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【完】神様は嘘つき  作者: バひ゛ろン
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5.電波に始まる宴と真実のジョーク

 ヒトミとの会話をきっかけに決意を抱いて直後、突如として軋り混じりの鈍い音が玄関方から響く。

次いでドタバタと激しい足音や声が耳に届き、それらが急接近している事も分かった。


ならばもう今更止められはしないだろうと、私もヒトミもその場で成り行きを達観──かくして某音源達は勢いそのままに玄関通路とダイニングキッチンを仕切る扉を開放。

彼らは雪崩れ込む様にして次々と姿を現すと、私達の姿を捉えたからかふと足を止めた。


かと思えば

「そいつが幽霊か!?」

と先頭に立つ彼が、依然先の勢いを有して問いを放ちつつヒトミを指差す。

どう見たってただのルームメイトでしょうが!と直ぐに、傍らで罵声染みた声が上がるも彼は無視を一貫。

結果、

「さっさと正ツュアッ」

と不意に後頭部を叩かれて発言を妨げられていた。


そんな忙しない一部始終を前に私は思いの外、安堵感を抱いていた様に思う。

(そうか…これだけハッキリ見えている相手を幽霊──まして神様だなんて思うわけないか…)

そう全て杞憂であったのだと理解し、自分自身に酷く呆れを抱いた。

しかしそれはそれ、今はともかく上手く話しを収めてしまおうと

「彼女は私のルームメイトで」

と言いかけた折り、傍らの違和感に気付き停止。


「…幽霊?ルームメイト?」

心ここに非ずといった感じで俯き呟くヒトミに心配になって声をかけるも反応はなく、

「…居候?」

とまた小さく一言。

それは今言ってねぇ!と私が思わず心中で叫んだ刹那、

「私は神様です!!」

ととんでもない暴露が行われた。


その言葉に案の定、3人はキョトン顔をシンクロ。

予想だにしない展開にまずいと思いつつも私は、この状況を打開するに相応しい手段を見いだせず、口を開くことが出来なかった。


「そうか…そっちか…」

と漏らす島さんの口角が少しつり上がったのが見て取れた。


 不穏な雰囲気を抱えたまま会は発進、進行。

とりあえずと3人を席に案内した後で思わず私はため息をこぼす。


その折り、不意に肩へ手が乗せられた。

それは多賀谷先輩のもので、どうしてだろう──彼女は可哀想な子犬でも見やるかの様な目をしていた。


しかし、その理由は直ぐに判明。

料理を持ってくるねとヒトミがキッチンへ移ったところ、電波さんなんて初めて見たわとこぼされ、一様に他2名も頷いていたのだ。


かくしてヒトミは電波少女という分類のもと、皆に神様として認識されることに相成る。

とはいえ真実、皆は私のルームメイトであると誤認──と言うと少し語弊があるが、ともかく当たり障りのない理解をしてくれたようで事無きを得た。


 一同、思わぬ幕開けに呆気に取られながら始まった会ではあったが、これまた思わぬルームメイトの歓迎ぶりに随分気を良くしてくれた様子。

半ば当初の目的であったオカルト話はどこへやら、ただただ和気藹々と場は盛り上がっていた。


「ヒトミちゃん料理上手いのねー!」


「味噌料理なら任せて下さい」


「味噌料理だけ?」


「好きな物以外はなかなか関心持てなくて…」


「アハッ、麻衣ちゃんにソックリ~」


「そうですかぁ~?フフフ~ン」

といった具合にどうやら彼女もちゃんと楽しめているようで、多賀谷先輩とはそれなりに打ち解けられているよう。

私はそのさまを見やり、人知れず安堵していた。


しかし

「自分、白味噌派なんすけどね~」

と幽霊が現れないことが不満らしく何かにつけてグチグチと小言を吐く島さんとは少し犬猿な模様。


「嫌なら食べるな!」

と先輩が口撃し、

「味噌に失礼です!」

とヒトミが続く辺り、見事に確執染みた何かが出来てることが窺えた。


そんな三人を尻目に

「口に合いません?」

と私は複雑な面持ちで黙りこくる東城さんに声を掛けやる。


「ん?…あぁ、いや、美味しいよ。凄く美味しい…」

急に声をかけられ焦っているといった様子はなかったが、重々しく二度も吐かれた感想には少し違和感。

「…彼女はさ、食の神様だったりするのかな?」

と普段あまり冗談を言わない彼が、不意にユーモラスな発言をこぼす姿もまた同じく。


とはいえ深く考えたところで仕方もないかと気にすることはやめ、

「いや、貧乏神です」

と私は冗談めかして真実を吐露する。

勿論、彼は本気で信じたりしないだろうし、ヒトミの電波発言をネタとしたジョークぐらいにしか思わないだろうと推理して吐いたものだ。


「こんなに出来た子が?」

と返す様子を見るに、やはりこちらの思惑通りに受け取ってくれたのだろう。

「まさか…」

そう続いた矢先、ふと前言のあまりの高評価度を振り返って私は考えてしまう。


(もしかして…恋?)

と。

いやまさか、と早々に自らの感覚を否定した私は

「だって、こんなことされたら食費が一気に飛びますから」

と淡々と話しを進めた。

「これ、全部私の許可なくですよ?」

そう付け足すと


彼は

「ぁあ…!」

と呟き微かに笑った。

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