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【完】神様は嘘つき  作者: バひ゛ろン
7/19

7.神様の消えた月曜日

 1つの週が終わり、新たにまた1つの週が始まる。

それがこうも疎ましく感じられたのは、恐らく一昨日の宅飲み会が原因。


結果的にデメリットもなく楽しくもあった為、仕事という現実と向かい合わなければならない日常に憂鬱さを抱く。

ただそれは、我ながら自分には似つかわしくない感情的な気分かと思えた。


そんな物思いに更けるさまが陰鬱として表情にでも出ていたからだろうか?

部署に着いて直ぐ、自覚ありきで細い声ながらも朝の挨拶を周りに向けると

「あ、あぁ…おはよう」

といった不穏な返しと幾らかの不快な視線が身を刺した。


それらに違和感を抱いて辺りを見回すと、慌てて目を背けては逃げる様に去っていく人影もちらほら。

目が合っては逸らされ、合うと困るからか立ち去られ、それらは私の心に大きな爪痕を刻む。


──私が何かをしでかした?


目の前で流れうごめく釈然としない景色に不安や吐き気を抱き、走馬灯の様に脳裏をよぎる嫌な記憶の群れが胸を裂く。

(やっぱり此処にも私の居場所は…)

と結論を出しかけた矢先に背後から私の名前を呼ぶ声がした。

「多賀谷さん…」

その姿を捉え、表情を見やり、一瞬の安堵ののちにまたより一層強く不安を持ち直す。


「ちょっと…」

と不意に彼女に腕を引かれ、私は慌ただしく場所を移された。


「えっと…」

誘発される様に湧き上がる恐怖に言葉を絡め取られ、

「主任?」

と普段では決して使わない呼称を発する。


「麻衣ちゃん…落ち着いて聞いてね…?」

そう通路の突き当たりに差し掛かると同時に要求される心の在り方。

「島がね、昨日…事故にあったんだって…」

と私の思考の全てを打ち止める告白。


「嘘…そんな…」

一瞬にして真っ白となった私の脳裏には、貧乏神という名詞だけがはっきりと浮かんでいた。

「まさか…」

彼女は名ばかりの神で、決してそんな悪意染みた存在ではない。

私は必死にそう思い込もうとしていた。


 落ち着かない心中をどうにか今に繋ぎ止め、私は出来うる限りに事の詳細を彼女へ求めた。

それで命に別状はないということこそ知れたが、既に目を覚まさないまま丸一日以上経っているらしい。


そうして現在我が部署の内では、先日の宅飲み会が決まるに至った会話の折りに私が思わず放った曰く付きという言葉が独り歩き。

中には悪霊に見せかけた私の仕業だなんて噂もあるらしく、全てをひっくるめての奇異の目だったんだと窺い知れた。


「とりあえず今日は一旦、自宅で待機してくれてて良いから…」

東城さんへはもう話を通してくれているらしく、半ば強引ではあったものの、彼女のはからいで私は早々と自宅へ帰る事に決定。

帰り際に彼女が言ってくれた様に時間が解決してくれれば良いのだが──あの視線、あの空気──最早私の居場所は失われたとしか思えなかった。


「ただいま…」

その言葉は虚しく玄関に響いた。

いくら待てども返事が無い故に。

「ヒトミー…?」

せっかく早く帰ってきたというのに彼女が姿を見せない。

何度も名を呼びながら至るところに目を向けるも、どこにも見受けられない。

「…居ないのか?」

何度呼びかけようと返事はなく、まるで初めから彼女なんて存在してなかったかのよう。

だだっ広い空間には、ただ静寂だけが立ち込めていた。

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