグル・リリィペア。佑奈と真白は黙ってポテチを突きながら聞いていた。
「さて、本題は君だ」話題を勲のことに戻すメグル。
「そうでした。うーん、色々聞いちゃうとやっぱり無下にはできないなぁ」
「下手な同情もよくないよ、君はそういう人ではないんだから」
「そうなんですよねぇ」相変わらずお人よし。そんなことまで何とかしてあげようと思ってしまう辺り、相当なのだろう。
「希望なんだっけ? 話しをしたいだけなんだっけか」
「そう言われてます、今のところですけど」
「その後はないのかな?」ちょっと期待してる真白。
「あったら逃げます」
「しかし、一目見ただけでってのも凄いね。そんなに少年が輝いて見えたのかな。町村君変なオーラ出してたりしないよね?」
「出せません、何も」
「男の娘オーラなら出せるじゃないですか」佑奈が横槍。
「あぁ、たしかにそれなら…、って」
「なるほど。それなら女の子を好きになったとも考えられる」
「男の格好ですよ、行った時」
「まぁ、判断は君に任せるよ。会う会わないは君の自由だ」
結局何の解決にもならない。相談したこと自体は色々プラスになったが、結果自分の気持ち次第。「ごめんなさい」を言いにいくのもいかないのも勲次第。
「さて」
膝枕から体を起こすメグル。そして勲をじっと見る。
「な、なんでしょう?」
「暫く見ないうちに、なんか佑奈も真白もテカテカしているというか、女の子っぽくなったというか。…町村君」
「はい?」次にくる質問の内容は大凡わかった。
「寝た?」
その後は勲の追及に数時間を費やすことになる。




