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新宿二丁目の男の娘   作者: 小鳩
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プロローグ

「すいません、今どの辺りにいますか?」

「相変わらず東京の地理苦手だねぇ。いい、新宿駅の東口にまず出て」

「東がいっぱいあるんですけど…」

 慣れていない人間はそうなるのも頷ける。東、中央東、何線の出入り口。もはや迷宮の新宿駅。勲のような田舎者が数ヶ月で覚えられるわけもなく、当然のように真白にナビをお願いしている。結局出る改札を間違え外から回り道。待合場所である東口アルタ前にて落ち合う三人。

「お待たせしました…」

「やっぱまだ一緒に動いてあげないとダメですね」

「東京来てもう半年以上も経つのに、そろそろ一人で出来るもんって言って欲しいな」

「ごめんなさい」

 テレビもラジオも車もレーザーディスクもある田舎に住んではいたが、電車はほっとんど利用していない勲。東京に出てきてまず迷ったのが電車の使い方と駅の多さ。自身の通う大学の最寄り駅と自分の家の最寄り駅くらいしか日常的には使わないこともあり、いざ遠出するといつもこうなる。山手線でビックサイトに行けると思ったくらいのミラクル思想を持っているので勘弁してあげて欲しい。

「さて、ちょっと早いけど行こう。私たちのような未成年が夜に行っていい場所じゃない」

「もういきます? ちょっとお腹減っちゃったからファミレスでも寄っていきたいんですけど」

「ぼ、僕も。お昼食べ逃しちゃったんで、できれば何か少しお腹に」

 真白はすぐにでも目的地に行く気満々だったが、ほかの二人から「飯」の希望が出る。

「行けばご馳走してくれるって言ってたけど。まぁちょっとお腹減ったな。いこっか」

 新宿東口の繁華街の中、目に留まった最初のファミレスに入る三人。週末の午後六時過ぎ、この後から新宿は一気にごった返す。まだ余裕がある時間帯、すぐに座れる。次の目的地で大層なものが出てくるとわかっているので、軽く済ませることにする、本当に軽く。

「パスタとドリンクバーだけにしておこう」

「私もドリアとドリンクバー」

「僕、ハンバーグとソーセージとドリンクバー」

「だから、この後良いもの食べられるんだから、自重しなよ」

 真白に釘を刺される勲。仕方なくソーセージは諦める。注文を通しドリンクバーをつぎ席に戻り話が再開される。

「で、なんて店でしたっけ?」

「えっとね、ちょっと待って。ミランダ姉さんからのメッセージ見る」

 既にミランダとは勲を介さず直接やり取りするほどの仲になっている真白。以前から「おいでなさい」と言われていた場所に今から向かうところである。本来であれば酒が入る店が多い地域だが、そんなことはさせない。いいお店が多いと言うことで、雰囲気を楽しむのとご馳走をすると言うことで、週末三人集まって訪ねることになった。

「えっとね『シャングリラ』だ」

「さすが名前からギラついてますね…」

「ミランダ姉さんの友達がいるから、その人訪ねてだって。名前が『ヨーコ・オノスキー』さんだって」

「ジョンレノンに聞かれたら怒られますね…」

「故人だからいいじゃないですか」オノヨーコは存命ですよ。

「にしても、兄貴は一体どういう生活送ってるんだよ、東京で。自宅にもほとんど帰らないらしいし」

「もう故郷はそこなんじゃないですか」

「かもなぁ…」

 今から三人が訪れる場所は、日本一オネエの集まる場所。男の姿をしながら女性の心を持ち、話をさせれば世界一。そんな話術の達人が集まる場所。世間では『新宿二丁目』といえばわかるだろう。子供が行っていい場所ではないんだけどなぁ。

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